ムーン・パレス (新潮文庫)
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ムーン・パレスの感想・レビュー(563)
錯綜し続ける人生の喜劇と悲劇。それぞれの生と、それぞれのブラックボックスを別の人間と別の人間が覗いていくような、そんな物語。柴田氏のすばらしい翻訳もあり、とても読み進めやすく面白かった。
これは!! 言うことないほどエンタメですよね。売れないとかありえない。恋の話、キティ・ウー?(記憶でかいてるから間違ってるかも)華僑の娘、華南かな設定。あり、んで、父と子のすれ違い?あり。子ばれるところがない。完璧なエンタメ。
何度も何度も読んだ。それでも、この小説の惹きつける力のようなものは色褪せない。絶望して、砂漠の砂のように渇いて、それなのに人生から離れられない。
この小説に限らずだが、再読は初読では気付かなかったことに気付ける幸福を得ることができる。殊に、オースターの小説では、それが多い。MSの語り、エフィングの人生、それからバーバーの『ケプラーの血』。彼らの人生を繋いでいる(ように僕には思える)「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」という言葉。
中2病まっさかりだった中学2年生のときこれ読んだなぁ。自分で言うのもあれだけどこの頃から本を選ぶセンスは良かった。中学生の自分にこれ理解できたんかいと云われると疑問だけれど…。再読するために再購入。
絶品の青春小説、と裏表紙にあるがトンデモナイ!物語はそんな陳腐な枠を軽々と飛び越えてうねる。絶望と歓喜、沈黙と饒舌、混沌と知性、孤独と愛情。主人公が出会う雑然とした時間のかけらは、偶然という名のもとに月に導かれ、やがて必然の景色となる。熱い珈琲を片手に読み始め、NYの音と光を感じ、南部の恐ろしい広大さを思い、ため息をついて本を閉じた。忘れてはいけない、「物事にはつねに続きがあるんだ。」珈琲を淹れなおし、しばし空を見上げた読後だった。
久々に本を読んで号泣。青春小説という銘、しょっぱなの主人公の奇行から『ライ麦』的な・・・?と思えば。主人公MS、奇妙な老人エフィング、肥満体のソロモン3人それぞれの物語でもあり、3人が奇蹟的に交差する一瞬の悲しみと愛しさに満ちた物語でもあり。たくさんの死と別れを描いたお話でもあるのに、とてもさわやかで愛しい気持ちのあふれる本です。悲劇的でもあり滑稽で作者が「コメディ」と称するのもまた、うなずけます。年末年始とよい読書ができました^^
何もかも失った青年が、自分のルーツを知り、再生してゆくお話。「偶然にも程がある!」って感じなのに、何故か自然に思えてしまう。ラストで主人公のフォッグは、最初と同じで何もかもなくしてしまっているのに、最初のダメダメ人間の時とはぜんぜん違う逞しい印象で、彼は成長したんだなあと、清々しい気持ちになりました。はじめて読んだのは、転職を考えて悩んでいた時だったのですが、背中を押してくれた思い出の本です。
本でできた虚構の家具。演奏者の伯父さん。大学近くのムーンパレス。本を読んでは売る。ブックオフなチャンドラー書店。始終空腹で暮らす。蝋燭の比較実験。手紙の誤配でキティに出会う。公園生活。ニューヨーカーは服の中身がどう振る舞うか厳しい。週末はご馳走。朗読屋。見ているものを描写せよ。二度目の死亡記事。何も考えずに絵を見ろ。洞窟生活。ニューヨーカーに金をばら撒く。異様に太った男。バーバーのSF小説。妊娠で喧嘩。洞窟を探して。奇妙な三代記。前方の太陽、背後の月。太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である。
親子三世代の不思議なめぐり合いの話。欝気味な主人公の人生が急激な浮き沈みを繰り返すのが面白い。お金がなくなるのがだいぶ前からわかっているのに、働くと言う選択肢がでてこないのが笑えた。最後は切なさが残るが、さっくり読める良い作品でした。
最初面白かったんだけどなー。最後全て終わらせちゃうとこがイマイチ。叔父さん死んで堕落して、友人に助けられステキな恋人ができ、雇い主の過去を聞き、息子を見つけ出し、その息子が自分の父親って…。アメリカ青春文学って感じだ。途中でどうでもよくなっちゃった。
"ライ麦畑でつかまえて"を連想した。こんなにサクサク読める青春小説なら、もっと早く読んでおけば良かった。でもちょっとだれるところもある。発狂寸前まで人生どん底まで落ちた青年が這い上がり、その青年が雇われ主と過ごす奇妙な生活、自分の真実を知るまでの偶然。不器用に生きることの切なさ、煌めきが素敵。
暑い夏の日,大好きな「風の谿」で夢中になって読んだ。最高の夏読書だった。周囲の雰囲気が本の内容と妙にマッチしていて・・。この一冊の中にどれだけの物語が詰め込まれていたんだろう。「絶品の青春小説」というキャッチフレーズ通り,深い余韻の残る一冊でした。お薦めです。
さて、敢然たる偶然が呼び込む幸運と不幸の合間にある本。再読であるが、素敵すぎる。何度でも読める本なので、大事にしてきたい。大事にするべきだ。
「怖がるんじゃない」と僕の声は言っていた。「誰だって死ぬのは一度きりなんだ。喜劇はもうじき終わる。そうしたらもう二度とやらなくていいんだ」
結構な急流をゆるゆるだらだらと、それでも沈まない謎の材質でできた小舟で流れていくよう。オースターの、「やあ、いつのまにかこんなところにまできてしまったよ」と常に周りを呆然と見つめているような孤独感に加えて、控えめだが若々しいユーモア。青臭いサービス精神と正直さを持つ、一癖持った好青年的小説。
半年遊んで暮らせる程度のそこそこの金。でました、得意の転落グッズ。ライ麦が頭いっぱいに詰まった青年と偏屈な金持ち爺さんを中心に、才能に恵まれながらも幸せに恵まれない、哀しきフリークスたちが舞台に上がっては降りて行く。これもひとつのアメリカ的ロードノベルといえるかな。
混沌としているようで妙にピュアなとこもある主人公。自分のことばっかり考えている主人公。二十歳そこそこってこんなもんだったんだっけか。「公園のゴミ箱漁るぐらいなら仕事みつけて働きなさい」と言いたくなる私は大人になっちまったんだだなぁとしみじみ。 途中、えんえんと続く爺さんの回想は「ねじまき鳥」に出てくる間宮中尉のエピソードを彷彿させる。この山を楽しめるかどうかがひとつのカギかも。
難しい事考えずに素直に面白かった、楽しかった。ドンドン話が連なる。ドンドン面白くなってくる。煩雑な分析・解釈なんて、この作品に限ってはしなくてもイイんじゃないかなぁ。オースターの作品にハズレはないなぁ。
面白い本だったが、楽しめなかった。この種の青春小説はもう楽しめないのかもしれない。読書として楽しめる快楽に満ちた面白い本だけど、それでも揺さぶられるものは僕の中にはなかった。オースターお得意の波乱万丈人生書割でしかない感じ。「幻想の書」はもう少し面白かったと思うんだけど
月は再生のシンボルらしい。この小説は絶え間ない喪失と、世界との絆の再生の物語という気がする。そして、虚無への衝動に満ちた青春の物語が堪らなく切ない。超自然的な力を感じつつも、それがご都合主義に終わらないのが魅力的な、奥深い物語だと思う
オルハン・パムク推薦のポール・オースター。アメリカ的奇想天外な話だが、偶々や偶然を運命や巡り合わせや奇跡として、普通の怠惰な人生を劇的にしかし抒情的に描く。根底には現代社会に対する心の”ゆらぎ”がある。それは弱々しく諦念による憂愁が漂う。主人公の視点から過去が解き明かされ、運命が因果応報であるという一般的解を提示して終わるのだが、主人公に誤解や勘違いがあるとすると、実は物語全体が不安定化するという”ゆらぎ”、これがオースターのテーゼ。主人公の知人が言う「アポロの月面着陸は捏造だ!」、だとしたら世界は…
最後のあたりは息苦しいくらいの気持ちで読んだ。たとえ時間が経って話の内容を忘れてしまっても、この本を読んで頭に浮かんだイメージは、死ぬまで忘れられないと思う。おじさん、本箱の家具、落としてしまった卵、公園での生活、ジンマー、エフィング、荒野、洞穴、絵、殺し合い、巨体の歴史学者、ケプラーの血、墓穴、キティ…。この本が、主人公の回想で書かれていてよかった。失った、通りすぎて行った何もかもを偲んで、それでもこの主人公は生きているんだとわかったから。何かをなくし、誰かと別れ、それでも生きていけるんだと。
これまでに読んだオースター作品の中ではいちばん事件が多く展開の早いものだった。主人公の頭の中や夢想(?)には共感しつつ、作者が紛れ込ませる小ネタ(?)には頭のページをめくりながら読める。特に前半の大学生活あたりは面白い。マーコも伯父さんもエフィングもバーバーもキティも、みんな何かを喪失している。そうは感じられないけれど、全体として見るととても悲しい物語のように思った。「人類がはじめて月を歩いた夏だった」で始まるように、要所要所で月が登場するのが良い。また、素敵!と思った一節は前半にある→
分かりやすい起承転結があるわけではないが、運命とか人生とかいうものが、転がる石のように、ただただ転がっていく姿を目の当たりにするのは奇妙な気分で、いま「小説」を読んでいる、という事をしばし忘れる。時にドラマティックに、時に退屈に、人が、思いが、転がっていく。文体もとても美しい。不思議な本にして忘れ難い一冊。
ムーン・パレスの
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