蛍川・泥の河 (新潮文庫)
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蛍川・泥の河の感想・レビュー(502)
どうしたらあのような表現ができるのかと感動しながら読みました。情景は想像できうる言葉を丁寧につなげて、人の心の動きは言葉では表さずにあくまでも目で見える動きで読者が感じ取れるように。最初から最後まで引き込まれていきました。特に蛍川は方言が独特で 知り合いが使ってた訛りのある言葉を思い出し懐かしくほろ苦い思い出に心が震えました。現実と本が訛りでリンクしてしまい涙がこぼれそうになりながら読み終えました
宮本さん、やっぱりすごいです。子供の目から見た雑多な大人の世界、少年の青臭い感じ、濁った川に浮かぶ朽ちかけた船...短い文章なのにくっきりと浮かんできました。じめーっと、重たい読後感ですがまた他の作品を読みたくなります。こうして文章を読んで、頭の中にイメージが立ち上ってくるのを味わうのが読書の醍醐味だとつくづく思います。
よかったです。
全てのキャラクターが主人公のように煌めいていて印象的です。戦後当時の社会風景もよく描写されていてしばしタイムスリップしたかのような…儚い淡い物語。
私はこれをJapanese novelではなく「日本の小説」と呼びたいし、シンプルな文章ではなく「飾らない文章」で綴られている、といいたい。文章は美しく研ぎ澄まされた水のようで、読んでいることを感じさせない非常になめらかなもの。しかし描かれている内容は必ずしもきれいなことばかりではない。そこが良い点だと思う。この人の小説の本質は「もの哀(×悲)しさ」であると思う。 しかしこういった小説が好きかどうかと訊かれれば、私個人の嗜好には合っていないということも、またいわざるをえないのだけれども。
「米びつに手を入れて温もってるときが、いちばん幸せ」っていう描写は何だったかな、と思ってたら、『泥の河』でしたか。すごく……気持ち、分かります。何度読んだか分からない作品だけど、読むたびに印象が変わるなぁ。。。
『泥の川』は、川沿いにある食堂の親子と、川に停泊した船に住む母子との交流を描いた物語。主人公の少年と、船に住む少年との交わりが瑞々しく、時には残酷に描かれる。時代は違っても、読者の追想を誘うような話だった。 『蛍川』は、病床に伏す父親とそれを支える母親、そして主人公の少年を中心とした物語。少年の視線で見た、死病や同級生の死、淡い恋などが描かれる。最後の蛍のシーンは、美しいというより、むしろ何か恐ろしい気がした。 共に名作。
『泥の河』が秀逸。胡散臭くもなく説教臭くもなくゴテゴテした主張もない。ただ作者の心がとても綺麗に澄んでいることが伝わってくる。舟の家のお母さんのことも喜一のことも、「泥の河」に纏わることは堕ちていく要素であるのに、ただ堕ちていくだけでないのは、この作者の澄んだ心があるからなんやろなあ。『蛍川』はまだ自分の中で未消化…なのか?切なくて苦しいのだけど、なんだこのもやもやは。
旅行のお供にしましたが、飛行機のあの辛い時間も周りの騒音も全然気にならないくらい集中できました。泣くのはこらえましたが、子供目線で読んでも大人目線で読んでも、どっちの心情も辛くて暖かくて…何度もぐっときました。次はどの作品を読もうかな〜!
「泥の河」は読む前に観た映画を思い出した。だから余計に灰色のイメージの世界の話だが、貧しいながらもそれぞれの人物の目が曇っていないので淡々と読める。そして描写が上手い。手元に置いておきたくなる短編だ。かと思ったらその後の「螢川」はその上をゆく完成度で老いた父との別れ、貧しい家庭環境、友人の死、淡い恋など全てが美しく切ない。ラストのシーンは類まれな文章力から圧巻のホタルの群れが鮮烈に見えた。初宮本輝でしたが、他の作品も読みたくなった。
泥の川と蛍の川。どちらの話も、人のエグさ、残酷さに縁取られた美しさが読み手の心を惑わせる。主人公が子供である分、感覚的なことに目がいく。
なんというか…。電車のなかとかでなく、ちゃんと読む体勢でじっくり味わいながら読めば良かった!ガンガン読み進めるのか、もったいない作品です。
『泥の河』は大阪が舞台の小学生くらいの男の子2人の夏を描いた作品です。大人の事情とか、世間とか、そんな抵抗出来ない力に飲み込まれながらも どぉにかして楽しく過ごそうとする2人の姿は 現実的でありながらも逃避的です。 『蛍川』は好きな女の子が一緒やのに応援しあってたり、照れながら女の子の話したりしてるメンズの姿は新鮮でした。どちらの話も死の問題とかが絡んでくるんで、重い作品だと言える部分もあります。
沙蚕拾いのじいちゃんを食ってしまったお化け鯉が印象的な「泥の河」、森羅万象全てを圧倒するラストシーンが鮮烈な「蛍川」、絶望的な終わり方をする前者に比べて後者には救いのイメージが強い・・・。時代と風景の描写力とか、蛍川のラストシーンとか、すごいんだけど、なんていうか、眠いよね。
「昭和30年代の人々の暮らしの哀しみを描いた作品」らしい。読書メーターの感想を読むと高評価が多いのだけれども、僕にはよくわからなかった。『道頓堀川』には共感できたんだが・・・なんでだろうな・・・。
蛍川の最後に出会う蛍の描写に鳥肌が立つように感じました。泥の河、蛍川と共通して漂うような雰囲気が印象的でした。閉塞感というか、重く漂うような雰囲気。
「泥の河」でお祭りで喜一がお金を落とすシーンは中学生の時に国語の問題でおぼろげながら覚えています。 なんでだろう・・・汚い川なのに、実際に見てみたくなるこの感覚。蛍川といい作者の描写力には脱帽です。しかしお化け鯉や蛍は、この当時の時代背景がわからないからか、作中でどのような意味が込められていたのかがわかりませんでした。それはもちろん作者ではなく読解力のない自分が悪いのですが。しばらくしたらもう一度読もうと思います。
一文一文読むたびに、その情景が鮮明に浮かび上がってくる。
実際にその時代に生きていたことはないが、彼らの与えられた状況で生きていくしかないということが痛々しいほどに感じられる。
「泥の川」は、文章が暗い中で仄白くぽうっ…と浮かんでいるような、不思議な感じがした。宮本さんの他の本を読んでみたくなった。
どうしてもまたこの世界に触れたくなって購入。汚い河をながめながら、日がな一日過ごしていたい。小川沿いをただひたすらに歩いていきたい。見たこともやったこともないことだけど、はっきりと頭の中に情景が浮かぶ感じが好きです。「お化け鯉」が何を表してるのか、気になるところです。やはり楽しかった。
『泥の河』の舞台は昭和三十年の大阪。廓船で暮らす貧しい姉弟と主人公およびその家族の交流にはあたたかな優しさが滲む一方で,生きていくことの残酷さがふいに影をさす。川面が映し出す結末は希望か悲哀か。
本作を秀逸と言わずして何と言おう。決して華やかではないが昭和前期の作家を思い起こさせるような「密」な描写にするすると引き込まれた。
日本が豊かになることと引き換えに失ったもの。それはなんだったのかな。
何年ぶりかに読んだが、渋い、渋過ぎる。宮本氏は30歳でこの作品を書いたという衝撃の事実。子供についての描写が、本当に自分が子供の頃にはそう感じたり、そう行動したりしていたのか。それとも氏の文章力の巧さなのか。思い出そうとしながら、思い出せない。そんなもどかしさも感じた。
「心の琴線に触れる」とよく言われますが、この作品は自分にとってドはまりでした。触れるどころの話ではなかったです。「泥の河」は戦後の大阪を舞台に、信雄の目線から描かれていました。頭に浮かぶもの全てがセピア色に見えました。「蛍川」では、春の北陸を描いており、その風景描写や、登場人物の心情が本当に美しく映りました。それに…この2作ともセンター試験の練習でやった気がします。
この作家は、読者を渦中に叩き込む名人だ。『泥の河』での主人公の容赦のない言葉がリアルで心が痛いくらい。『蛍川』は「銀河鉄道の夜」の実写版のよう。読書を体験にさせる。
情景描写が極めて上手く(川の上に無数に浮かぶ蛍など)、文を見ただけでその景色が頭の中にスッと浮かんできた。「文学かぶれ」していない文学だと思う。新進気鋭の作家が織り成す新しいスタイルの小説もいいけど、こういういい意味で昔ながらの美しい小説も大切にしていかなくてはいけないと思う。
かねてより人から勧められていたので、図書館で借りて読む。二編どちらも、情景描写の巧みさに魅せられた。特に「泥の河」の、泥が浮かぶ川面とお化け鯉の描写。実際に見たら、美しいなどと決して思わないであろう景色であるのに。また一方、「蛍川」の蛍は実際に見ても美しいと思うのだろう。描写力の巧みさには本当に感銘を受ける。
この作家の処女作と出世作を収録。どちらもおそろしいほどの完成度。一文一文に引き込まれながら、「小説」を読むということはこういうことか、と思い知らされる。抒情豊かな少年期の物語。何度読んでもいいものはやっぱりいい。
「泥の河」の終盤、信夫が銀子と喜一の母を暗がりに見てしまい、二人に見下ろされて這々の体で逃げ帰る信雄。このシーン、想像すると鳥肌ものの恐ろしさである。幼い頃の暗さに対する恐怖と、若さ故に表現しがたい不気味さ。最後に船とともに走り、喜一を呼ぶ信夫がいるが、あの恐ろしさを体験して、それでも喜一を呼べる彼は強いと思う。お化け鯉の存在の大きさは、信夫が体験した恐怖や友情の大きさの象徴とも言えるかもしれない。「蛍川」は蛍の飛び交う場所の表現が幻想的。暗やみの中で、命を燃やすように光る蛍たち。この情景を見に行きたい。
人間の心の奥底を行間で表現する美しさ。どこにも奇をてらうことなく、ここまで読者を釘付けにする作品は数少ない。今やタブー視されている過去の現実を扱いながら、作品としての美しさが重さよりも際立っている。特に螢川では心の描写に加えて、情景の描写が素晴らしい。短編ではあるものの、充分な満足感が得られる。少年の心を通して当時の世の中を描ききっているのも素晴らしい。読書をする上でのバイブルのような作品。
蛍川・泥の河の
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