素数たちの孤独(ハヤカワepiブック・プラネット)
素数たちの孤独を追加
素数たちの孤独の感想・レビュー(115)
幼い頃の傷。一人は身体に、一人は心に。そんな二人が思春期に知り合ったのだから、助けあい、お互いの傷を癒し、自分の場所を見つけだせると思うだろう。家族や周囲に溶け込めないとわかった時の孤独感は、誰かと分かち合うことはできない。孤独な人生の切なさと、上手に表現することが出来ない、不毛な愛。陽気で、眩しい太陽のイタリアのイメージからは、想像できない繊細な物語だった。
トリノの高校で出会った同い年の少年マッティアと少女アリーチェ。どちらも幼い頃の出来事で心に深い傷を負い、マッティアは罪の意識を、アリーチェは劣等感を抱えながら生きてきた。二人はお互いに相手の中に自分と同じ苦しみと孤独を見出す
お互い惹かれあっているのは明らかなのに最終的には結ばれることのなかった二人。「縁がなかった」と一言で片づけるには切なくてもどかしい。印象にのこっと言葉「自分を特別な人間だと感じるのは、身の周りを最悪な檻で囲うことなんだよ」
主人公の二人は無限に連なる数列に僅かばかり顔を覗かせる双子素数に喩えられている。二人は共に心に傷を負っているが故に、運命的にお互いのことを知って意識しあう。しかし彼らの間にはいつだって偶数という溝があり、いつまでも寄り添うことは出来ない。孤独な魂が渇望するものは、数秒の選択の結果として永遠に失われ、残りの時間、彼らは掛け違ったボタンを取り繕って生きていくことになる。誰にでもある経験を抽象化し、ミニマムな筆致と構成でリリカルに描き出しているからこそ、読者の共感を呼ぶ普遍的な物語が生まれている。面白かった。
隣り合っているのに、決して交わることのないもの。それは素数であり、親友であり、恋人であり、家族である。心に傷を負ったマッツィアとアリーチェ。2人の恋愛模様を軸に読むと物足りないのだが、それはきっと作者の意図しているものではない。ヴィオラのパーティーで2人が手を繋いで現れたシーン、その、2人で1人であるかのような姿が目に浮かぶ。映画版で最も観たい場面。ラストは決して明るいものではないが、一筋の希望の光が2人をそれぞれに照らすかのようで、美しく、優しい。それにしても、数字って小説のモチーフとして優秀だなあ。
あっという間に読んでしまった。素数。なるほど。ほぼあらすじ読まずに入り込んだけど、幼少から大人までの二人の男女のお話。どんな世代で読んでも、たしかにぴったりとくるところがどこかにあると思った。痛いくらいのお話だけど、わたしには、なんだか痛すぎない。孤独。家族の風景、よく起こることはなさそうな二人の境遇だけど、でも読んでみると、どこか、あぁ、、と思いふける場所があるとおもう。大人になって家族をひとりの大人としてみているところ、スピード感、文章の持っていきかた、すきなタイプの本だった。
心の傷が身体を傷つけ、体の傷が心を傷つける。 心象風景が近いからこそ一緒になることを選べない。 それは最終的な別れを恐れているからなのか。 人は誰しも孤独なもの。割り切れる自然数だってその約数とイコールなわけではないのだから。 でも隣には常に連続する数字がいる。イコールじゃなくても人生を共に出来る。 それにマッティアが気付きますように。
子供たちもその親もまわりの人もみんな孤独をかかえて生きている、でもみんなたくましい。そこがとても現実的にかかれているとおもう。もう少し上手に生きれば楽になるのにとこちらでは思うけどそういかないのが現実なんだろうなぁ。。
タイトルは少々強面だけど、ぐいぐい読ませる力のある物語でした。欠落をいとおしむ主人公のふたりを素数になぞらえた物語。なにもかもわかりきることは出来ないそれぞれの宇宙を抱えて、誰しも孤独であり自由であるのだな。小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」をちょっと思い出した。
思春期から大人へ、主人公の2人が孤独という自分の世界を不器用であるが現実の世界と渡り合って行こうとしている。しかしながら、大人である彼らの親も周りもやはり孤独の中でもがき苦しんでいる。つまり、人間は自己がある限り孤独が当然であるということか。この当たり前の孤独に対して、ひとりひとり自分もやり方で順応していくのが人生なのかも知れない。しかし、それは決して悪いことではなく、生きている意味そのものなのかも知れない。などと考えせられた。うーん、いい本だ。
自傷癖のあるマッティアと拒食症のアリーチェ。最後のマッティアの選択は私には安心出来た。きっと別の選択をしていたら彼らには本当の孤独が待っていたような気がするから。どんな立場(親として、子として、友達として、恋人として)で読んでもいい本だなぁ・・・と。
主人公が抱えることになった幼少期の罪意識が胸に響きます。このようなことがなくとも、幼少期、思春期に感じる、自分を取り巻くものとの距離、違和感は、大人になっても消えることがない、と体験的に思います。その齟齬を丁寧に描いている点に共感があります。物語の着地もとても自然なものでした。自分の中ではこの物語を「記憶の物語」として位置づけています。
ああーすごくよかった!最初から最後まで好きだった。人と上手に関係が築けない二人がもどかしく愛おしい。そして我が子と分かり合えない親たちの寂しさが身につまされる…。結局素数は素数のままだったけれど、それはそれで素敵なラストだったと思う。
双子素数(11と13、17と19)の天才的数学的頭脳をもちながら双子の妹を置き去りにしたトラウマから自傷を繰り返す少年と、スキー事故で片足を引きずる拒食症の少女。誰よりも近いけれども、けっして隣り合うことはない二人。陳腐なラストではなく、意外にも思える一貫した幕引きに好感。イタリアの物理学者の処女作。
誰ともうまく関係が築けない主人公2人がもどかしく、お互いに思い合っているのに進展しない2人の関係にやきもき。自傷、摂食障害、トラウマといった下手するとあざとくなる要素を含みつつも、控えめな語り口に好感をおぼえた。
鋭利な刃物で身を切られるように、人生が痛みに満ちている。単純に手に手を取り合えれば幸せになれたのかもしれないけど、そうもいかない人生。それでも生きていくということ。
★★★★ もどかしくもある(特にマッティア)のだけど、二人の純粋さが心に沁みた。それぞれの親に対する気持の変化に、ものすごく共感できた。
双子の妹に対しておかしてしまった過ちで心に深い傷を負ったマッティァと、父親に無理に習わされていたスキーで大怪我をし心身ともに後遺症が残ったアリーチェの出会いと成長に伴い、二人の立場から交互に書かれた物語。
天才的に数学の才能があるマッティァが惹かれる双子素数という概念が、物語の核になり、題にもなっています。孤独な二人がどのように成長していくか見守りたい気持ちで、読み進めました。
双子素数という概念でとらえる人間関係と、天才的な数学者としての才能を持つマッティァが非常に魅力的でした。
素数は1と、自分自身でしか割れない。ひとつ置いて隣り合う双子素数。けして触れ合えない…。
もう、だったら掛け合えばいいじゃない!って思うんだけど、つらい、つらいねえ。落ちてる時に読むと更に落ちる孤独感也。
何でしょうか二人のこの不器用さ。ヤマアラシのジレンマのような。ラスト、洗面所でのマッティア決断の一瞬。その一瞬の描写がとても上手い。
一章を読み始めて思ったことは、なんて静かで綺麗な文章なんだということ。そのまま読み進めて行かざるを得ない。俗っぽい自分の感想はマッティアの草食男子ぶりにはイライラさせられたってこと。これを映画化するって面白いのだろうか。
心臓が痛くなるような話でした。せつない。晩秋に読むと良いと思います。近いのに遠い二人。でも人って結局はそうなんだよね。夜空に浮かぶ星のようなもの。地上から見れば近くにある二つでも、実際は気の遠くなるような距離が二つを隔ててるといいますか(これ、なんかの本で読んだ気がする)。マッティアが少しだけジャンプすれば全部うまくいくのに、と何度思ったことか。でも、思いとどまってしまうのが彼という存在なんでしょう。数学者って詩的なんだな、と思いました。
素数は1と自身以外に約数を持たない。単独で成り立つのは人もまた同じ。少女は癒えない傷を負い、抑えられない拒食に身を曝す。少年は贖えない罪を犯し、呼吸のように自傷を繰り返す。互いの痛みによって当然のように2人は惹かれ合い、互いの傷によって近付けずに阻まれる。初めから近い距離に在るからこそ、隔てを感じ取り立ち尽くす。全てを表すタイトルの美しさもさることながら、2人のもどかしい軌跡を追う明晰で的確な筆致もまた美しい。そして万人の物語でもある。個にして全ではあっても、絶えず他なる孤の解を求めるのが、人間なのだから
予定よりも1日早く読み終えることができたのは、ひとえに素粒子物理学を専攻し博士課程に在学中のイタリア人作家による筆致のおかげだろう。アリーチェとマッティアの関係はまさに双子素数。人だったり時間だったり、はたまた自分の影だったりする偶数を介して均衡を保ったり崩れたりする微妙な関係。彼らが抱える孤独に触れ、切なくもどかしい気持ちにさせられますが、徹頭徹尾ブレのない物語に圧倒されました。
タイトルに惹かれて手に取った。ストーリーだけを追えば、ともすればありがちと思われかねないかもしれないけれど、淡々と描かれる2人の心の痛みは、読んでいてつらくなることも。ハッピーエンドというわけではないが、希望の兆しが見えるラストシーンには救われる。
孤独と孤独が出会って、癒しとなる。それはまるで、素数のような孤独と連帯。隣り合うことのない距離は、近くて遠い。けれどけっして「独りぼっち」ではないのだ、という確信が、人の生きる支えになる。
素数たちの孤独の
%
感想・レビュー:48件















ナイス!






























