月と六ペンス (光文社古典新訳文庫)
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月と六ペンスの感想・レビュー(177)
後期印象派の画家ポール・ゴーギャンをあてこんだ,イギリスの小説家モームの長編。作中の「私」は一種「神の視線」というか,第三者的な視線を感じさせる。そして,その中に,理想と現実の境目を行くストリックランド,道化的に舞台廻しとして活躍するストルーブなどが登場,プロットと描出手法の巧さが光る。 モームといえば,『人間の絆』や本作が代表作に挙がるように,本作は出色の一編とされている。たしかに,英国小説にしては,すっきりと読める作品と言えよう。もちろん,英国小説の多少無骨な感じが出てしまうのは,お国柄であろうが。
超有名な『月と六ペンス』ようやく読了。今の今までこんな話だとはつゆ知らず。ゴーギャンが一応モデルらしいが、内面はかなり本人と違う。正直いえば、先日読んだ『回転木馬』のほうがずっと好き。この話は、う~ん、何と言うか結構タフですよね。それにエピソードが多過ぎて、多少冗長な気が。男は偽善的なイギリスの上流社会から抜けだし、パリ、マルセイユ、果てはタヒチまで行く。原始的生活が主人公に適合していたのなら、あの奥さんは絶対に赦せないタイプだろう。視点のベクトルが全然違うしね。最後の場面はホント、ムカついた。
打ちのめされた。こんなに打ちのめされた本は久しぶりだよ。
バルガス=リョサの『楽園への道』を読んでいたものだから、ストリックランドが描いた傑作が頭のなかにじんわりと浮かんできた。『月と6ペンス』にしても『楽園への道』にしても、画家である主人公は狂人であり、変人として描かれているけど、それぞれに趣向があって両作品とも面白い。この本を読んだ人は是非、『楽園への道』も。私は今、再読しています。
【皮肉屋と芸術】皮肉屋である語り手の「私」がストリックランドという天才画家について語るという体裁を取る小説。はじめは、個性のない人間として描かれていたストリックランドが、画家になりたいという欲求に突き動かされてから獣のような個性と天才性を見せる。しかし、彼を突き動かした物が何であるのか、彼の絵の素晴らしさが何に起因するのかは明らかにされない。神ならぬ語り手である「私」には、そんなことは分からないからである。しかし、そんな「私」が皮肉まじりに語るということがこの小説の何にも勝る味になっていると思われる。
印象に残ったのは主人公でも偉大な芸術家でもなく平凡で善良な絵描きストルーブだった。生きることが道化的になってしまう悲劇性、確かな審美眼を持ちながらもそれを創作に繋げることのできない非才、そんな男が本物の天才に出会ってしまうことで幸せを奪い去られる。見分けることができる人間は、美や真実を見られる代わりにギフトを与えられた天才の苦悩を知り、関わらずにはいられなくなる重荷を負うことになるのだろう。映画アマデウスのモーツアルトとサリエリを連想した。
突然妻子を捨ててまで画家を志したストリックランド。他人に理解されず、貧困に窮しようが自分の感性を信じ創作活動に没頭する姿には感服いたしました。
ハワード・シュルツはその情熱を語る。僕にとって大きな存在である叔父もそれを語る。ストリックランドは情熱に殺されたのだろうか。六ペンスほどの現実を拾うのに精一杯な僕は、夜空に浮かぶ月を眺めることさえ今は難しい。そんな俺のニヒリズムの中からも小さな青い炎が熱く燃え上がることを信じて。
初モーム。語り手、あるいはモームの人間に対する洞察力には本当に舌を巻いた。すばらしい小説。たとえば作家の人間関係についてや、結婚や生まれる場所についてのところとか・・・。人間観察をせずにはいられない語り手も含めこの小説のなかでは人がまっさらのまま描かれる。ところで「なぜここにいて、どこへ行くのか、誰も知らない。」というストループの言葉はゴーギャンのあの絵につながるのか・・・。
実はモームを読むのは初めてのことだった。本作品のタイトルもそうだが、モームの小説の題名には魅力的なものが多い。題名のセンスから女性を想像させたが、どうやらゲイだったようだ。頷けるものがある。 本作を読んだだけでは、タイトルの意味は全く読み解けない。月は理想、6ペンスは現実を表しているらしい。ストリックランドが到達した芸術が理想、描かれた名画が商業的価値を生み売り買いされるのが現実といったところか。 読みはじめは凡庸な小説のような印象を受けたが、読み進むにつれて、その不思議な描写力に突き動かされた。
大変面白く読ませて戴きました。解説を読むまで題名の意味がわからなかった。日本で言う月とスッポン? ストリックランドの破天荒ぶりには呆れるが、確かにその人間の強さには感服させられる。なにものにも動じないその強さは、まさしく頑固一徹石頭。その激しい生き様に人々は惹かれるが、うっかり触れれば身を滅ぼす。生きる信念を貫く様は、人々に自分の弱さを突きつける。作中「私」とストリックランドの言葉の応酬が好きだったのですが、後半それがなくなり残念。「私」の個性が薄すぎるのは残念。ストリックランドとの比較のためか?
★★★★☆昔挫折した本の新訳で読み直し。とても読みやすかったです。芸術表現に生活の全てを捧げるストリックランド。淡々としているけど、壮絶な人生。また、文中のストリックランドが指摘する事柄に、自分に言われているように感じることが何回かあった。また、解説で、本の謎は謎のまま放置してあるのは、人間(人生)の謎と同じで誰にも分からない、というようなことが書いてあって、最近読んだ本の内容に納得が言った。ありがとう!
ストリックランドが最後に残した壁画の場面がすばらしかった。読書中、「月と6ペンス」の題名の意味をずっと考えていたけれど最後の解説読んで謎が解けた。モデルになったゴーギャンの絵が見たくなった。同じくゴーギャンをモデルにしたバルガス・リョサの「楽園への道」も読んでみようと思う。
ゴーギャンをモデルにした画家・ストリックランドの半生を作家である「私」が追う。原文は読めないが訳者の腕を感じる。当意即妙、漢文の読み下しのように簡潔で気持ち良い。当初ストリックランドの人物像をあまりに天才として典型的な変人のように感じつまらなく思ったが、タヒチで最期を迎えるまでそれを揺るがさずに書きった著者の力量に押されてか、いつのまにか肩入れしていたよう。他にも人物像など端々にクサさを感じるものの掘り下げが巧く、時代や舞台の空気もリアルに楽しめた。古くささを感じないのは新訳だからというだけではないだろう
作家である語り手の、良心に関する考察に感心した(p100)。画家になる前、良識ある一般社会人として生きてきたストリックランドの心境はどんなものだったのだろう。また、画家として三流のストルーブもある意味相当なものだと思う。
「月と六ペンス」の意味とか、主人公のモデルがゴーギャンであるとか半端な知識はあったものの、解説を読んでゴーギャンとは類似点より相違点の方が多いとか、語り手が独身男性である意味とか改めて知り、目から鱗。画家ストリックランドの天啓に沿った容赦ない生き方、そしてその絶命する瞬間、遺言までもが壮絶であった。読み応えのある一冊で満足。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(6)
- 11/17
死後その作品が高く評価されることなった「天才」画家チャールズ・ストリックランドの人生とその人物像。若い新進作家の「私」は、平凡で退屈な男だと思っていた株式仲買人ストリックランドが突然妻子を捨てパリへ出奔したと知り驚く
村上春樹つながりでおすすめされて。生まれる場所を誤る人がいる、のくだりが好き。私も海外に行った時そのように感じたから。ブランチの話も残酷で美しい。改めてゴーギャンの絵を見たい。
とにかく揺さぶられます。翻訳の言葉の選出ひとつひとつが秀逸。あらゆる芸術家とは媒体を問わず人の心に語りかけるものが何かしらありたいと心底おもいました。
「月と六ペンス」という題名にすごく惹かれるものがあって読んだ。読んでみて「月」が理想で、「六ペンス」が現実という意味だと知った。実際のゴーギャンとは相違点もあるが、画家の人生は壮絶だなぁと感じた。これを読んでから、ゴーギャンの作品を見てみると今までと違った風に見れて感慨深い。
理想のために現実のあらゆるものを捨て、自分は疎か他人を犠牲にすることも厭わない。憤りを覚えるほど身勝手でありながら人を惹き付けてやまない男。芸術とは人間とは幸福とは?読者に多くのことを問い掛けてくる作品。翻訳も素晴らしく、古典新訳文庫で読んでよかった。
ある天才画家のお話。現代語訳のおかげでとても読みやすく、また面白かった。皮肉屋の小説家が追うその画家は、まるで人をやめてしまったかのような振る舞いをする。にもかかわらず小説家も読者である自分も彼に惹かれていく。何故かと考えてみると、書き手である小説家が知りたいと思う事が読者の自分と重なってくるような巧みな書き方がされているからだ。繰り返し描かれる蛮行とそれに対して感じる軽蔑と嫌悪。なのにいつの間にかストリックランド何を求めているのか知りたい自分がいる。しかし答えはやはり想像するしかないのだ。
究極の生き方だな。地位や名誉やまして家族とか愛とか、欲しくて安定したくて懸命に生きている人ばっかりなのに、その全てを捨てて自分の欲望のまま絵画に生きるなんて。彼自身は幸せな生き方だったんだろうけど、あまりにも周りの人に冷たすぎてやるせなくなる。小市民の私は月(理想)に憧れながらも6ペンス(現実)を探すと思うし。
ロンドン、パリ、マルセイユ、そしてタヒチ。舞台を転々としながら、ぶれない描写。マルセイユの夜の街。タヒチの奥地の濃密な香り。芸術家が苦しみ抜いて生み出した作品の美を味わうには、その苦しみを想像し寄り添わなければならない。語り手とストリックランドの関係についての解説はこのことだったのだなぁ。見えない他者を、見ることが出来る作品の解釈を通じて、最大限に知りたいと思うこと。その形は様々。だからこそストリックランドが遺作を燃やしてしまったのは…
ゴーギャンがモデルと知って大変興味深かった。そして、世界的に有名な画家が、実際はこんなに壮絶な生涯だとは・・・せめて、生前少しでも認められていたら良かったのに。しかし、絵画にとり付かれてある意味狂気だと思った反面、羨ましくもあった。いつか、タヒチに行ってみたくなった。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(0)
- 05/13
一人の男の創作への衝動が、大きな謎として主題に据えられている。主人公はそれを追い、話が進んでいく。その謎を解く鍵を見逃すまいと読み進め、物語にぐんぐん惹き込まれた。 解説を読んで気づくことも多く、機会を作ってもう一度読み直したい。
「私」とストリックランドの皮肉たっぷりなやりとりがたまらない。淡々とした文章だけれど、作品にこめられているものはとても深いのだと感じた。
なかなか。題材と目の付けどころはとても良いと思った。あと、天才の描き方が意外性があってちょっと面白い。でも何度も同じこと繰り返してて正直くどいかなって思う時も多々あった。
モームは『世界の十大小説』や『読書案内』のほうを先に読みましたが、小説は初めて。絶対モームとは合うだろう!と思っていたけれど、想像以上に素晴らしかった。 芸術って、なんだろう。
「他人には、放っておいてくれること以外、何も求めなかった。ある幻以外は目に入らず、それを追い求めるためなら、自分自身を犠牲にすることはもちろん(これは多くの人ができる)、他人を犠牲にして省みなかった。それほどの幻を見ていた。ストリックランドは実に不快な男だ。それでも、やはり偉大な男だったと思う。」
「月」は理想「六ペンス」は現実。ストリックランドは現実にある小さな幸福を捨て去り、理想である最高の幸福を追い求める。富と名誉だけではなく、良心、愛さえも彼にとっては邪魔なものだ。そして、自身の肉体と引き換えに真理を得る。感動のシーンだ。人生とは?幸福とは?頭の中をリセットして考えたくなる小説。
ウィットに富んだ文体がまったく飽きさせない。語り手は生活をすべて投げ打って芸術に打ち込むストリックランドを、時に苛立ちながらも憧れてやまない。それは彼が(自分とは異なり?)芸術の「自由」を具現しているから。タヒチでの描写は、本当に美しく、読む者を酔わせるだろう。
月と六ペンスの
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