抱擁
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抱擁の感想・レビュー(113)
昭和初期の侯爵家を舞台に、五歳の次女の小間使いとなったわたしが語る物語。冒頭部分からこの家で何か事が起こることだけは明らかだが、それが何なのか分からず、不安な気持ちのまま先へ先へとと連れて行かれる。時代と舞台、それに美しい文章が相まってとても幻想的な物語だった。最後の一文を読み終え本を閉じた後の読後感がなんとも言えない…。好きだな~。調べてみたら前田侯爵家は実在し、この洋館は今も一般公開されてるとか。うぅ…行ってみたい。(初・辻原登)
装丁の絵のイメージそのもののような小説。仄暗い館の中で紡がれる物語。紡ぐ言葉もまたそのイメージを裏切らない。なんとなく「レベッカ」を思い出した。この作家さんはやはりいいなと再確認。
この文章は芸術作品だ、と思う。ふわっと柔らかく上品なのに、凛とした背筋が伸びるような感覚。こんな冷静な少女っているの?とか細かい疑問もなくはないけれど、時代と舞台の設定によって「アリかもしれん」と想えてしまう。短いストーリーだけれど、濃密な異空間感覚をたっぷり味わえて満足です。最後の一行には、背筋を虫が這いあがってくるみたいにぞわぞわっ。
謎解きを期待してするする読んでいくと、あっという間に読み終わって、「何だったんだ」と思うこと請け合い。速読しちゃった人の負け、みたいな。ちなみにミステリではなく、『ねじの回転』を下敷きにしたホラーだとか。雰囲気のある装画・挿画は松岡潤。装幀は新潮社装幀室。
「わたし」は、「検事様」に「今回の事件の一部始終」について語る。女学校を卒業し、前田侯爵家の五歳の次女の小間使いとなった「わたし」は、令嬢・緑子の奇妙な行動に気づく。緑子は、死んだ前の小間使い「ゆきの」の姿を見ているらしい。要するに、旧前田邸を舞台にした、ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』である。著者も『ねじの回転』を下敷きにしたと述べているようだ。加えて、二・二六事件が物語に別の影を落とす。行間から漂う空気が美しいが、『ねじの回転』の影響下にあることを知らないと、やや呆気なく感じられるかもしれない。
こんなに最後の一行で、はっとさせられた作品はありませんでした。鳥肌ものでした。実は、読む前から最後の一文は知っていました。そもそも最終ページの136ページは、ほとんど空白で文字にして15文字ほど。間違って開いたら、すぐに視線が捉えてしまうんです(´_`||)でも、誰から誰への言葉かわからないうちは、なんの変哲もない言葉なんですよねぇ。で、物語が始まってわずか6ページにも重要なシーンがあるのにも、あとで気づいたんです…。<ここからは、ネタバレというわけではないけど遠慮してコメント欄で。>
アキ@1.17思い出してや
そう、6ページ。主人公が初めてお屋敷に着いたその日、馬上から声をかけてくれた乗馬服の若い男性って、きっと陸軍将校である「ゆきの」の夫に違いありません。そう思いませんか?
ナイス!
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06/22 21:02
そう、6ページ。主人公が初めてお屋敷に着いたその日、馬上から声をかけてくれた乗馬服の若い男性って、きっと陸軍将校である「ゆきの」の夫に違いありません。そう思いませんか?
ナイス!
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06/22 21:02
なにかの書評で気になって手に取った本。初めて読む著者だったけど、これ面白かった!最後に「えっ?」と思わせる語り口の上手さもさることながら、使っている言葉が本当に綺麗。設定が昭和ってことで古めかしい言い回しを使いつつも、理解しやすいし、とても美しい文章。読んだあとにじわじわくる一冊だった。他の作品も読んでみようと思う。
☆7 『東京大学で世界文学を学ぶ』に登場した短編を推敲した中編作品。装丁、タイトルとあいまって幻想的な作品となっていた。小間使いの独白の雰囲気が抜群で、戦時中という舞台も読みごこちに貢献していた。そしてなんと言ってもこの「むぅ?」と唸らせる終わり方。どういうことなのかはだいたいわかるが、その解釈は皆違うものになっていそう。ちゃんと伏線となる描写やエピソードはあるので捉えやすいようにも思えるが、いざ考えると霧がかってしまう不思議な話かも。辻原さんは長いのが多いから手を出しにくいけど、他のも読んでみよう。
昭和の話とどこか非現実的部分はありつつも、歴史の話が実話のように錯覚もするような作品。最後の一文に鳥肌が立った。自分なりの解釈を整理しよう。
2.26事件から間もない、昭和12年。東京の前田侯爵家の大邸宅で、5歳の令嬢・緑子付きの小間使いとして働くことになった「わたし」は、やがて緑子が見えない何かを見ていることに気付きます。正体のはっきりしない怪異が、公爵家という別世界と、昭和という時代の独特の雰囲気と濃密に絡み合い、複雑な雰囲気を醸し出していました。淡々とした中盤までの流れとは打って変わり、一気に加速する後半に緊張しました。しかし、読者の判断に委ねられるようなラストに、ゾクリとした部分と、物足りなさと、相反する感想を抱いてしまいました。
読んでるってゆうか話聞いてるって風でサクサク進んだ。翻訳本って感じがしたのは、伯爵とか出てくるからかしら。ここの大きい家の世界にどっぷりハマれる。何か事件があって その経緯を語ってはる。。。この人が見たのか起こしたのかも分からずラストへ。 何だかすっきりはしないんだけど。ぼやぼやぁぁっと自分の中で解決するような。不思議な感じ。今では現実離れしたこの家の空間そのものも不思議でした。夢かもしんない。。。って感じ。 正直、5・15&2・26事件ってえらいことやったんや。。。って初めて知った。不安定な時代・・
時は2.26事件の翌年。東京は前田侯爵家の大邸宅「お館」。小間使いに上がった18歳の「わたし」が そこでの1年間について ある人物に 一人語りをする 中編。ザッツ 小説。これぞ 小説。最後のページを開いたときに 受ける衝撃と満足感。こういう素晴らしい一冊に出会うために 読書ってしているんだ、と思えた。
淡々とした語り口に、雪景色が重なりました。終盤になってようやく事が動き出し、そして最後の「ささやき」。色々な解釈ができそうで、ちょっと困惑しました。前田家の大きな邸にゆったりと入り込めた感が良かったです。
初めての辻原氏の作品でした。2.26事件後の世相が次第に不穏になっていく中でのお屋敷の穏やかな雰囲気とそこに潜んでいる怪異(?)が静かに現れると同時に静かな激情も出現した展開に瞑目するしかありません。最後の一言に戦慄しつつも何か優しく、愛しいと思わずにはいられません。静けさのある素朴で知的な文体や作品の空気、幻想的な雰囲気を漂わせた挿画に最後まで夢の狭間を漂うような気分に酔いしれました。
初辻原さんでした。この人はお話を作るのがうまい。それはしっかり伝わって来た。ほかの作品を読まないとわからないけど俺はしっかり作れるんだぜの確認的オーラを感じた。夢と現実がまざって自分ができるとか言ったのはいい。後登場人物が死んだから終わりってわけでもなかったのがいい
昭和初期、侯爵家の屋敷で1つの事件が起きた。侯爵の次女の小間使となった女性の目を通して語られる怪異は、冷静さの裏で渦巻く愛しさと狂気に縁取られ、ラストで一気に解き放たれている。執着という夢から覚め決別したのは、はたして「どちら」なのか。二・二六事件もからめているせいか、仕える主に「認めてほしい」と願う沸々とした人間の熱情が、抑えた筆致からあふれ出ている印象を受けた。
昭和12年(2・26事件の翌年)、前田利為侯爵邸で5歳の次女・緑子の小間使いとして働き始めた18歳の「私」が検察官に語る形式の物語。緑子は「私」には見えない誰かを目で追い始めた。危ういものを感じた「私」が起こした行動は…。雰囲気は満点、当時の貴族的な、静かに厳かに流れる時間を感じます。「私」と「ミセス・バーネット」だけが現実的で、他の人物たちは輪郭だけのような、全体的に幻想的な小説です。ゴシック・ホラーかと思いましたが、そう言い切れない、余りにも単調な結末を迎えます。物足りなかった…。
ゴシック・ロマン風で重々しい雰囲気で当時の暗い匂いがプンプン…これってホラーって言うより幻想小説だよなぁ~っていうのが感想。私も読んでて靄にまかれてしまった感が…きっとあの時に私も主人公も取り込まれてしまったんだなぁ(;^◇^;)ゝ
雰囲気のある本でした。歴史的な事件と昭和初期の日本の上流社会を幻想的に溶け合わせ、心理的な怖さが感じられる何とも不思議な雰囲気が味わえました。静かな語り口も格別です。抱擁という題名の漢字二文字の匂いを堪能しました。
静かな雰囲気の小説。展開としてはホラーなのに雰囲気が静かだからゆっくりした感覚になった。「わたし」と緑子、ミセス・バーネット以外の登場人物たちの姿が見えてこない感じでしたがそれがまた小説の雰囲気を良くしている気がしました(笑)そして静かに物語が進んで事件、最後の一言が・・・。良かったですね~(笑)短かったけど良い小説でした(笑)
昭和初期の日本が舞台ですが、どことなく外国の風が感じられるよう。死者と生者、夢と現、物語と史実、我と他の境界がぼやけてくるようなお話。荘子と胡蝶、ボルターガイスト、夢枕の弟。こういった挿話が物語を幻想的な雰囲気へと導きます。(付記あり)
最後の一文で、えぇ~っとなる。わたしの望んだようになったということだろうか。でもそれは手に入れると同時に失うことだから。わからない、もやもやしていつまでも考えてしまう。これだけの厚さなのに重層の迷路に取り込まれたようだ。昭和初期のお屋敷の様子も興味深いし風景描写も魅力的。
翻訳本好きの私だけど、日本の小説をもっと読みたい!という気持ちにさせてくれる作品だった。描写がとても巧みで、ぞわぞわと不安な気持ちになったり、ほっとしたり、ぞくっとなったり…。一番怖いのは、起こったことより、自分で自分を信じられなくなること。挿絵も素敵で何度も読み返したくなるような作品。
【図書館】どうなるのかわからず不安な思いで読んだけど、その感覚が心地良かったりもした。最後の一文で全身に鳥肌が立った。
幻想的で美しく、そしてなんとも魅惑的な物語。「わたし」と青年将校たちをリンクさせた心と時代性の組み合わせが、何とも言えない緊迫感を出していました。
本当に「ねじの回転」。大好きな「ねじの回転」も、私にとっては悪意の介在する妄想譚なのですが、こちらの方が主人公へのまなざしが優しいために、より一層読みやすくわかりやすく感じました。二二六事件の傷がまだ癒えない昭和初期、日本有数の華族のお屋敷に、小間使として働くことになった少女が語り手です。とても静かではかない雰囲気があって魅力的でした。
短くて文章も読みやすいので即読み終わるのに、最後の1ページの1台詞。えーっ、最初に戻って反芻すれど、私には説明不可。いずれが胡蝶の夢なのか、ビクトリア時代の少女をとりまくゴシックホラーなのか。この後味がこの小説の味わいなのかもしれない(としか、読解できなかった私、トホホ)
舞台や物語の雰囲気が、ヘンリー・ジェームズのねじの回転に似てる。一番似てるのは、「幽霊」のとらえどころのないところ…読み終わってすぐは物足りないと感じたけのに、時間がたつごとになんだか薄気味悪く感じる。最後の一文からして主人公は望みをかなえたのでは?と分かるのですが、それすらもなんだか不気味。それは本当に「わたし」の意志なのか。いろいろ考えてしまうと、ついつい表紙すら怖く思えるから不思議。短いけど味わいのある作品です
お屋敷をとり巻く深い森のイメージと、緑子の名前とが呼応するように響き合っていたと思う。樹木の精、みたいな。あと、姿見の使い方でぞくぞくした。
抱擁の
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感想・レビュー:54件













































