贖罪
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贖罪の感想・レビュー(99)
13歳というのは、現実と妄想の区別が付かず、自らの行動の意味や善悪の判断も分からないほど幼い年齢なのだろうか。自らに甘く、自分が作り上げた世界にこもり主人公が好きになれなかった。第一部で挫折しかけたが、読み終えた後では全体を通しての構成の意味も分かる。結局のところ贖罪は不可能だが、取り返しがつかない以上、何らかの試みを続けるしかないということだろう。長さだけでなく内容としても読み応えのある作品。
”他者を中心に据えて自らは枠外におく”という作家としての姿勢を体得し、他者を救済し自分の罪をあがなおうとした人の話、かな。創作科で叩き込まれる(という噂の)”自分のことを書くなら一歩退いて”という方針を一生かけて学んだ人のような気も。読み物として面白い本だと思う。良くも悪くも”すべて書き表された”話であり、起承転結のはっきりしているストーリーラインを、綿密に練り上げられた文章がしっかり支えている。そういう意味で、この作品は(V.ウルフの影響を受けた作中作中作とは対照的に)古典に近いものがあると思う。
【買う】先に、映画『つぐない』を観ていたので、その映像がどどーんと読みながら流れてきた。あの映画はすごかったんだなぁ。と、原作を読んでからしみじみと思う。贖罪、つぐないという言葉をこの登場人物が使うのにどーしても納得がいかないのが直らない。でもこの作品は、悲恋とかそんな言葉だけではたりない面白い作品だと思う!
(辛口コメント、失礼します)この本を読んで小さな世界の中にいるにも関わらずに自分の知識や考えを人にひけらかしたり、押し付けたりして人が自分の思い通りに行かなかったら癇癪を起すブライオニーに過去の自分を見ているようでぶん殴りたい気持ちになりました。彼女は懺悔の代わりに小説を書きますがただ、自分が救われたいだけで人から見ると嫌悪感すら湧くのではないでしょうか。本当に純真無垢だといって決して許されることはなく、断罪すらされないことの閉塞感や結局、物事の真実は自分が信じたいものに過ぎないことがまざまざと伝わる作品
冒頭の子供達のごたごたがやや退屈だったけど、その後が驚きの展開で飽きなかった。いくつかある場面転換も斬新かな。戦場の描写とか、病院の描写とか、この迫力はやはりすごいと思った。子供の妄想がここまで認められてしまうことなんて現実にはないと思うけどねー。
マキューアンの小説ってどうしようもないコミュニケーションのずれが最後までちゃんと解決しないまま終わるの多いよね。当人達は解決しようと努力してるのに100%の解決なんてしない。そんな作家の作品をなんでいつまでも読んでるのだろうと本を開くたびに思うのだけど、最後の人間同士が本音でぶつかるところをどうしても読みたくなるよね。この息苦しさがすき。
圧倒されるような物語。しかし、物語の中でブライオニーだけが年をとっていく。私も一緒に老いていきたかった。ひとり置いていかれたような気分。物語の中に、外に。
ああ、剥き出しの人生は捏造できないのに、作家はそれを試みるしかない。そんな絶望的な行いに救いはあるのか?ならば本書を紐解くがよい、読者よ。ただ圧倒的な物語の力だけがここにはある。
今年読み終わった本の中では一番だったかも。第一章、第二章、第三章ともに、緻密で迫力があって、凄く良かった。これは愛の物語なのだ、と思いながら読んでいった最後の、ゆるしではない感動といったら。ブライオニーの自己顕示欲っぷりにもうんざりだけど、どこか憎めない。従姉妹のローラも。面白い読み応えのある小説だった。書体にも工夫あり。
罪を贖うことができるのは、罪を犯したまさにその時でしかない。時間によって否応も無く犯された罪と贖われるべき罪が引き離されてしまうからだ。この隔絶を埋める手段とは何か。ブライオニーにとっての「贖罪」は死によって名宛人を失ってしまったために達成不可能な企てであるように見える。しかし、セシーリア宅への訪問と予期せぬロビーとの再会、そして謝罪、二人はこの場でブライオニーを許すことは無かったが、ただ、許しを受け取ってくれそうな予感を残している。この一点が大きな支えになっているように思える。
無垢な少女の犯した罪。容赦なく流れる時間が、あまりにも無情に感じる。「偶然」という人知を超えた何かに人生は取り囲まれていて、いかようにも転がる危うさを持っている。その人生を、どう生きるかってことなのかな。
面白い。長々しく心理描写が続くだけでもなんか読まされてしまう。どうしてこの人は思春期の女の子の気持ちがこんなに克明にわかるんでしょう?それも含めて戦略なのかもしれないが・・・。「小説」というしかけの面白さを味わわせてくれた作品。しかし第一部が長いなあ。もうちょっと短くても良かったんでは…。映画も見たくなりました。
「いかなる種類の下働きや看護補助をしようとも、……カレッジの芝生で過ごす青春時代を犠牲にしようとも、あの傷跡を元に戻すことはできない」「すべてが自分の責任でなくてはならないのか、…戦争にも責任はないのだろうか?」13歳で犯した罪に苦しみ、60年にわたって書き換え続けられる物語。たとえ「恋人たちを生きのびさせて結びつけ」 ようとも、「ふたりに幸福を与え」ようとも、「完全な宥しはまだなのだ」。「贖罪」は不可能であったとしても「試みることがすべてなのだ」と私も思いたい。静かに、深く、心を揺さぶる物語。
「物事の結果すべてを決める絶対権力を握った存在、つまり神でもある小説家は、いかにして贖罪を達成できるのだろうか?」 これが「贖罪」というタイトルの本意。私からするとブライオニーはとても狡い。彼女は書き物の中でロビーに怒りの言葉を発せさせ、それを受けとめるべく対面している。 実際には彼はあのように表現できる怒りとして消化していないかもしれない。憎んですらいないかもしれない。結局、彼女は幼少期から何一つ変わっていない。 自分の世界の中で生き、その中で手にした定規を離さないのだ。
悪意と呼ぶにはあまりにも幼い一人の少女の小さな嘘から派生した悲劇。第1部ではその事件が起こるまでをそれぞれの登場人物の視点から描き、第2部は引き裂かれた恋人たちの物語、第3部は少女の贖罪の物語、そして終章で全てが明かされるのだが、決して短い作品ではないにも関わらず、圧倒的な筆力でぐいぐい読ませる。この作品がブッカー賞を逃したというんだから、海外文学のレベルの高さに脱帽します。非常に良かった。
罪人の物語?消極的、積極的、集団的な罪が繰り広げられすべての罪が贖罪として収斂されていく。登場人物は全員罪を負っている。近現代を遡って原罪の概念鮮やかな時代の西洋の古典のように感じる。日本が舞台なら同じ構造ではたぶん成立しない。イタリアやフランス、ドイツでもなく節度のある個人主義を有するイギリスで生まれてこそ意味深い物語では?英米文学科なら卒論の対象にしたい。
最初冗長気味の文章に苦戦するもどんどん物語の世界に引き込まれて後半は一気に読了。「贖罪」というタイトルの重さがのしかかってくるラストは圧巻。13歳の無垢の少女が無意識のうちに引き起こしてしまった取り返しのつかない悲しい出来事。とても面白い作品でした。マキューアンは初読みだったので是非他の作品も読んでみたいです。映画も見てみたい。
息苦しくなるほど密度の濃い文章。自意識過剰で嫉妬深く依怙地それでいて夢見がちな、まだ若い女性の固い心のさまがうまく描かれていて、姉と妹それぞれに共感しながら読んだ。彼を犯罪者にしようとしたわけではないのに、嘘をついたつもりはないのに・・・。発してしまった言葉が周りの人たちの人生まで変えてしまう。世に自分の言葉を発信する小説家の葛藤も織り込まれていて、深く心に残る作品だった。
このストーリー自体が実は贖罪になっているわけだが、その設定が読み終わった後になんだか本当にあった話のような気にさせる。やや冗長なスタイルも誰が書き手であるのかわかれば納得できないことも無い。なかなかの大作。
少女の小さな悪意から始まる物語。物語を紡ぐことで自分の中の狂気を押さえようとする点は、マキューアンが作家としての過去を振り替えったのでしょうか。マキューアンの作家としての円熟味を感じさせてくれます。
物語をつむぐ作家の罪と、つぐないの話。作家は、日常の中に物語を求めずにはいられない。そしてそれは時に、残酷で無邪気な罪となる。2人の恋人の末路を知った時、そしてブライオニーが願った2人の姿を読んだ時、「ああ何てことだ」と思わずつぶやいた。願いがあまりにもひかえめで泣ける。でもきっとそれだからこそ、なんだろうなあ。
残酷な出来事は13歳という多感な年齢がさせるのか。罪を感じながら成長していく少女と少女が引き起こした嘘の為にバラバラになってしまった周りの人々を描いた長編。途中読むのにくじけそうになるけど、後半はひきつけられるように一気に読了。
★★★★★ 映画化された「つぐない」は2008年に観た映画の中でダントツの一位でした。観終わった後もしばらくこの世界に気持ちが引きずられました。原作もとても良かったです。軽い気持ちでついた嘘。それがどんなに取り返しがつかないものだったか知ったとき、どうすればいいのか。それぞれの気持ちが痛くてやり切れなくて・・・。切ないです。
いろいろな角度からストーリーを眺められる。そして少女時代特有の残酷性や勘違いや正義感、そしてとりかえしのつかないことについて、深く考えさせられる。著者の本は初読みで、他にも興味を持った。
幼いがため心に宿る嫉妬と勘違いに、罪な嘘をつくことになる少女。そのために人生を狂わせてしまう、愛し合うカップルや家族。1部は、その罪について語られ、2部は戦火を恋人のため、生き延びる男が描かれ、3部は救われない魂に赦しを請う成長した少女が描かれています。心を打つ凄い作品でした。ラストまで読んで本当の「贖罪」の意味を知るんです。まいりました。
美しくも残酷な第一部、恋人達の愛の物語としての第二部、そして罪と救いの第三部。しかし真のテーマは、エピローグにこそある。物語作者という神に憧れた少女が、その過程で過ちを犯し、幾年もの歳月を掛けて、贖罪の意味を物語という形で自らに突きつける。ずしりとした余韻が、読後しばらく、全身を支配する、これは傑作だ。
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