巡礼
巡礼を追加
巡礼の感想・レビュー(192)
ゴミ屋敷の近隣での迷惑ぶりと、ゴミを積み上げてしまった男の生涯を綴った物語で、結末に一応は救われますが、爽快感はない読み物でした。 ゴミ屋敷の主忠市は世を拗ねて、寂しかったのでしょう。境遇に同情の余地はありますが、向かいの家をローンで買った吉田家は不幸としか言いようがありません。 最後には、長年断絶していた弟が、手を差し延べてくれて、やれやれ。 切り絵の先生の話しとか、最初の章の後段への絡みも今ひとつ。
ゴミ屋敷という決して共感できないようなことをやらかしてしまう人にこんな物語があるとしたら……どうしてタイトルが「巡礼」なんだろうと思いながら読んでいたのだけれども、その「巡礼」な終わり方は強引なようにも思われるが、でもやっぱりこれで救われる
第一章、ゴミ屋敷を囲う人々の視点から話が綴られる。不要な情報や描写などノイズが多く、ゴミ屋敷をそれこそワイドショー的に外から覗く。第二章でようやくゴミ屋敷の主人へと話が移行し、主人の人生の歴史を一条の光にして、仄暗い屋敷の中をゴミをかき分け、奥へと進んでいくような感覚がある。そして最終章、弟が出て来、歴史が現在とぶつかり、ゴミ屋敷の中と外がつながる。人間は滑稽だ、人生は悲惨なギャグだ、だから人間は、人生は、良いものだ。傑作。
平川克美さんが医学書院ウェブサイトでの連載などでこの本に触れていたので読んでみた。切ない小説。このラストを、救済と言ってもいいのだろうか。いいのだろうけど、それでもやはり悲しい。
誰が悪いわけでもない。ただ、ちょっとした配慮、相手を理解しようとする余裕が無かったため、ぎくしゃくしていく人間関係。離散していく家族、そしてやがて訪れる社会からの孤立…怒涛のような戦後日本社会に翻弄されながら生きていく丸亀屋一家の姿は、昭和が遠い昔になりつつある平成の今となっても、リアルに我々に迫ってくる。作品の終盤で幾多の離別、死別を経た後一人っきりになりひたすらゴミ集めに続ける忠一を訪ねる弟修司の言動、そしてゴミ屋敷を片付けた後、巡礼に向かうという二人の姿には何かホッとさせられるものを感じた。
もちろん執筆のきっかけはゴミ屋敷報道だろうが、そこから何人かの戦後史を紡ぎ出した橋本治の想像力はさすが。普通に生きることの困難さに胸がつまりました。
戦前から戦後という激動の時代で「普通」の人が様々な物を失っていき、最後は家をゴミ屋敷にしてしまうお話。「普通」であり続け、流れに身を任せた到達点がゴミ収集であったとすれば、その行為を無意味とは認められず、しかし無意味だと分かっている自分もどこかにいて、心が負の渦に飲まれていくという部分が読んでいて辛かった。また時代背景が丁寧に描かれており、生活感溢れる昭和に引きこまれた。そこまでは良かったのだが、最後の巡礼の旅がどうも付け足しのように感じられてしまった。「巡礼」は象徴的な物でも良かったのではないだろうか。
⑦ゴミ屋敷住人の生い立ちからの物語。肝心のどこで心が壊れたかは、描いてないのが不満。ゴミ屋敷は蛇足で戦前生まれの生涯って感じだね。やはり古き良き時代なんて、いい時代なんかじゃないよな。読んでて心がイタイ本だ。この時代の10代~30代の時代背景とかはとても勉強になった。
描かれる人々が、自分の気持ちを見つめたりせず何も考えず、ただただ時代に流されていっているのは、以前読んだ「橋」と同じ。でも「橋」では描かれる人たちに嫌悪感しか抱けなかったのだが、これは違う。前半はゴミ屋敷の隣に住み心身症になってしまった吉田夫人の目線で読んでいたので嫌悪感を感じていたけれど、主人公忠市の生い立ちを読むにつれ、彼の孤独や空虚がひしひしと伝わってきた。空虚な登場人物たちの中で、弟修次の存在が救いだった…。
昭和(というか戦後)ってこんな感じだったんだなぁ、ということしか読み取れませんでした。あんまり何も考えなくても、親がやってきた通りにやればいいという段階から、親と子の生きる社会が別物となり、(実際には子どもが小児癌で死んだことが直接的やけど、形而上的には)それぞれがそれぞれなりに適応していかなければならなかったのに出来なかったことを発端とする悲劇なんかなぁ、と。「自分の生き方を省察するって大切」あるいは、「自己省察しなくても生きていける世の中っていいよね」という受け取り方が出来るのでしょうか。わからん。
読んでいて正直辛かった。ゴミを集め続ける彼は「普通」のなかで生きてきた。はずなのに、どこから自分がその「普通」から外れたのかわからず迷子になっている。その空虚な瞳をイメージした。そして時代の流れに翻弄された人々の虚しさと悲しみを思った。
普通の人生ってなんだろう?って思わされた。ゴミ屋敷に住んでいても普通の人生。アウトロー的な人生に捉えられても当人にとっては普通の人生。普通と異常のせめぎ合いの中で人生とはなんぞやと問いかける一冊。
ゴミ屋敷に住む主人公が何故ゴミ屋敷に住むのか?
今、丸山さんの『日本の思想』を読んでるんだけど、この主人公と共鳴していてこの本の深さを知った。日本は戦前、戦後で思想を逆転させてきた。戸惑いを強く感じた人はまだましだ。彼は疑問を持たずに新しい世界へ迎合していった。物資がなかった時代、物を大切にせよと教えられた。新しい時代はゴミを集めるなと罵られる。私が今正しいと思う世界は50年後も正しい世界なのだろうか。自分の考えを見つめ直す良い読書となりました。
家族を失って、「意味」を見失った人間が、生き延びるためにしたことはゴミ屋敷をつくることだった。彼は生きるための金には困っていない。「意味づけ」を食べなければ生きられないという、近代の病が、戦後には庶民にまで広がっていたという話。近代の病を癒したのは、前近代的な巡礼というシステムだったが、それは日本人が宗教を必要としているということを意味しない。
普通のはずのどっかで狂った人生を一から淡々と書いてるのはおもしろかった。終盤は地縛霊が成仏したような勢いだったけど。本筋とは関係ないけど、弟が見てた放送中の番組を遡って見る機能ってCELL REGZAくらいしかありえないんじゃ…というのがものすごく気になった。
四国巡礼の途中、静かに息を引き取った忠市。忠市の「生きようとすること自体がつらかった」人生と重ね合わせると最後は幸せだったのかもしれないと思いました。
「これはゴミじゃない」というのは、自分を拾い集めてきたものになぞらえていたのか。橋本治は自分が生きた時代の少し前くらいの時代を振り返る試みを続けているのか。その時代において、特殊でもなんでもなかった人が、特に条件が悪かったわけでもないし、悪いことをした訳でもないのに、不思議なエアポケットに落ちてしまった様子。近所の人の様子から攻め、最後に長い主人公の歴史。そして、巡礼、救い(わたしは救いだと思ったのだが、どうなのだろう)。
自分の家をゴミ屋敷にしてしまった、真面目だけど不器用な男の履歴の様な物語。孤独をゴミで埋めて、寂しさを紛らわせていた様に思えた。だから他人にとってはゴミでも、「ゴミじゃねぇ」と言う。愛する家族が居れば、こんな事にはならなかったんだろうな。
★橋本治さんの本は初。 ごみ屋敷をテーマに扱った作品なのでおもしろそうかな~っと思って。 結果なんだかわからなかった。 まわりに住んでる人々・どうしてごみ屋敷になったのか・ごみ屋敷にした住人。とこんな感じでかいているんだけど、文章が硬くもっとエンターテイメントっぽくしたほうが楽しめたかな。自分は。でも最後に弟が出てくるのは良かった。 あーーでもなんかごみ屋敷にした住人が不完全燃焼・・・。
一人黙々とゴミを拾い集め、家の中と周りに積み重ねていく老人。それを為す術なく半ば呆然と眺めながらも、次第に自身のおかれた状況への憎悪と悲しみを募らせていく近所の住人たち。第一章では住人たちの視点から、第二章では老人の少年期〜二度の結婚までを、第三章はゴミ屋敷から(あるいは現世からの)解脱を描いている。戦後の高度経済成長期に否応無しに生きざるを得なかった主人公が、次第に周囲から取り残され独りきりになる様子を、冷ややかでありつつも憐憫に満ちた視線で追っていく橋本治。力技で読者を自分の思想に追い込む作家だ。
☆☆☆☆戦後日本の時代の波に飲み込まれた人たちの話。非常に時代の変換がわかりやすくて、面白い。淡々とした文章だが、格調高い文体で深く時代をえぐる。こりゃ、良いものを読んだ。
世間からはみ出してしまった登場人物の過去を、時代背景と共に丁寧に描写し、読み終える頃には自分とは対極の位置にいたはずのゴミ屋敷の住人がさほど異質だとは思えなくなっている。人は数々の選択肢を経てどこかにたどり着くのだということ、そして本作品の主人公の行き着く先がたまたまゴミ屋敷だったのだろうということを感じた。純文学が成し得る力に圧倒される作品。
次々とゴミを運んでゴミ屋敷に暮らす老人。どうしてそんなことになってしまったのか?屋敷に持ち込んだものをゴミと認めることは、自分自身も無意味な存在と認めることになると足掻く老人。なぜ『巡礼』というタイトルなのかは、最後の10ページまでお預けでした。
やっぱり、橋本治は人の心の奥底を描くのが上手!ただ、忠一には共感できず。どちらかというと、吉田夫人の憤りのほうがわかりやすい。彼女から見た視点で描いてもらったら、また違ったのかも。
泣いてしまった。感情移入は出来ないんだけどな。こんな風に「普通の人(結果的に普通じゃない人)」の人生を淡々と描写されるとそれだけで涙が出ます。(桃尻娘からのファンですが)橋本治の小説はしばらく読んでなかったけど凄いなあ…評論はもうやらないかも?と聞いたんでガンガン小説書いてってほしいです。
やっぱり、橋本治はこわい。こっちがそのこわさを受け止められる体調じゃないときつい。ねじれていく部分をいつもは目を反らしているのにこれでもか、これでもかと解説される。そんなに見えている人もつらいだろうけど。
巡礼の
%
感想・レビュー:82件














ナイス!





























