贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)
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贖罪 下巻 2巻の感想・レビュー(153)
結局のところ、罪ってのものは贖えるものじゃないのかもしれない。唯一罰してくれそうな人たちがもういないとあればなおさら。上巻と下巻で文章の雰囲気が違うように感じたけど、これも少女から大人へという、ブライオニーの変化を表してるのかな。いや、単に上巻は読み進めるのにえらい苦労したってだけなんだけど。
情景描写にやたら力が入っていた。タイトルから何となく登場人物の暗い部分に注力した作品化と思ったが、話自体はそう込み入ったものでもないこともあって、期待からは外れてしまっていた。
素晴らしい。映画も凄く好きだけど、文字だからこその美しさも切なさも痛みもあって、やっぱり小説の方が凄いなぁと思った。小説とは、文学とは、贖罪とは、人間の一生とは何なのかを考えさせてくれるような重さはあるけど、描写や人間に心理も上手くてどんどん引きこまれるように一気に読めた。出会えてよかったと思える作品。本当に素晴らしい。
272頁の「ブライオニー・タリス」の署名に愕然。けれどもここに至るまでの犯人について言及されている箇所では確かに不自然な印象があった。ブライオニー視点での章ではある人物の名前が挙げられるが、なんとも唐突。マキューアンがこのような一種の破綻ともとられかねない不自然さをあえて作り出したのだとすれば、凄い技法。 作家の職業倫理というものを考えさせられた。作家はその想像力(創造力)の発揮に節度を見いだすべきか? 物語を面白くするためにはなにをしても許されるのか? そこに個人的怨恨や希望を絡ませてもよいのか?
想像力の欠如・欠陥が、私たちが囚われてしまった幻想を打ち破る力を阻んでしまう。問題は、想像力による物語を創造する能力ではなく、その欠如にある。他者との同一化という半ば陳腐な訴えかけが、それでも物語によって重く響く。
ストーリーの展開に吸い込まれるように読み進んでしまった。 ブライオニーの贖罪意識は逆に自己愛にも思えてしまう。ブライオニーを愛情で包み込むべき父親の影が薄いのが気になる。
第二部は「待つ」ことの意味を考えさせられつつもなかなか入り込めず苦しかった。しかし第三部からラスト迄は早かった。ブライオニーの贖罪が成功したかは今となっては分からないことだが、小説家であり小説の中で神である彼女が二人を結びつけたことは、悪く言えば自己満足だけれど私は十分愛を感じることができた。大人になってかつての幼い嫉妬心と正義感の間違いに気付いてからの葛藤は何が共感できるものがある。“自分の物語に固執したことを原因とする”彼女の罪は、“寛容な想像力”にとって打ち破られたということだろうか。
最後の最後でこの小説の構造が明かされるのだけれど、それに非常に驚かせられ、小説家の業の深さに圧倒された。映画化もされているそうだが、この作品の凄みは小説だけが表現しうる凄みだと思う。
二つのラストをたてつづけに見せられたかのようなエピローグに意表をつかれ、読み終えてから何日か経っているのに陶然とした思いから醒めない。人の運命をも変えてしまう悪魔のような嫉妬心、地獄さながらの戦場、そして憐れなフランス人青年の兵隊・・・。いまだに頭の中で悪夢のようにイメージが膨らんでいく。 「文学と宗教だけが教えてくれる方法で、人間の卑小さと高貴さに思いを馳せることだろう・・・・・・。」(p159) 上巻のロビーの予言めいたこの言葉は、まさに私が今感じている思いだ。文学のすごさをみせつけられた。
上巻における少女の誤解は滑稽だが、同時に真剣さを持ち、被害者にとってそのボタンのかけちがいは修正不可能なほど致命的である。しかし現実における様々な悲劇も端緒を取り上げてみればまさしく同じようなもので、喜劇性を孕んでいて、はっきりと弾劾できる対象をもつことは稀である。だからこそ、加害者が抱える責任は払拭困難で、その贖罪行為は情けなくも、確かな尊さを感じさせるものである。ある種の劇的な人生をマキューアン独自のディティールにこだわり書き上げた、小説の力を遺憾なく主張する作品。
精緻で崇高で圧倒的な物語。贖罪の意味が最後の最後で明らかになる。罪を犯した人間がいて、それが作家だったら・・。忘れられない小説となりそう。
タイトルの「贖罪」・・・この言葉の意味するものの大きさ、思いがけなさ。そこに大きな光がある。苦しみに満ちた「贖罪」の物語なのに、この清清しく明るい輝き、しみじみとした余韻に打たれる。小説ってすごい。小説家ってすごい・・・
なるほど、なるほど、こういうことかと第三部終わりでわかり、もう一度上巻に戻り、最終章へ。謎解き部分の解決でストンと落ちるわけでないあたりが深いところ。著者と主人公の業深い小説家ぶりをひしひしと感じる。いかにもイギリスという感じ。キーラ・ナイトレイ主演で映画化あり、見たいような見たくないような(でも結局見ちゃうかな)。
イギリス文学の伝統を詰め込んだ現代イギリス小説の傑作と言っても良いでしょう。マキューアンの著書でいちばん良いのでは?? 「意識の流れ」だったんですね。そして、言葉は嘘をつく。小説家による小説。 そのうちブログに書きます。
移り行く視点によって景色が立体感を帯び、穏やかだった空気も徐々に暗みを増して渦巻いていき読者を巻き込んでいきました。人の高さの目線で綴られた物語にシンパシーを覚え、全編を通じて力強く読まさせる力を感じました。でもね、最も驚愕するのはエピローグ。ここで足元が揺れ動いて、世界がひっくり返りました。作者の入り組んだ意図が鮮やかに一点に収斂して解き明かされ、深い溜息とともに、物語の可能性を思い知らされました。精緻な構成とあわせて、(そう、じれったいほど!)丹念に描かれた物語が、いつまでもずしりと心に響きます。
衝撃の真実・・・でも結局それも主人公の主観に偏っているかもしれず、創作かもしれない。小説の虚構性、そして愛の虚構性。小説も愛も、個人の認識の範疇を出ず、限界がある。それなのに時にどれだけ大きな素晴らしい世界を作り出すことか!
贖罪 下巻 2巻の
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感想・レビュー:41件














ナイス!

































