神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)
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神を見た犬の感想・レビュー(227)
ブッツァーティの短篇集はこれが3冊目だけど、セレクションとしては、この本がベストだった。400ページ近くあるのに、あっという間に読んでしまった。皮肉の効いた話があれば、心暖まる話もあり、早く次のページを! 早く次の物語を! と寝る間も惜しんで読みふけったので、次の日の勤務が辛いことこのうえない。解説も実に詳しくて参考になった。これはぜひ読むべき一冊でしょう。
簡潔で口当たりのよい文章、少しずつ醸されてくる不気味さ、素晴らしく切れのあるラストと読後の余韻。テンポよく次々と読み進めていくとあっという間に全部読み切ってしまいました。でも、現在入手可能な短篇集は本書だけなのですよね・・・もっとブッツァーティを読ませろ!(常習性注意)
新年一発目に良い本読んだ。幻想世界の中に笑いや恐怖をふりかける塩梅が絶妙で、読んでて思わずニヤリとすることもしばしば。どの作品も本当に素晴らしく甲乙つけがたい、より広く読まれるべき一冊。
イタリアのカフカと称されるそうだが、日本人の自分としてはやはり星新一の短編世界を想起した。どこか無機質で不条理な世界観、そして簡潔な文章の中に隠された、普遍的で痛烈な皮肉。信仰が形骸化した現代人や物質文明に警鐘を鳴らし、本当に聖なるもの、畏怖すべきものは何かということを示唆するような寓話が多かったが、個人的には、やはり巧さと深さと面白さのバランスが素晴らしい「七階」がベストか。ほのかに南米チックな香りもする「護送大隊襲撃」、想像するだけで圧巻の「戦艦《死》」のイメージも好き。
イタリアの幻想作家、ブッツァーティの短編集。「コロンブレ」は堀江敏幸の河岸忘日抄で主人公が読んでた小説かな。破滅を恐れながらもそれにたまらなく惹かれていく人間心理。「驕らぬ心」はちょっとO・ヘンリーっぽい話。こういうの結構好きだ。「七階」は病院機構の不条理に対する恐怖を扱った喜劇?作品。展開も結末も初めの方で予想はつくが、そこに至るまでの過程が読んでて可笑しいし、また恐ろしい。あと、"聖人もの"の中では「天国からの墜落」が気に入った。天国にないのは希望だけだ。しかし、この作家のキリスト教観は変わってるな~
表題作、神を見た犬や護送大隊襲撃、マジシャンなどの優しい話から、七階やこの世の終わりなど人間の生き様や欲望を皮肉った話など盛りだくさん。冷やかな視点から、でも人間というもの、人間の可能性を、心から信じた人の書く話だなと思った。イタリアの作家の作品を読んだのは初めてだけど、「聖人」が自然に話の核となっているのがとても新鮮だった。「作家がなぜ書くのか」という件で、そうだ、ほんとうに、その通りだと思って号泣してしまった。
現実と虚構が地続きになった世界。醜く、陳腐で、心もとなく、それでも愛しい人間の姿が巧妙に描かれている。「七階」と「グランドホテルの廊下」がよかった。
神とは何か。神とは、人間がつくり出した幻想なのではないか。そんなテーマを扱った寓話に溢れた短編集。気に入ったのは「コロンブレ」「戦の歌」「七階」「神を見た犬」「天国からの脱落」あたり。「アインシュタインとの約束」「マジシャン」には創造者・芸術家としてのブッツァーティ自身の葛藤が垣間見える。特に後者は芸術批評の分野でも興味深い示唆を与えている。芸術を創造することの意味とは何か。冷静な語り口の他作品とは一線を画す、ブッツァーティの切ない胸の内の吐露のように思われる。
読みやすくかつ飽きない、全体的に悪くない短篇集だった。しかしどうしても海外文学は心に響かぬものが多い。ブッツァーティの作品はいずれも幻想文学の体を成しており、いかにも自分好みのもののような気がしていたのだが、読んでみると大したことはなかった。軽い小咄のような感じ。
ウィットのきいた短編集です。表題作も含め、人間社会への風刺がスカッとする作品が多かったなぁ。個人的には「アインシュタインとの約束」「1980年の教訓」「秘密兵器」「この世の終わり」が好きかな。「風船」「驕らぬ心」もきれいな作品だと思います。
七階は読んでるとどんどん欝になりました…解説にもあったけど幻想的なことをあえて、三面記事を書くように書いていてこれは幻想か現実か分からなくなりますね、
「マジシャン」のラストに思わずジンとなってしまいました…。そしてやはり「七階」読んだのは二度目でしたが蟻地獄に落ちるような息苦しさに胸詰まる恐怖は健在でございました。皮肉や嘲りを交えつつも、人への信頼と愛の見え隠れする22編でした。
「小賢しく立ちまわってきた連中も、これで終わりだな!」「利口ぶるのもこれまでだ。そうだろ?これからは私たちこそ賢者だ!」「これまでいつだってバカ扱いされ、からかわれてきた。いまこそ、誰が本当に賢かったのかはっきりするというものだ!」『この世の終わり』より
寓話的な幻想小説集。主人公は、生を意義付ける価値を求める人々。そんな普遍的な人の生きざまを、時に英雄的に(コロンブレ、護送大隊襲撃、戦艦《死》)、時に悲劇として(七階、アインシュタインとの約束)、時に小気味好い皮肉とともに(神を見た犬、クリスマスの物語)描き出す。独特の繊細な哀調は親しみやすく、クセになりそう。
聖人、祭司、神。どれも素晴らしかったですが、ベスト3を挙げるとしたら『七階』『神を見た犬』『戦艦《死》』です。作者は現代を予知していたんですかね。
「不安」を寓意化したような印象。あるいは「不条理」と読み替えてしまうことも可能かもしれないが、不安というのは確固たる姿を持って現れる「絶望」とは少しばかり違う物であり、はっきり“これ”とは言い表し難い怖気を伴っている。空中に静止したまま何もしない神の手や、街を徘徊する犬など具体的な破滅を欠いて現れる者たちは、突き刺されるよりも染むような毒を残して物語に幕を引こうとする。およそ滑稽にも見える情景が、いや増しに促進される不定形さへの悲嘆を印象付ける。つまりは、散逸して掴めない不安を。
人間の間違った思い込みや愚かな抵抗を、高みから冷笑しながら見ているようでいて、実は人間嫌いじゃない…そんな作者の気持ちが垣間見える。神様達でさえ狼狽しているんだから、人間ごときが右往左往するのも許されるでしょう。
世界の不条理さを描こうとするその視点が素敵。「もし不条理なものが自分達の世界に突然入り込んできたら?」という恐怖を描いた表題作は面白かった。
「タタール人の砂漠」に続き、ブッツァーティ2冊目。幻想的でありながら、そこに渦巻くのは生々しい人間の私利私欲。それを隠そうともしない潔さ、下品さを突き放して見せる。だが汚いままで終わるものもあり、そうでないものもあり。実にシュール。
どこか菊池寛と共通点を感じる(ないけど)、キリスト教、死、悪夢の話。 落ちに新鮮味を感じないものがあるけど、短い作品だからなんとか瞬間描写みたいになりなっているのかな?(個人的には頂けないのだが) 聖人の話と、『アインシュタインとの約束』、『護送大体襲撃』、『クリスマスの物語』、『マジシャン』、『戦艦《死》』が好き。
そんなつもりはなかったんだけど、ブッツァーティを2冊連続読んでしまった。短編もいいね!神々の話が面白かったなぁ~。信仰に対する下地が私たちとは違うんだろうと思うけれど、信じる気持ちと信じない気持ちの揺れがなんとも言えず絶妙。そこまで書いても大丈夫なの?と少し心配になりつつも、でも皮肉な視点を持ちつつも、圧倒的な善きもの(それが神?)を信じているんだろうな、という感じが伝わってきて、読後感は決して悪くないのだ。病院を皮肉った作品も秀逸。
ベネディクトの「西欧は罪の文化、日本は恥の文化」というフレーズは、すり切れるくらい使われていてゲンナリするが、それはあくまで神学レベルの話で世俗的には恥が罪を生むのだよな。フーコーのパノプティコンを連想(表題作)
神や聖人が登場する話が好き。特に「天地創造」「聖人たち」「風船」「天国からの脱落」「奢らぬ心」数編ずつ、寝る前に大事に読んだ。他のコメントにもあるように「天地創造」で始まり「この世の終わり」で終わる点、やや長い話の後に短い話を持ってくる点や趣の異なる話を並べる点など、本としても素敵なつくり。いつでも再読したい本。☆5つ!
タブッキといいこの作家といいイタリアには不思議な感じを書く作家によくあたる気がします。この本はニヤッとしてしまうところもあって面白かったです。
なかなかに奇妙な味わいの短篇集。他愛もないスラップスティク調あり、叙情的な幻想風あり、諧謔あふれる風刺あり、なかなかに多彩で巧い。特に啓蒙的というわけではないが「聖人シリーズ」ともいうべき、聖人の登場する話が多く収められていて、そういったローマ・カトリック的な宗教観もまた英米とは少し違う感じがして面白い。
「哀しきユーモア」あるいは「シニカルな笑い」とでも言うべきか。人間たちの愚かさを憎めない形でうまく描きながら、神や聖人もまた愛嬌のある存在にしている。上質の二十二話をしっかり堪能させてもらい、大満足。
神を見た犬の
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