cyunkiti
「神の凍れる大地の上でひとりの人間の存在などあまりに小さい・・・」「ただの人間にどんなことができるか知ったら驚きますよ。」 そう、深いところに侵食していくようなこの言葉。「ただあの場所があるだけだ。」そこに溶けていきたい、自分というものをさっぱり拭い去りたいという切望は、まるで仏教の悟りに焦がれる僧のようだ。

極北で (新潮クレスト・ブックス)
ナイス! ★★★ -
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- 10/06
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ナイスした読書家さんと感想
雪、氷、闇の世界でたったひとり残った男の記録を小説に仕立てたもの。小説というよりその記録としてとても興味深い。どこまでがノンフィクションでどこからが味付けなのかが明確ではないが、閉ざされた世界で妻が現れ、その妻への贖罪の感情へと繋がる部分は見事だった。地元図書館になかったので他図書館から借りてもらうようお願いをしたら地元で購入してくれてうれしかった。
明けても仄暗い空の下、極寒の地に一人残った男。誰もが無謀な賭けの果ての死を思った極北で、男が目にしたものと行動の真の理由は。想像を絶する過酷な環境は、半ば主人公一人を描く物語を、単調どころか異様な緊迫感で結末へと導いていく。けれど物語冒頭、去っていく船を見送る男を振り返ると、訪れたのは絶望と孤独のみか、そこに狂気に近い福音はなかったかと思う。「ただの人間にどんなことができるか知ったら、驚きますよ」という言葉の影に、氷の前で奏でるバイオリンの調べと、もがきながら泳ぐあのアザラシの仔の悲鳴を聞いた後では。





