後悔と真実の色
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後悔と真実の色の感想・レビュー(482)
若い女性をめった刺しにして人差し指を切り取る連続殺人犯「指蒐集家」。事件を追う刑事たちの中にも様々な確執がある。西條という人物になんだか共感を覚えなかったけれど、だんだん彼が追い込まれていくのは切なかった。指蒐集家が誰なのかは、3人目の犠牲者の時点で何となく想像がつき、的中だったけれど。でも、一気に読ませる筆力はさすが貫井さん、面白く読了。
2002年の『殺人症候群』以来の久々の警察小説。連続女性殺人事件という事件の構図と、その中から意外な犯人を浮かび上がらせる手法はデビュー作『慟哭』を思い起こさせる。複数の視点が入れ替わる構成はお馴染みのものだが、群像劇というほど各人に比重が置かれているわけではなく、あくまで主人公は西條なのでどこか中途半端な印象。主人公が徹底的に辛い境遇に追いやられるのはいかにも貫井徳郎らしくてニヤニヤしてしまう。それでも最後の最後、昔の貫井さんなら一線を越えたところが、今回は踏み止まったのも『慟哭』の裏返しなのかな。
なにかにちょっと似ているな……と思ったら、最近読んだ平野啓一郎の『決壊』だ。どちらもネットが絡んだ犯罪だ。しかも猟奇的な。主人公は本書では刑事、『決壊』では容疑者、と立場は逆だけれども、どちらもとても優秀な人間である。二人とも不倫という社会的にはよろしくないことをしているわけだが、それでも悪いやつだ嫌なやつだと思えない。そして二人とも救われない……。 ややっ、文体とか心理描写とかまったく違うんですけどね。でも現代の犯罪小説からはネットやエリートは外せないってことかしら。
久しぶりに読んだ貫井さんでしたが、おもしろかったです。主体がどんどんかわるので読んでいて混乱しかけましたが、慣れたら一気に読めました。現実の事件と同様に関係のある事実と関係のない事実が混濁しているところもよかった。
西條の設定や処遇に『慟哭』を彷彿とさせられる。登場人物が多くて(最近警察小説にハマってるのでこれはこれで楽しめたのだけれど)途中までは誰を軸にして読めば良いのかわからなくて少し混乱。最初から西條メインに描いた方がスッキリして良かったのでは。真犯人も案外簡単に捕まってしまったので、もうひとつくらいどんでん返しがあるのかと思ったけれど、それは期待し過ぎだった。綿引との確執も何かもっと確固としたものが明かされるのかと…。理由なくしてこういう関係が生まれることが有り得るのはわかるけれども。
人間、ここまで落ちるのか。と西条を見てなんともやりきれない気持ちになった。人間関係の脆さ、嫉妬、どろどろとしたものが渦巻いて相変わらず嫌な気持ちにさせるのが上手いが、あともうひねりあると良かったのに。美叡との別れは切なかったなぁ。
警察小説+人間ドラマ+ミステリという、ともすればごった煮になりそうな内容をきっちり起承転結まとめてくる構成力は流石。たとえ主人公であろうとその心を完膚なきまでに叩き潰し、読者にも容赦なく現実を突きつける貫井流は、やはり本作でも健在。本ミス好きからは「犯人丸わかり」「意外性なし」と非難の矢が飛んできそうだが、まっとうな警察小説に終始することない幕の引き方には、あえて賞賛を送りたい。でもまあ…第一作目としてこれを読むのはお勧めできないかなあ。
貫井さんの作品を読んでいると、自分ってなんて幸せなんだろうという思いと人の落ちていく所の描写が上手だという思いが交錯しながらエンディングへと向かっていく感じがします。私の中で何回か分岐点はあったのですが、美叡があ~ゆうことになった時が一番の分岐点でしたね。それから、人間関係のあっけなさと不思議さがまじまじと見れ、また、人間の心の思わくは到底測りきれない深みがあり、他人が見ているのは氷山から出た一角部分なのかもしれませんね。そして、いくら私利私欲なく仕事をしようとも他人はそれに迎合しないし、反対に悪感情を
「指蒐集家」を名乗る連続殺人犯と、それを追う刑事たちの人間模様を丹念に描いた警察小説。この「丹念さ」を冗長ととらえるか、「深い」ととらえるかで好き嫌いがきっぱり分かれる。出てくるのはひと癖ある刑事たちばかり、感情移入して読めるタイプの本ではないが、女のそれとはまた違う、男の嫉妬の怖さに、事件そのものより、ぞくぞく、わくわく。事件自体は、犯人を追い詰める過程も含め扱いがやや雑な感じもするものの、ソコを差っ引いても読み応えは満点。タイトルはややミスマッチな印象ですが。
登場人物の描写が細かく、一人一人の性格を覚えるまで時間がかかった。中盤から犯人が分かってしまったけど、それでも読み応えは十分にあった。ジョーさんの堕ちていく様は痛々しく、読んでて辛かった。
「指蒐集家」VS警察なのだが、警察側の語り手がたくさんいて主人公が誰なのかはっきりしないことと、警察内部のゴタゴタがいかんせん長すぎて、最初はとても読みづらかった。しかしながら、後半一気に加速。「指蒐集家」の正体は人物描写の印象から合致するのはひとりしかおらず、わりと前半できっとコイツだろうと予想できるものでその通りだった。それでもそれがつまらないとは思いませんでした。
脳裏に、心に、染みついて拭い去れない色がある。この手がまだ、大切なものを守れると信じていた頃。赤く塗り潰された骸、奪い去られた指、ネットに響く連続殺人鬼の嘲笑。焦燥、嫉妬、保身、侮蔑、野心、閉塞、孤独。警察組織という檻の中、牙と傷を隠し持つ刑事達の中に幾つもの感情が渦を巻き、入り混じった色はやがてどす黒く濁る。守るためにあると疑わなかったその手が、真実と共に掴み取った、絶望、空虚、後悔。悔やんでも、嘆いても、二度と取り戻せないものがあり、失った後でようやく知るものがある。消え去ることのない、苦い色を。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(2)
- 10/06
ちはや@灯れ松明の火(文さんに協賛!)
半端なく重苦しい読後感、人間臭い通り越して不快感すら漂わせる登場人物たち、結構分かりやすい自意識過剰でウザいシリアルキラーの正体と、好きじゃない要素はてんこ盛りなのに、一気に読み進めてしまう吸引力は作家の力量か。読み応えはあったので『好きな本≠面白い本』の法則に当てはまる作品。ストレートなミステリーだと思っていたら中盤まさかの主人公落としで、ああコレって犯人捜し云々よりもドロドロ人間ドラマだったのかとやっと気づく。いやもう後悔ってレベルじゃないでしょう、転落しすぎの痛恨の極みだよ。
ナイス!
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10/07 00:23
半端なく重苦しい読後感、人間臭い通り越して不快感すら漂わせる登場人物たち、結構分かりやすい自意識過剰でウザいシリアルキラーの正体と、好きじゃない要素はてんこ盛りなのに、一気に読み進めてしまう吸引力は作家の力量か。読み応えはあったので『好きな本≠面白い本』の法則に当てはまる作品。ストレートなミステリーだと思っていたら中盤まさかの主人公落としで、ああコレって犯人捜し云々よりもドロドロ人間ドラマだったのかとやっと気づく。いやもう後悔ってレベルじゃないでしょう、転落しすぎの痛恨の極みだよ。
ナイス!
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10/07 00:23
登場人物が多く、人間関係も複雑。これだから警察小説は苦手なんだよなぁ、とか思いつつ、序盤はページを繰る手も重かったのですが、中盤以降はイッキ読みでした。さすが貫井さん。「指蒐集家」と自称する連続殺人犯とそれを追う警察組織の話ですが、終盤はある刑事を取り巻く環境の移り変わりも話の軸になります。特別、目を引く作品という訳でもないですが、期待を裏切らない面白さは十分ありました。 6点/10
しばらくは登場人物が多くて名前や立場、性格等がゴッチャになって、数回前に戻って確かめたりした。犯人はわりと早めにわかったけど、犯人云々よりも刑事の泥臭さが怖いというか不快で、事件自体も変質的だし、とにかく疲れた。長かったし。でも読みごたえはある。気力体力のある時に読みたかったなー。
★★★☆ 7 ミステリーとしては犯人はわかりやすいけれど、それは欠点にはならないと思った。貫井さんは文章が非常に上手く、この作品は犯人当てよりもストーリーが優れているので気にならない。共感できる登場人物が一人もいなかったため、高評価はできないが、山本周五郎賞をとっただけの描写力には納得できた。それにしても、西條さんの奥さんは典型的なヒステリック女ですね。
最初は、人間関係の絡み具合。警視庁と所轄署、機動捜査隊、そして制服警官…。色々あるのね、男社会にも確執が。ちょっと、ロースタート気味に読み始めましたが話が進みだすと、もう止まらない(笑) 貫井さんの本、先が気になって寝られません。どちらかというと、犯人探しを楽しむタイプの話ではなく、人間関係と確執を読むヒューマンドラマですね
犯人は結構わかりやすいですが、犯人あてミステリーではないのでそれでもよいのかな。 登場人物たちの考えや行動についてがメインでしょうか。 やはり貫井さんの作品は、こう、後味があまりよくないものが多いですねー。色々と報われない人が多いです。
同じ警察物の症候群シリーズとは随分毛色が変わったものの相変わらずしっかりした構成でこちらも面白かったです。 自分に素直に生き過ぎた為に周りが見えず、全員が強い人だったらと無理でも思わずにはいられないです。
長編のせいか、最初はこの作品のおもしろさがよくわからなかった。が、徐々にいろんな刑事の人柄や、事件そのものの奇怪さ、犯人の周到さに引き付けられていった。この主人公は頭はキレるがほんと後悔のドン底だな〜と思いました。 貫井作品は愚行録に続き二冊目ですが、構成がしっかりしてように思います。
主人公がどんどん追い込まれていき、がっつり感情移入できました。犯人はなんとなくわかってしまうし、その他の人物もあまり興味は持てなかったんですが、主人公西條のキャラは大好きです。読んで損はないと思います。
主人公が活躍…はするけれど、むしろ報われない感じが大き過ぎる。犯人もかなり初期段階で予測がついてしまうし、読後感が今ひとつ。
このラストは辛いな…。最後にもうひと山くるかと思ったんだけど。事件は解決したけど、登場人物の心理が解決していない感じ。ところで貫井さんはタイトルのつけ方があまりうまくなくて損している気がする。
人の心は本当にわからない…私には最後まで犯人の予測がつかなかった。あっさり捕まったかと思った時は拍子抜けしたが、そう単純じゃなかった。人間の悪意とか恨みとか、負の感情がとにかく恐ろしい。
やっばり面白い。貫井さん。 真ん中あたりで 犯人の大体の見当をつけていたんだけど、おお当たりで満足。 内容(「BOOK」データベースより) あの強固な呪縛から、いつか解き放たれたかった。若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人魔「指蒐集家」が社会を震撼させている。警察は、ネットでの殺人予告、殺害の実況中継など犯人の不気味なパフォーマンスに翻弄され、足がかりさえ見えない。その状況下、捜査一課のエース、西條輝司はある出来事を機に窮地に立たされていた―。これは罠なのか?被害者たちにつながりはあるのか
ううぅぅぅぅ~~~~~ん。何を読んだときに思ったのか忘れたけど、貫井さんは警察関係に何か恨みでももっているのではなかろうかと思うほど、酷い扱いをされること多し。ここまでしなくても……と思ってしまう。動機もトラウマも行く末も納得できず。最近の貫井さんの作品は、私にとってはハズレが多く、残念。
嫌いではないのだが、長い、犯人がわかる、つかまり方が雑、という3点を以てちょっと減点。「慟哭」と比べてしまうと、物足りなさが残る。
警察の中のドロドロ事情がリアルです。自分的には犯人は最後まで読めなくて面白かったです。長かったけど飽きない感じでよかったです。
何よりも警察組織のリアルな描写が売り。 刑事たちによる抜け駆け、妬み、足の引っ張り合いなどなど人間的なやりとりが面白い。 ただストーリー展開は特筆すべき点があまりなく、真犯人もあっさりとしたものだった。
500ページ超えでしかもこの文字の小ささ。普通の700ページ位になるんじゃない。長い分出てくる人物が多すぎてこの人誰だっけと読み返すことしきり。犯人は途中の段階でなんでこの描写って思えるところがあり割と作者が指摘しているところがあります。(ネタばれになるかな) 全体としては主人公の浮かばれなさと、そこまでしなきゃ駄目なのかなと?マークが頭の中で飛びまくってました。貫井さんの作品の中では珍しくハズレでしたね。本当は「明日の空」が借りたかったんだけど無かったもんだから。
途中から多分この人が犯人なんじゃないかと思いながら読み進めた。でも予想外の人が捕まったり、意外な展開になったり。真実を追及するまでのどんでん返しが面白かった。この本のように、警察の人が悪を憎み正義をもって行動して、そういう気持ちでいると信じたい。
すごい面白いと思えるお話だった。
序盤はなかなか入り込めず苦労したけど、中盤あたりから一気に加速。でも西條がかわいそう過ぎてこの展開はショックだった。何もここまで落ちなくても・・・。最後まで犯人が判らずやっぱり驚かされた私だけど、動機が正義だから同情した。なんだか可哀想な人たちばかりだった気がする。
後悔と真実の色の
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感想・レビュー:201件











































