私の男 (文春文庫)
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私の男の感想・レビュー(1155)
穏やかで淑やかで、ともすれば可愛らしさすら感じさせる文体でこれほどまでに歪んでどうしようもない話を味わわされるとは…。ひっそりと二人で生きる親子の物語。彼女も彼ももうすっかり歪んで汚れてしまっていて、決して褒められた存在ではないのに見放すことができない。どこかで救われてほしいと思わずにはいられない。特段思い入れのある作家さんではなかったんですけど、これを読んで評価ががらりと変わりました。「この話はこの人じゃないと書けない」「この空気はこの人にしか出せない」そう思わしめるこの人は紛れもなく一流なのでしょう。
娘と父親の立場が入れ替わる。入れ替わるのみで、決して一つになることはない。それでも、その男に命を預けても、殺されてもいいと女は言う。極限にまで至る男女の仲。それは理想である。そして女は真っ当な青年と結婚し、男から離れる。現実への回帰である。それを遡る作品。
男女としてのふたり、親子としてのふたり、秘密を共有するもの同士のふたり……、「たいせつなひと」を思わぬ形でなくした花はこの後どうなってしまったのだろうか。
悲しい物語のはずなのに、不幸な二人のはずなのに、地獄のようにうらやましい。花と淳悟だけが持つ境遇のせいか時間を遡る書き方のせいかわからないが、二人はとても幸せに見える。未来には幸福なんて欠片も用意されていないのに。周囲は彼らに型にはまった幸せを与えようとするけど、そんなものは野暮でくだらないのだろう。そんなものより強く、依存的で、腐っている。堕ちていくストーリーは美しい。アホでそぐわない表現だけど腐りかけが一番うまい。普段自分が身を置いている所とは全く世界が違い、その憂いと湿気に完全に魅了されていた。
現在から過去に向かい話しが進行していくの、始めは戸惑いました。1993年の奥尻島の地震と津波は、自分の過去からはすっかり忘れ去られていたものです。何でこんなにすぐ忘れてしまうのだろうと思います。たかだか19年前のことなのに。花と淳悟の歩みは、もしかしたらどこにでもあることではないかと、ちらっと思いました。
ツイッターでフォロワーさんたちにオススメを聞いたときに、教えていただいたもの。
内容が内容だし、オススメされなかったらまず読まなかっただろうな、って本。
でも、読んで良かったと思う。花が淳悟を名前じゃなくて「おとうさん」って呼ぶのはやっぱり特別な理由があるからなんだろうなぁ。実の父親だから?(母親は花の母ってことなのかな)などなど下世話な深読みをしつつ読後の余韻に浸ってる。
まだまだ自分の想像の及ばない本に対する耐性というか慣れがないなと再認識させられたことも収穫だったと思う。
個人的に一番読んでいて楽
また読んでしまった。この本には強く惹かれる。こんなにもこの作品を愛している人間は居ないのではないか、と自惚れるほど。家族とは何かを考えてしまった。読めば読むほど深入りして考えてしまう、中毒性の強い作品だ。
歪んだ深い“繋がり”にある、養女と養父の話。人物の設定や、それぞれの依存じみた信頼関係にはかなり読み応えあり。二人の関係が築かれるまでの日々が克明に描かれ、花の心情は表わだが、淳悟の心情は情景描写や周りの人間の台詞から読み取るしかないその造り方も秀逸。ただ前半に殺人という重いトピックがあるのに、あまりにそれに関する描写が希薄で読み終わってから気になって仕方がなかった。それだけ文中ライトに過ちを共有認識している二人は、やはり何かの核を欠損した二人であり、それを補い合って生きてこれた不安定な二人表しているのか
歪んだ愛情とか、執着とか、ねっとりとしていて気持ち悪いんだけど、それでもぐいぐい読み手を引っ張っていってしまう筆力が凄い。ラストはあまりすっきりしなかったけれど面白かった。
ページターナ型の小説だった。文学的というよりややエンターテインメント小説より。腐野花と淳伍のものがたりは現在から過去へと遡行する。ミステリでもあるが、どこかファンタジイを思わせる妖しく甘美な瘴気が作品の底流に瀰漫している。近親相姦と言ってしまえばそれまでだけど、嫌悪感は不思議とない。花の母親と淳伍の関係が全く明かされなかったり、カメラが発見された時点で現像もされずに一刑事が持っているというのは え?ではあったが怪作。この物語はこれで終わりなのだろうか。何かこれから始まる大きな物語への助走のようにも思えた。
すごい小説だ。禁断の愛がさほど嫌悪感をいだかせずにさらりと頭に入ってくる。どうしようもない男とその名の通り腐ってしまった花のような娘と、二人の暮らしに不思議とシンパシィが募る。それでいて男の身勝手さに焦点は絞られていく。読者は禁断の愛とアウトローな男の言動に馴染みながらも男を許す方向へは歩まずに済むのだ。私は、わがままな子供のままの男を憎みながら、早々と腐って散ってしまう娘を哀れみながら本を閉じた。そしてそれ以上に父と娘の、いやそれにとどまらない男と女の深い闇を思わずにはいられなかった。
『離れられない。そばにいたい。もう、離れないといけない。でも。できるだろうか・・。』この激情の理由を知りたくて一気に読了。真冬の氷で身を切るような痛みと、夏の暑さに腐りゆく果実に触れるような小説。
大人の女みたいな9歳。怖かった。過去に遡り二人の過去が段段と明らかになってゆく物語の進み方は好きです。 知りたい知りたいと思う内によみおわってしまった。
正直、数ヶ月途中までで読めずにいた本。凄まじいものを書くのが小説家だとするなら、桜庭さんは一歩乗り越えた表現力を持っていらっしゃると思う。女性の感性、しかも一番根源的なところを揺さぶられる。わかりたくはないが、わからなくもない・・・読者、特に女性の読者の中に、葛藤を生むのではないだろうか。それが、小説の力だとするなら、おそろしい。
この1年間、砂糖菓子~から始まり、順番に作者の著書を追うように読んできた。そしてついにたどり着いたのが、この直木賞受賞作である私の男であった。この作者の著書の根底にはいつも同じものが流れている。そして、この作品はこれまで磨いてきたものや培ってきたものそして変わらない源流その全てが巧みな構成で繋がれている。まさに、集大成。この著者の追っかけのような読書は一旦落ち着こうと思うが、これからも目が離せない作家の一人となった。読んで本当に良かった。
時間を遡りながら、主人公と関わる人からの視点で語ることで、この奇妙な親娘関係の謎が解けていく。人の人生は過去の積み重ねによって今があり、その層は現在に近づけば近づくほど厚みを増すものである。しかし、この作品は時間を遡行するたびに、花という女性の厚みが増していく。
うさぎドロップのアニメが放映されていた時期にこの本と設定が似ている、と聞いたので読んだ。花と淳悟、あるいは他の登場人物たちの謎めいた関係が過去を遡ることによって徐々に明らかになっていく。年をとり変わっていく感情、あるいは全く変わらない根源的な思いが穏やかだったり厳しかったりする自然風景と重なりながら描写されていてとても面白かった。読み終わった後にもう一度読み返すとまた新たな発見があるかもしれない。
なんだか読んでいて苦しくなるようなお話でした。読み進めていくと、淳吾は本当に花のことを大切に思っていたんだなと感じられました。禁断だけど二人にとっては純愛なんだろうなぁ。再度読み返すとまた違った味がでてきます。読み終わったあとしばらくドキドキが止まらなかった。
文章がたまらなく、ねっとり、じっとりとしていた。最後のほうは、不覚にも気持ち悪くなってしまいましたが、こういう話は、とても好きです。犯罪小説またはサスペンスとして読んでもおもしろい。(そういう宣伝をしてもよかったと思う)本当の家族でなかったから、一緒に死ねずに生き残った、という最終章はとてもやり切れなかった。
重たくて読むのがすごくしんどかったし、心がざわざわした。花と淳悟の関係が、読み進めるほどに明るくて純粋になっていく感じだった。すべてをふまえてもう1回最初から読みたいけど、ちょっとそれはしんどすぎると思う。
禁忌である近親相姦を描いた作品として有名になり、直木賞を受賞した名作。この作品の良いところは何より成長過程を逆行して描いていること。これにより過去の謎が、先を読むにつれて明白になっていくのだが、最終章の花が9歳であったころの話を読んだあと第一章に立ち返って読んで見るとまた違った観点で読めるから不思議。終始腐ったような雰囲気を醸す私の男と花の二人。生ける屍とはこの人達のことを云うのか。
海、流氷、雪国の描写が力強く美しかった。時間の遡行に伴って、彼らの恋愛はどこまでも純化されていくかのように装われるが、始まりの時点からその歪みは拭い去れないものとして焼きつけられるほかなかったのか。こどものじかん(漫画)を思い出したが、淳悟とその母、花とを彼の中では何がつないでいたのか、真相は明かされない。
★★★☆☆第138回直木賞受賞作です。主人公・花の9歳から24歳までの出来事が、複数の登場人物の視点で未来から過去へと描かれています。カメラ、骨、煙草を挟む二本の指などをキーワードにしながら過去に遡るにつれ、花と淳悟が欠損家族という境遇の中で親子の関係を超えてしまった経緯が明らかになります。彼らの中で線引きができなかった異常な性愛を陸と海の境界がわからないほど凍てつく紋別の荒れ狂う海と対比されているのが印象的でした。ただ登場人物の言動にはあまり共感できない部分もあり、直木賞という観点では違和感があります。
荒野の12歳を読み終わったら無性に読みたくなったので再読。おとうさん、おとうさぁん。なんと言っても、「小町と、凪」がとても心に残った。12歳の子どもに感じるいやな感じ、と苦手感。むきになって大人の女、でいようとする小町さんがたまらなく人間臭くて、愛おしさすら覚える。自分の恋人であるはずの淳悟からプレゼントされたダイヤのピアスを舐める花、そりゃあ嫌だよなあ、と。とにかく不気味でしょうもなくて、でも引き込まれてしまう小説だった。
きれいだと思った。冷静に見たら暗くて歪んだ二人に見えるが、読み進めていくうちに二人に惹かれてきて純粋なものに見えてくる。花というより題名の通り淳悟という男を描いた物語に感じた。
ただただ、どうしようもない感じでいっぱい。雰囲気が独特で入り込んで溺れることができればハマると思う。個人的には「うーん。私にはよくわからないけど、こういう人生もあるんだね」と。
★★★☆☆ 最初の章の雰囲気やら狂った道徳観やらにやられる。外面をみると醜悪だけど、本人達の間では純愛なのだろうなあ。過去に戻っていく話の作りだから最初から大部分は知っていてだんだん細部が明らかになるわけだけど、最後の最後に淳悟と母について核心がかかれてることを期待していたんだけど…。
私の男の
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