掏摸(スリ)
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掏摸の感想・レビュー(599)
お前がもし悪に染まりたいなら、善を絶対忘れにことだ。もだえ苦しむ女を見ながら、笑うのではつまらない。気の毒に思い、可哀そうに思い、同情の涙を流しながらもっと苦痛を与えるんだ。もし今回の仕事に失敗したとしても、その失敗からくる感情を味わえ。おれは人間を無残に殺したと後に、昇ってくる朝日を美しいと思い、その辺の子供の笑顔を見て、なんてかわいいんだろと思える。運命にもし人格と感情があるのだとしたら、これは紙や運命が感じるものに似てると思わんか?善人や子供が理不尽に死んでいくこの世界で!
凄く好き。天才スリ師と極悪人。人生もうどうなってもいい感じであるのに、 体に染み込んだようなスリは生きてる感じがする。職人か。 木崎はそこまで怖さは感じなかったけど、怖さが綺麗に整っていて何か美しい感じ。 子供を見てると生きたくなるなとおもった。
週間ブックレビューでご本人のインタビューを拝見し、興味がわいた。ハードボイルド系ミステリーとして読んだらいいのか、文学作品なのか少し戸惑った。あまり多くの説明がないから、刹那的に生きる主人公の過去が余計に気になる。木崎は今まで読んだ悪人の中でも一、二を争う怖さだ。読むのにかなりエネルギーがいるわ〜。
現実では、子どもに優しくしたからってスリを擁護する気にはならないけど、そんな気になっちゃうのが、この作品の力なんだろう。大悪党に負けるな、生きろ!と思う。生きにくくても生きろというメッセージ、伝わりました。何より面白かった!
作品の中にずっと流れる倦怠感、もどかしさ…何と言ったら良いのだろう、求めても求めても得られない幸福感や満足感、生きている間はそれが反社会的行為であろうと止めることなく追求し続け無くてはならない、妥協や誤魔化しを容赦なく切り捨てる作者の潔さすら感じた。必要なものも必要でないものも他人の所有しているものを掏る、その行為に意味がある生き方をする主人公。人生の最期はどうなったのか…
スリをする場面は一瞬一瞬の動きが描かれ、スピード感や息が詰まるような緊迫感があり、緊張しながら読みました。木崎の存在はどこまでも恐ろしさをつきまとわせるようであり、運命を操られていたのかと思うとやはり理不尽さを感じてしまいました。
中村文則初めての作品。実家に帰ったとき本棚にあったので、タイトルだけ見て読んでみた。どこにでもあるミステリーと思ったが、すごいディティールの表現力、なんかこうすれば自分でも掏摸が出来そうな臨床感たっぷり。そして最後の緊張感、下手すればこれが今年最高の本になるかも。期待せずに読み始めただけにショックだった。他の作品も読んでみよう。
主人公の斜に構えた感じと、地の文の“僕”という一人称から、けっこう純度の高いジュブナイル、というかモラトリアム小説の雰囲気が漂っている。それがまた、スリなんて職業(?)をしてるのだから、ギャップが何とも。まあいい。スリの部分の臨場感は凄い。ラストの虚無感は圧巻。独特の文章のリズムは馳作品か花村作品のよう。「土の中の子供」より読みやすくチューンアップされてるが、ちょっとまだエンタテイメントに徹しきれてないのかちょい中途半端。まだまだ発展途上、ですな。 ★★★☆☆
短編を読んで、中村さんに興味を持った。無意識に他人の財布を盗ってしまう掏摸(スリ)の男の物語。先の見えない、闇とも孤独とも分からぬ泥沼にズブズブと堕ちていく感覚がたまらない。率直に言って好きな文章だ。あとがきの塔の話にも惹きつけられた。また独特の仄暗さに浸かってみたいので、追っかけてみることにする。気になる作家が増えた。
ずっと読んでみたいと思っていた作家さんですが、きっと暗いだろうなと思って、なかなか手を出せずにいましたが。 この作品は、確かに暗いですけど、エンターテインメントな感じで驚きました。とても読みやすく読めました。 スリの仕事の描写は楽しく読めるし、少年との交流もよかったです。 でも、なんていうか主眼は、そこじゃないんだろうな。 弱いものが生きていくことについて、読後にぼんやりと頭に残る感じがよかったです。
初めて中村さんの著作読みました。最初は短文の独特な感じが少し気になったのですが一気に読めました。内容は全然違うのだけど、花村萬月の作風を思い出しました。
選ばれている、と思う。喜びを味わうだけが人生じゃない。これほどまでの恐怖や絶望は、選ばれし者じゃないと味わえない。うらやましい、とは思わないけど、でもうらやましいのかもしれない。
久々に読み始めたら止まらない体で一気読み。映画を見ているかのように映像が浮かび、息もつかせぬ展開でページを繰る手が止まらなかった。巧者。初めて読む作家で特に先入観もなく読み始めたが思わぬ拾い物をした。こんな年末差し迫って年間ランキングを替える作品に出会うとは・・・
結構有名な作品?なのに気付かず手に取り、読んだ。この人の本は初めてだったので他の本も読んでみたいなー(*^_^*)全体的に暗いテイストの本ですた。
スリ師を生業にしてる男が、たまたまスーパーで母に強要されて万引きしてる少年を発見。スリの極意を教えていく。一方、男は命をかけた大きな仕事に挑んでいく。スリ師としての緻密な描写は興味深いが、悪をテーマにしてるには弱い。が、一気読み。
中村文則作品はやはり読み終えた後、ホッとする。すべてに絶望することにより希望が生まれる。『運命ノート』の内容だけでも映画化出来そうな作品!
スリの鮮やかな手口や蘊蓄を読むと、ドキドキすると共に自分の身はしっかり守らなくてはと思った。木崎の話を聞いた後では、あの親子でさえ木崎が用意したものかと深読みしてしまう。映像化するなら、主人公は山田孝之、木崎は遠藤憲一で見たい!主人公が最後に少年に渡した箱の中身が気になる。
中村作品を読んだのはこれで2作目。やはり全体的に暗い低調な印象なんだけど、所々ぱっと物語が燃え上がるので、ついぐんぐん読まされていきます。運命とは何だろう?私は最後のコインを拾うものが現れて主人公はよみがえると信じます。
「死にたくない、生きていたい。」と強く思うところ。人が最終的に行き着く最大の欲求だと思う。そこに感動できたなぁ・・・。主人公は助かったんだろうか、それともあのまま惨めなまま死んだのだろうか。自分の中に主人公(犯罪者)が生きていて欲しいと思いがあることは案外素直に受け止められた。みなさんもそう思っているようですし・・・。主人公が「開けるな」と言って渡した『箱』。あれすごい気になるなぁ。じゃぁなんで渡すんだ! なにが入っているんだろー。希望とか?(パンドラの箱!?)それは続編とかで明かしてくれるとうれしいな
スリの「僕」が仕事をするうちに、絶対悪である木崎の企みに巻き込まれる不条理小説。スリが三人組でやるものだということやその鮮やかな手口、簡便な後始末法などノウハウにも驚き、引きつけられる。一匹狼の、社会からはじき出されたような存在であるスリが、人のしがらみや人への好悪によって、こんな不条理に巻き込まれていくかをスピード感とリアル感をともなって語る。行動からその感情が伝わってくる。だからこそ、その感情は深い。絶対悪の前にあっけない運命を遂げる僕であっても、ある子供だけは覚えているであろうことがせめてもの救い。
正確には、再読。絶対王者のように君臨する悪そのもののような男と、行いは悪であれどこか人であることから逃げられない主人公。 この作品もまた、すべての人に好まれるものではないけれど、強烈に心に残る人は残るだろうなあと思います。 貴族と少年の話は、どこかに元があるのかしら?
大江健三郎賞を受賞したので、読みたいと思っていた。主人公は、反社会的な人間だが、子供を助けたりなど、甘い所があって、憎みきれない。「この主人公に生きていて欲しい」と強く願う自分がいた。木崎が非常に憎たらしい。『搭』とは何だろう?主人公を見張りつつ助けない、運命か、それとも神か?これを読んで、「どうだ。これが現代文学だ!」と作者に言われた気がした。続きが書けるのでは?
掏摸師が主人公の本作。掏摸から見える他人、日常の暗いところが描かれる前半は淡々としています。主人公と重なる子供が出てきたところから、主人公が人間らしくなり、物語が一転してスリリングなほうへ、エンタメのほうへ走っていきます。主人公と子供の交流が微笑ましく、同時に辛くもあり、そこだけでも物語として読みたいという印象です。後半の掏摸では困難に当たり、そういう方法をとるのかと引き込まれましたが、物語全体として、もっと大仕掛けがあってもよかったように思います。
著者はジュンブンガク風文学と批判されることが間々あるようですが、私はむしろ台詞に漫画的な印象を受けて、げんなりした。主人公も木崎も賢い、できる悪党の割にペラペラよくしゃべる。単に口数が多いだけじゃなく、読者にまんま説明するわ、いらん知識は披露するわ、「・・・」は多いわ、白ける。中国語の「***」も、変。また、著者は暗いテーマを扱うことが多いらしいが、至極健全な良い人に見える。もっと素直に明るい話を描いた方が良い作品が出来そうだと思った。
中村さんは初読みでした。句読点の多い独特な文体に最初は戸惑いましたが、スリを行う主人公をまるで自分が体験しているかのように感じられる文章力にはとても感心しました。人生は偶然なのかそれとも必然なのか、不思議な魅力にあふれる1冊でした。中村さんの他の著書も読んでみたいと思います。
中村文則8冊目。アンダーグラウンドな世界で動く掏摸の話。ダークな世界を描くことに本当に秀でている。掏摸を行うリアルさが伝わってくる。泥棒行為を行う者を我々は単に「非情である」と考えがちであるが、主人公が子供に対して愛情のようなものを感じていることも何だか新鮮であった。自分の子供時代を見ているようでシンパシーを感じたのかもしれない。自分を神のような存在と自覚し、「世界」を掌握する木崎のような人間は、自分は受け入れられない。実際には世界はそうなのかも知れないが、それでも。
初読み作家さん。「スリ」である主人公、僕。文章に起こされたその手つきが鮮やかでちょっと美しいとさえ思ったり。彼の骨子はそう詳細に語られないけど、「スリである僕の物語」それ以上でも以下でもない。ラストは特にそう思った。神様みたいに君臨する「男」と「スリ」の僕。その対比が面白い。決着はもう少し引き延ばされることを期待。案外、嫌悪感というか、もろに悪!という感じがしなかった。不思議な魅力の本でした。
図書館でのおすすめ本。失礼ながら芥川賞作家であることも忘れていましたが、一気読みしました。スリの話です。でもどこか文章が知的でドライで、反社会的な人たちばかり出てくることとのギャップに気になって読ませるのかも。わからないことがいろいろありながらも恐ろしさをじわじわ感じる。スリをするときの描写が芸術的ですらあり場面をイメージしてしまった。共感できることがなくてもおもしろい小説はある。
スリをする側と、それを操る側。それぞれの悪。すごい興味深い作品だった。最後の運命についてのシーンは、これほど残酷なものなのか、と痛感してしまった。
芥川賞作家の作品と期待して読む本ではないように思えるけど、登場人物が少なくとても読みやすい上、掏摸という少し日常からかけ離れた世界の話なので、おもしろい本でした。サエコの壊したくなる発言は分かる気がする。
芥川賞作家がエンタメを書いた実験的な作品。当時はかなり注目されていた。という訳で読んでみましたが、期待外れ感が否めない。なんというかどっちつかずなのである。エンタメの文体としては、全体が停滞しているし、鎮痛な雰囲気を出すにはガジェットが安すぎる。試みは超評価するけれど、長さが足りなかったか。主人公は、『土の中の子供』と同じく、破滅思考。良く、輝き、尊いものを目指すも、破滅へと心焦がれるスリ。お家芸?ヤクザ的な皆さんは、もっと血を流せばリアリティが増すか?結末は、ある意味整合性が取れている。だが、残念…。
掏摸の
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