ナイフ投げ師
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ナイフ投げ師の感想・レビュー(131)
ミルハウザーを読むのは4冊目になるが今回も傑作だった――というかここまで傑作しかない、異常だ。話ごとに可否の波はあるものの、全体を通してみれば調和がとれ、かつ独創性に満ちている。人ですらない遊園地を主役に据えた『パラダイス・パーク』などミルハウザー以外の誰に書けるというのだろう。かと思えば少年をあるいは少女を主役にした『月の光』『夜の姉妹団』で思春期の繊細な心を緻密に豊かに表現する。著者の作品は似通ったプロットが非常に多い。にも関わらずこれほど多種多様な作品を生み出し続けるのは驚くべきことだ。
訳者&ジャケ読み。『ナイフ投げ師』、『新自動人形劇場』、『協会の夢』、『パラダイス・パーク』。ただただ自分の道を究め、高度過ぎるが故に最終的には大衆に見放されつつも、それでも止められない人たちの話に何故か惹かれる。ベストは『空飛ぶ絨毯』の青い夜空と青空のシーン。本当にあんなオモチャがあっても、子供が情熱を注ぐのは一瞬なんだろう。
子供の無邪気な遊びに残酷さを、素晴らしい芸術家についていけない極端さを見るような、ひんやりした怖さのある短編集。米文学にもこういう暗さってあるんだなあ。自動人形劇場、遊園地、地下街と、主人公が人間じゃないものも。私は表題作と「夜の姉妹団」が好み。
最初の四つは「あー、なんか奇を衒った設定でびっくりオチか煙に巻く感じ?」と思って読んでいたのだけど、『空飛ぶ絨毯』でオッ、『新自動人形劇場』でゲッ、『月の光』『協会の夢』でヤバイ……これはやばいぞ……となって『気球飛行、一八七〇年』『パラダイス・パーク』『カスパー・ハウザーは語る』はもう止まらなくなって『私たちの町の地下室の下』で訳者後書きの「ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ていて、」に心から同意するに至りました。この偏屈で、ひとりぼっちの印象が拭えない物語群はなんて美しいんだ!
ミルハウザーの語り口の何が好きかっていうと、精緻な文体や湧き出でるイメージもそうなんだけど、なにより語られる対象と語り手の距離感が絶妙なところかな。離れすぎても近すぎてもいない程良い間隔。一番好きなのは表題作の「ナイフ投げ師」、『バーナム博物館』所収の「幻影師アイゼンハイム」と同じく幻想と現実が融け合ってどっちか分からなくなる感覚がたまらなかった。
ミルハウザーの魅力は精緻な物語構成と筆致にある。ありふれた日常的な話題から物語が始まり、遊戯的な世界に簡単に踏み込んで行く。実験小説のように、SFチックな要素を用いて現代社会の体制を打破しようとするものではなく、不自然で特殊な世界の中で哀惜の念を描き出すにはどうしたらいいのか、から物語ることを始めている気がしてならない。それがミルハウザー小説の魅力である、職人・芸術家的で割とアメリカ古風な幻想世界の根本にあるものだ。
ミルハウザーの小説は、いつ読んでも何を読んでも緻密な描写と繊細なタイム感に眩暈を起こさせられる。コルタサルのような迷宮もミルハウザーが描くと読み手の心臓を剔るかのような描写で、でも非常にクールに描き出す。いったい誰が地下迷宮や遊園地を主役に描こうなんて考えるだろうか。そして偏執狂のように絡んでくる芸術家の精緻な芸。もう文句ない。早く新作を読みたい。もう一度過去作を読み返したくなった。
表題作のナイフ投げ師にひきこまれた。登場人物の気持ちの繊細な変化が手にとるように感じられるのがすごい。ぜひ長編を読みたいなぁ。
「ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ていて、いったんその魔法に感染してしまったら、健康を取り戻すことは不可能に近い。」(訳者あとがき) あまりにも濃厚なミルハウザー的な世界に一種の息苦しささえ感じる。しかし、しばらくするとまたその特殊な文章が読みたくなってくる。中毒患者のように。「こうしたいわば過剰の感覚こそ、グラウムの偉大さの核心に存するものであったが、人々はそこにある種の危険を見てとった。」(新自動人形劇場)
よく出来た夢を何本も見せられた気分になりました。私の(中)では室内はもとより、室外でも点描みたいな映像で頭に残りました。独特。何が独特なのか思い出し中。表紙が素敵!
紳士淑女の皆様、魔術師ミルハウザーがお送りする摩訶不思議な世界へようこそ。色とりどりの電飾に飾られた異次元の遊園地、人を完全に模したミニチュアが並ぶ全自動式人形館、あるいは青白い月の光に照らされた幻想の夜や、心地の良い闇に覆われた深い地下の奥。皆様をいまだかつて経験したことのない魅惑の世界へとお連れいたしましょう。では感嘆と驚き、そしてほんの少しの恐怖でもって、風変わりな世界への扉をお開けください。さあどうぞ。さあどうぞ。
突然あんぐりと口をあけている虚構の世界に誘われ、気が付くと物語の渦の中に。それに上手く乗り切れなかったりすると、途中で深い眠りに落ちてしまうのですが(笑)。この物語は広大な庭をてくてくと歩きまわるものでなく、高みに昇り詰めるか深く深く潜って行くもの。上下運動です。そして、どちらかというまでもなく地下への愛着が深く、大空へのあこがれの顛末は流行りのゲーム機みたいに物置に追いやられてしまった空飛ぶ絨毯にも明らか。
不思議な短編集。なかなか読みずらかったのですが、この不思議な世界に浸れると、頭の中にその世界が映像として広がって良かったです。「空飛ぶ絨毯」は子供のころの長い夏の日々~の出だしから惹きつけられ、「月の光」は短いながらも余韻に浸れました。
不思議な話。段々のめりこんでいったというか、世界観に慣れてきたので、また他の著作も読みたい。好きな短編は、「夜の姉妹団」「パラダイス・パーク」(これは、江戸川乱歩を思い出した)、「月の光」。この「月の光」は、音楽が聴こえてきそうなぐらい幻想的で綺麗な話だった。絶対的に空想の話なのに、何故か現実にある場所を描いているような気がしてならなくて、登場人物名や建物名の固有名詞でググってしまった。
“面白い”と思えるタイプの作品ではないが、不思議な魅力があり、惹きつけられた。文章がよい。特に「月の光」の情景描写にはうっとりさせられ、ため息もの。どれも素晴らしかったが、特に「夜の姉妹団」「新自動人形劇場」「パラダイス・パーク」がよかった。
究極のナイフ投げ師スティーブン・ミルハウザー。彼が今ふかぶかと華麗にお辞儀をして、舞台には紅のカーテンが下りる。そして、天井のすべての照明が点く。ほっとして、まわりを見回してしまう。ああ、現実世界に戻ってきた。「空とぶ絨毯」と「月の光」が好きです。
残念ながら途中からついていけなかった。ナイフ投げ師では心地よく混乱させられ、夜の姉妹団にはそわそわし、空飛ぶ絨毯にはわくわくし、他にも秀逸な短編に感嘆するんだけども、パラダイス・パークではさながらジェットコースターから落っこちたようについて行けなくなった。すさまじい想像力なんだけどプロットが似てるのがひっかかった。
ピンとこない作品も幾つかあるにはあったけど、「協会の夢」と「パラダイス・パーク」の圧倒的な描写力と幻視力の前では、何もかもがどうでも良くなってしまう。最高だっ!
月、夜、魔法、地下室、秘密結社、興行師、などなど、このようなキーワードに反応する方はミルハウザーを好きになる素質があります。私はその素質十分なので、訳者の柴田さんのあとがきにあるように、「師よ!一生ついていきます!」という気持ちになりました。
ナイフ投げ師の
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感想・レビュー:44件














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