わたしを離さないで
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わたしを離さないでの感想・レビュー(1053)
物語の途中と、物語の最後では思い描くノーフォークの情景がまったく異なっていた。少しずつ語り手と物語を共有していくことで、立ち上がってくるノーフォークの景色が忘れられないです。
静かに淡々と、一定の距離感を保ちつつ物語が進んでいく。不思議な、幻想的だけどありえないとは言い切れない世界観と、のちに分かる真実。最初から最後まで、薄いベールの向こうを覗いているような雰囲気でした。
書きようによっては、もっとサスペンスチックにもなるだろうし、そういう見せ方の方がドラマチックでウケるだろうけれど、そうせずじっくり読ませる文章に著者のこだわりを感じます。読者を傍観者的な立場に置くことで、キャシーの気持ちに深く入り込ませず、読者はキャシーとは違う立場にいることを思い知らされ、ラストでは、自分も無関心なただのこの社会のひとりなのかと、愕然としたりもします。設定が近未来なのか、もう一つの世界なのかわからないけれど、希望があるのは、私たちが今ならまだ進むべき道を選べるということかな。
解説にもあるように予備知識が少ない方がいい作品。私はある程度知っていたので辛くて一気には読めなかった。こんな世の中になりませんように。
感想書くのがむずかしい小説。文体は淡々と青春小説のようにすすみ、内容は重く胃を締め付ける。想像上の世界のお話なのに、妙にリアリティーをもって迫ってくる。夢にみそうだ。
隠されていた真実を前もって知っていたため、保護員の言葉の裏に隠れていたりするものをなるほどと思いながら読んだ。特に第一部の閉ざされた学園内での教師と生徒、生徒と生徒など関わり合いの描写が良い。 カセットテープを2人で探すくだりはとても好き。あとキャシーが枕を抱きながら曲に合わせて踊るところも好き。それに対するマダムの解釈はなんだか泣けてしまった。 そして最後のノーフォークにも涙が出る。最後に持ってくるとは…
最後の解説にもあるが、予備知識なしにこの本を手にすることがお奨め。一人称の私が語る話は、知識の無い読者には、いまひとつ分からぬままに進む。抑制された静かな流れの中で、読者が疑問を持ち出した前半の早い時期で、答えらしきものが見せられる。過酷な運命を背負わされた、主人公役の3人が、どのように受け入れてゆくのかを、じっくりと読ませる。話の結末を、早く知りたく成らせることもなく、読者を丁寧に結末まで連れてゆく、作家の力量。正月休みに、良い本を読んだという満足感。娘の話だと、映画化されているとのことなので、見てみよ
3人が他人と思えない。自分や親密な人をダブらせながら、ところどころ何度も読み返しては思いを巡らせていた。ページが終わる頃には静かに泣いてしまうね。
不思議な読後感。静かでありながら、底の方では激しい部分もあり、まるで氷の中の炎のような感じでした。ただ、読み進めるうちに明かされていく事実に驚きながら倫理的な部分も考えさせられました。でもやっぱり苦手とする外国作品ということもあり、正直、感覚がついていかない部分もあった。時間があれば原本で読んでみたい。
GARNET CROW「JUDY」を聴いて。抑えた語り口、すごく好み。翻訳ものに時折感じる「まだ話が半分くらいしか進んでない気がするけど、もう残り数十ページ?」「ここまでしか真相は明かされないの?」という感じは残ったけど…
映画を観て読みました。まず映画が原作にすごく忠実に作られていたことにびっくり。映画でストーリーはだいたい知っていたので、映像を思いだしながら読んでいました。私の場合、たいてい映画より小説のほうが勝っているけど、これは映画のほうが勝ってたなあと。あるはずのない話なのに、すばらしく精巧な設定にとても架空の話とは思えず、私がもしこの環境にいたらと、想像力をかきたてられる物語でした。このかたの作品、まだ読みたいです。
多くは語らないのに、劇的な物語や目立った活劇がないのに、声高に何かを主張しているわけでもないのに、ページを繰る手が止まらない、胸に迫ってくるものがある。とても良い作品に出会えたことに感謝。
以前、今年亡くなった小松左京の『こちらニッポン…』の文庫版あとがきだかで、誰かが「小松左京の凄みは、一つだけ大きな嘘(フィクション)を設定して、それ以外の点ではリアリズムを徹底するところにある」という趣旨のことを書いていたのだけど、この小説を読んでふとそれを思い出した。
小説のテンポにすごく感銘を受けた。とても抑制されてて、緻密に描かれていて、物語がいかに展開しようとも、 テンポが乱れない、物語の背景のSF的設定にふみこんでいきそうだけど、そこに踏み込まない。あくまでも3人の美しい思い出の中で留めている。 あえて、抑える、あえて、留まる。こんな物語の語り方には初めて出会った。これがカズオ・イシグロの文体なのかな。 よく考えてみると、主人公が「自制の人」なんだよな、だから、文体も展開も「自制」されていたのかな。 いやはや、なんと美しく抑制された小説なのだろう。
こんな引き込まれる本を読むのは久しぶりです。現実ではない設定であるのに身近にいそうな登場人物、場面描写に作者の非凡ぶりを実感しました。こんなにも静謐な文章を書く小説家は他にはいない、と感じました。またカズオ・イシグロ氏の本が読みたいと思いました。
難しかった。静かに話が進んでいく。話が見えるまで頭の中で「????」がいっぱい。テーマが重いうえに、登場人物も暗い。私には難しすぎた。いつかもう一度読んでみると違った印象になるのかも。
カズオイシグロ。日系英国人。英で最も権威あるブッカー賞を「日の名残り」で受賞。同作と本作「Never let me go(わたしを離さないで)」は映画化されています。静かな語り口。心理に迫る描写。ミステリー要素もありつつも、どのように生きるか、なんのために生きるか、どのように人と接するべきか、愛とは、友情とは、生きがいとは思わず考えてしまいます。静かながらもぐいぐいと物語に引きこまれていきます。素晴らしい作品です。ラストシーンを知ってから再読するとまた違った味わいができそうで、現在再読してます。
カバーが良い。行動が思わぬ結果を生む驚きの描写が面白い。学生の間だけで流行る変な習慣とか妙な見栄っぱりは、本が書かれた国は違うのに日本の小学校生活を思い出させてくれた。
記憶が綴られる過程で、薄々と何が起こっているのか見えてくる。彼らのありかたが物語中で語られた時、衝撃は無く、腑に落ちてしまう。ヘールシャムでさりげなく行われた刷り込みはこういうことなんだと寒気がした。【死】の描きかたが運命を受け入れるというか諦観的だ。もっと抗う展開にもできたはずなのにそうしなかった。だって、そういう存在なんだものって、なんとなく受け入れてしまってるから。恐い話だった。
先に映画を見てしまったので、読むのを避けていたが読んで正解だった。再読したミステリーのように最初は知らされているようで分かってない秘密をこんなところにも伏線が…とか思いながら読んでいたのだけど、とても丁寧な抑制の効いた文章に引き込まれていってしまった。寄宿学校の様なヘールシャムでの生活、友情、恋心、いじめ等、主人公の心の動きが丹念に描かれていて事実を知ってからもそれを受け入れ静かに日々を過ごしていく姿に物凄く考えさせられた。
はじめましての作家さん。本屋にだだーっと作品が並んでいた時期があって横目で気にしていて、でもタイトルからみると「ラブロマンス」系かと疑念があって読まずじまいだったのです。あぁ、でも面白かった。主人公達と同じ「わかっているのに、わかっていない状態」にさせられ、最後何を知らされるんだろうと不安にさせられながら読んだ。他の作品も読まなくちゃ!
静かでたんたんとした文章ながら、ぐいぐいっと小説世界へ引き込むパワーを感じました。薄いベールを一枚一枚はぐように、じょじょに明らかになってゆく秘密。さきに映画を観ていたので物語の展開はもちろんわかっていたのですが、それでも悲しみと切なさにおそわれながら、ゆっくり空気感を味わいつつ読みました。どんな人生でも、どんな環境でも、自分の人生を生き抜いてゆくことの尊さを感じました。
なんの予備知識もなく読み始めたので、徐々に状況が呑み込めていくほどに、ゾッとするこの世界。残酷なお話。自分の運命は決まっていて、その存在の軽さ、意味の恐ろしさがとても残酷。
ある使命のために作られた子供。どこまでを人間と考えるのか。たんなる小説の中の話に思えない日が、遠くない未来にきそうな恐怖があった。キャシーや 友人たちが淡々と自分たちへ課せられた使命に向かっていくのがせつない。
映画から観たので読みやすかった。一部映画とは違うところもあったけど、根底を流れる諦念、慟哭の静かなうねりは同じ。幻の猶予を追いかけてトミーの最後の絶叫。ルースの人間らしさ。キャシーの淡々とした悲しみ。全部が忘れられない。翻訳ものにつきものの鼻につく文体は苦手だけどあまりに残酷なストーリーは頭にずっと残る。
こわい話だった。肩から二の腕の外側を小さい人が歩いているみたいにざわざわとした。そんなこわさ。こわいから読むのやめたいんだけど、こわいからやめれなかった。そして、話の全体がうっすらと読めるがゆえに、じりじりもどかしかった。
「提供」とか「保護官」とか異質な言葉が出てきて、学校生活が描写されていくなかに、何か異界を垣間見る感覚を感じる。読み進むなかで秘密のベールが徐々に明かされてきて、ある意味、それは非常なインパクトを持ったものだった。 ただ最後の部分、マダムと話すあたりから緻密さが失われ展開がごちゃごちゃっとなっている感を持った。「わたしたちが孤児だったころ」も最後がいまいちで、せっかく作った料理を皿のうえにごちゃごちゃにしてのせてしまったような感じだ。
再読 はじめて読んだ時ほどの衝撃はなかったけれど話のひとつひとつが 結末に向かっていく悲しさ… こんな世界はないはずなのに キャシー トミー ルースの思いが 胸に迫ります 映画も見てみたい
独特な雰囲気のある作品です。主人公の回想だということもありますが、読み進めていくうちに、その理由が分かってきます。 謎めいてはいてもミステリではなく、ある種のSFですがそうだとも言い切れない。登場人物はある種の非人間ですが、彼女らは私たちと何も変わらない成長をして、そして使命を全うしていきます。運命を受け入れ、その限られた時間の中でよりよい人生を送ろうとする。そんな姿がとても切ないです。 時間が前後する奇妙な書き方のため少し読みづらいですが、丁寧に心理を追った作品です。とても、心を揺さぶる物語でした。
あいまいな点がいくつもあって、もやもやした読後感。 なぜその計画が認められたのか、なぜその人たちが選ばれたのか・・・。 "アイランド"という映画は金持ち相手の商売という設定だったけど、その方がまだ納得できる。
昼に借りてずっと読んでて5時間くらいで一気に読了 主人公が回想してるいわゆる思春期が現在進行形なので複雑な気持ちを処理しきれない 落ち着いてるかつドキドキする 構成が緻密
静かな文章の中にさまざまな感情が詰め込まれていて、胸に迫ってきました。特にラストにかけては、言葉にできない切なさでいっぱいになりました。文句なしの名作だと思います。
タイトルからは何も想像できなかったけれど、失われていくことの切なさを、こんな形で表現されてしまうとは想像もしなかった。印象的なのはキャシーがへールシャムの部屋で、見えない赤ん坊を抱いて揺らしているシーン。そしてラスト。寄り添おうとしたキャシーが哀しすぎます。人生ってこういうものかな。それほど捨てたもんじゃないと思うんだけどね。
真相を第三者から明かされても、自分の運命を使命として受け入れ、それぞれのいびつでいて、純粋な青春を過ごす子供たちの物語。
共感しそうになるが、使命を全て受け入れて、考えることを止めてしまった彼らに、不気味さを感じた。
感動的なラストのように見えるが、「諦め」という隠れたテーマがあるように感じるのは、僕の邪推でしょうか?
人間においての喪失や欠落といったものの悲しさや虚しさ、冷たさとそれに必死で抗おうとする人達のお話。物語自体はすごく狭い世界(登場人物もほとんど身内だけで活動領域も狭い)なのに、すごく世の中の広さ(それゆえの無情さ、人の力の弱さ)を感じ取れる。本書を読んで、いい経験をありがとうと言いたくなった。
主人公による語り口が静かで、エピソードも決して劇的な展開があるわけではない。だから、ゆっくり丁寧に読もうと思った。主人公の心理描写が緻密でもあるし。 しかし、特殊な設定が少しずつ明らかになるにつれ読むスピードが上がった。ありがちな人間関係と日常的な心情が、その設定のおかげで、特別に見えてくる。友情と恋、 仲違いと仲直り、音楽と絵……人間が経験し感受するあらゆるものが特別に思えるほどに。 読後、それらをいつかは失う切なさがあった。
わたしを離さないでの
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