こさかいじゅん
忘れがたいのは『ノミの愛情』。結婚生活に漂う不穏な空気、危ういバランス、破滅の予感。しかし男の無神経はそれを気づかない。静かに崩壊に向かう「理想の夫婦関係」は、あることをきっかけに劇的な方向へと向かう――。この息詰まる感じ、どこかで…? と思ったら、向田邦子の『思い出トランプ』を彷彿させるのだ。西川美和も元来は映像の人。美人、というところまで向田邦子的。天は時に二物も三物も与える。

きのうの神さま
ナイス! ★★★★★★★★★★ -
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- 02/02
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ナイスした読書家さんと感想
映画『ディアドクター』のアナザーストーリー。全編を貫く優しさに癒されながらも深く仕事や人生を考えさせられるとてもいい映画だったと記憶している。ディアドクター作成途中で生まれたとはいえディアドクターとは違う話。けれど、仕事や人生や死に向き合う人たちの思いや、家族ならではの複雑な関係や、いろんな要素がぎゅぎゅっと詰まっていた。田舎の診療所の医師を美化するでもなく、田舎の閉塞感から抜け出そうとする少女をい卑下するでもなく、等身大のままに描いていて素晴らしかったと思う。どこか不安定で気持ち悪い感じすらも愛おしい。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
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- 11/11
『ありの行列』今まで知らなかった僻地医療の現状を若い医師と一緒に体験するような作品。神経質な青年医師が僻地医療に構えていた姿が徐々にほぐされていく様子が良い。『ノミの愛情』痰壺みたいと義妹と言われながらも「彼の表の顔は私にとっても誇りなの」と夫を盛り立てる妻。そう言いながら階段を磨き続ける…。彼女の本を読んでいて感じるのは擬音の使い方が巧い。映画を主な生業とされている作家らしく文章から画像が眼前に浮かびあがってくる。映画監督としての彼女の仕事っぷりを観たくなる作品。
nyanco@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
あとがきを読んで感じたこと… 僻地医療を題材に映画を撮りたい。現状を投影するために綿密な取材をしたいーー作家。 取材の支援をするから同じような題材で小説を書いてみませんかーー編集者。 結果としては編集者の思惑通りになったのですが、僻地医療を取材されたことによって知った人々の生き方や様々なエピソードを作者が大切に思い、映画に収まりきらなかったものをもっと表現したい、伝えたい…という思いが本作から溢れ出ているように感じました。
ナイス!
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08/05 10:28
あとがきを読んで感じたこと… 僻地医療を題材に映画を撮りたい。現状を投影するために綿密な取材をしたいーー作家。 取材の支援をするから同じような題材で小説を書いてみませんかーー編集者。 結果としては編集者の思惑通りになったのですが、僻地医療を取材されたことによって知った人々の生き方や様々なエピソードを作者が大切に思い、映画に収まりきらなかったものをもっと表現したい、伝えたい…という思いが本作から溢れ出ているように感じました。
ナイス!
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08/05 10:28
子供の頃はヒーローが其処彼処に居た。お巡りさんや消防士さん、それにお医者さん。大人になって目から憧憬の鱗が剥離した今では、彼らは多種多様な職に就いている普通の人たちと分かる。医師だって悩んだり愚痴ったり見栄張ったり損得計算したりしつつ、病と老いのその先に待ち受ける死を食い止めることはできない。でもある地域においては彼らは未だにヒーローだ。大病や大怪我になす術はないけど往診処置処方相談、仏で言うならお地蔵さまのような身近な安心感を与えてくれる、ささやかな神さまのように。
ちはや@灯れ松明の火(文さんに協賛!)
世界中に綺麗事じゃ片付かない現実は転がっていて、歩くたび躓いて転びそうになる。何かの犠牲の上に成り立つ命の尊さの重荷、円滑な日常のために堪える言葉、何時しか薄れていく情熱。生きることは素晴らしい半面ちょっともどかしい。
ナイス!
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11/05 18:20
世界中に綺麗事じゃ片付かない現実は転がっていて、歩くたび躓いて転びそうになる。何かの犠牲の上に成り立つ命の尊さの重荷、円滑な日常のために堪える言葉、何時しか薄れていく情熱。生きることは素晴らしい半面ちょっともどかしい。
ナイス!
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11/05 18:20
自身の監督作品のノベライズとしてある本書だが、西川美和の小説は、映画のストーリーを安易になぞるノベライズではない。前作『ゆれる』は、弟の視点から描かれた映画とは違い、幾人もの登場人物の視点を配して、映画の物語を補完していた。本書『きのうの神さま』も、映画『ディア・ドクター』のノベライズという体裁だが、様々な人物と時代と空間を使って、映画に縛られない独立した小説となっている。何よりも、映像では表現できない、言葉による心情描写が、堂々とした小説として貫禄ぶりを見せ付ける。
山間をわたるひんやりとした、清涼な風のような、文章でした。子供のころは、そんな風のなかには、神様がいるのだと思い込んでいたことを、思い出す。淡々と、でも動かしがたい重みを持って、その風は吹いてくる。逃げることも許されない、しんとした冷ややかさを保って。余韻が残る本でした。












