南の島のティオ (文春文庫)
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南の島のティオの感想・レビュー(154)
清潔な文章。いかにもな美文ではなくて、ただ書くべき言葉だけを書き連ねたという感じがする。世間話のようでもあり、おとぎ話のようでもあり。「空いっぱいの大きな絵」が好きです。これといった教訓もないんですよ(たぶん)。それどころか意味も良くわからない。でも民話とか神話ってこんなものじゃないかとも思う。素朴さがそのまま洗練であるような、ふしぎな味わいの短篇集です。
ザ・御伽噺という感じ。▼「ラゴス」と同じ位良かった。そして、このタイミングで読めて良かった。こういう話は発表から何年経ってもイメージが変らない。人生に対する深みは感じないけれど、失われた何かを感じることはできた。そこが良かった。
合唱組曲『ティオの夜の旅』をきっかけに手に取った作品。フェアリ・メイは出てこない。南の島で暮らすティオが経験した10のエピソードは、現実的なものとそうでないものが交じっている。けして明確なファンタジーではないが、そこがよいと思う。太平洋のどこかに浮かぶこの島では、自分と同じように人々が日常を送っており、時折ちょっと不思議なことが起こる。そんな場所が本当に存在するのかもしれないと、南の海に思いをはせることができる。いちばん好きな話は『絵ハガキ屋さん』。この絵ハガキを受け取って旅に出てみたい。
今回初めて読んだのだけど、南の島の太陽や潮の匂いに既読感を覚えました。子ども頃、このような日焼けの匂いのする健康的なお話をたくさん読んだからでしょうか。いえ、既読感なのではなく、既視感なのかも。むかしむかしに、ティオたちに会ったことがあるかもしれません。この本を読むまで、すっかり忘れていたけれど。
池澤夏樹のエッセンスが詰まった秀作。南の島の素朴な生活が、大切なものは何かを描き出す。最後の逸話でカヌーを漕ぎ出すエミリオの姿が象徴的。こういう環境では、悪意の範囲も限られてくるのだろう。現代の我々は、心のどこかにこういう環境を持ち続けてはじめてバランスが保てるのかもしれない。
豊かな自然と人間味あふれる常夏の島に暮らすティオ。自然の美しさ・偉大さ・不思議さと、自然と人間の共生の素晴らしさを感じました。注意深く読むと、ティオの成長とともにこの南の島の生活も少しずつ変わっていく様子がわかります。
『思い出袋』で引用されており読破。南の島のおだやかな生活。そこに惹かれてくるもの、去るもの。ティオを中心に様々な人々との出会いや出来事。これらを通したティオの成長も感じることができる。特に、最後の章でのエミリオとの友情を通した未知(大人)の世界への旅立ち。神との触れ合い。表裏もなくまっすぐな少年。さわやかな印象である。一方で、失われる「大切なもの」があることを再認識するとともに、その貴重さをも訴えているようにも感じた。これは魚の獲り方などだけではなく、マリアとホセの”時間”もそうだと思う。「勇気は愛」。カ
児童文学として子供だけに読ませておくのは勿体無い。一方、大人のための上質な癒し、みたいなタグを付けて本棚に放り込んでおくのも同じように勿体無い。何かこう、幻想の中で生の本質的な部分に鋭く触れられているような気がして、おののく。
十篇からなる連作短編集。児童文学として書かれたものらしいが、不思議な雰囲気に包まれていて、大人が読んでも面白い。舞台になっている島はミクロネシアのポナペ島らしいが、本編には一度も島の名前は出てこない。架空の島かと思った。常夏の島の様々な出来事を心ゆくまで楽しんだ。
童話のように優しくて穏やかで、ティオの目から見る世界は輝いていて。だけど、ピリッと戦争の不穏な影がちらつく。キラキラ水面が光ってるような文章の中に少しずつ大切なものが溶けているような気がする、そんな作品だった。個人的に『十字路に埋めた宝物』がすごく好き。
★★★★★ 暑い夏に読むのにぴったりの一冊。現実的世界と幻想的世界が絶妙なバランスで描かれている。南の島に実際にいるかのような臨場感がすごい。キレイだけどどこかホッとするような文章で癒された。最初の絵葉書の物語がお気に入り。
再読。初めて読んだときよりも印象が深まって、ティオの島がますます好きになった。読み返してさらに好きになれるというのは、素晴らしい小説であるという確かな証拠だろう。読み終わってからも、またこの島に訪れたくて仕方がない。何度でも読みたい一作だ。
僕が関わっていたのはまさにこんな地域で、そりゃもちろん紛争の傷跡生々しいのだけれど、それでも人々の心のどこかにはティオたちと同じあたたかい海のような精神が息づいていた。たとえばせっかく豊作で収入が増えたくせに貯金もせずその晩のお祭り騒ぎですっからかんにしてしまうのも、実は神さまにお礼とお祈りを捧げているからなのかも。そして凶作のときに僕たちは異常気象だと嘆くけど、彼らは「神さまが怒った」と平気でいう。こんなとき、僕はどっちが正しいのかわからなくなる。だって事実を知ることと安心することは全然違うことなのだ。
南の島の少年ティオの日々の記録幻想風味。 南の島のゆったりと流れる時間が溶けだした空気で、めいっぱい深呼吸したような、生き返る感じ。
大人になってから、素晴らしい少年向きの小説読んでハッとさせられる事が最近多い。その中でもこの本は、自然やファンタジーなど取り混ぜた透明度の高い世界観が、今を生きる僕らが忘れている事をそっと差し出してくれてる。押しつけがましさが無いところや、想像の余地を残してるストーリーに、こういう本を読んで好きになれる少年でありたかった、思わせる。
文章がキレイだった。『つむじ風食堂の夜』に通じるものがある。池澤夏樹さんは、失礼な話、星野道夫さんと仲良しだった人、エッセイ書く人、みたいな印象しかなかったけれど、この本を読んで、今更ながらに、作家・池澤夏樹、の素晴らしさを認識させてもらった感じ。好きな作家さんのひとりになりそうです。
南の島を舞台にした十の物語集。収められているものは南国を舞台にした人々の触れ合い、そこに絡まる愛や冒険、そして超自然。ノスタルジックなスローライフとファンタジーが実に魅力的に描かれる。現世から確立し、それでいて生身の私たちに大切な光を残してくれるような、心温まる物語だった。
★★★★☆ 登場人物や情景がいきいきと描かれていて、どこかに実在するようなこの島にすぐにでも行ってみたくなる。自然がすぐ身近にある力強い生活にあこがれずにはいられない。「ハワイイ紀行」に通じるものがある。
何もかもがパラダイスな南国というわけではなく、苦い体験も少なくない。それでも、プリミティブなものに接する悦びと豊かな精神性は、どこか懐かしさを感じさせる。
気分転換に日帰りの小旅行に出かけてきたみたいな読後感。ティオの目を通してみた島での出来事が10篇にまとめられて、その1つ1つが共鳴し合い、心地よいハーモニーを創り出しています。ちょっと不思議な出来事もありのままに受け止められるのは、人と自然の距離が都会でくらす私よりもずっと近いせいでしょうか。池澤夏樹さんの文章と世界観はほんとに素敵です。手元において何度も読み返したい一冊。
のどかな南の島を舞台にした連作短編集。穏やかな島の暮らしと、そこで起こる少し不思議な出来事が、優しくそして鮮やかに描かれる。いつまでも手元に置いておきたい素敵な本だ。この先もたびたび読み返して、ティオたちの島へ何度でも訪れたい。
「キップをなくして」もそうだけど子供時代にこういう本に巡り合えた人は本当に幸せだと思う。自分の子供時代の読書感想文のときに巡り合えなかったことが残念。でも21になってその時間を少しとりもどせたかな。
☆☆☆☆ なんだかスニーカーとナップザックを引っかけて出かけたくなりました。夏の朝の清々しさにも似た匂いがします。遠出するときにはこの本も鞄に詰めることでしょう。一つ一つの風景が、もっと特別に感じられるだろうから。
★★★★★ 予想以上。筆者本人による詩「ティオの夜の旅」から入ったので、そのぶっ飛び具合からあまり期待していなかった。作中の時代描写から逆算するとティオももう30代、今のティオが何をしているのか考えるだけで胸の中が暖かくなります
ティオの島にどっぷり浸かり、現実の世界に違和感を感じた。自然と触れ合うことの少ない都会の生活。触れ合うという言葉自体自然ではない。自然とともに生きている、生かされている人々の不思議なお話し。自然とと、神々と共に生きる人々にとっては起こり得ない話ではないのかもしれない。
行ったことのない場所、あったことのない人たちなのに、何だかなつかしいような気持ちになる。昔(もしかしたら生まれる前に)私はこの人たちと親しくお付き合いしていたのではないか、と思えるような人たちの、少し不思議で名残惜しいような物語でした。
テレビの紀行番組で見かけて、初めて池澤さんを読んでみようと思いました。透明な語り口に福永武彦氏を思い出さずにはいられません。マキャモンの「少年時代」も思い出します。
思春期未満の少年は、日常の全てを冒険にすることができる。その時はそれが特別なことだとは気付かない。しばらく時間がたってから、ふと振り返った時に記憶の中で輝く何かが見える。我々1人1人の中に思い出という幾つかの小さな神話が眠っているのだ。
南の島のティオの
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