おぱらばん (新潮文庫)
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おぱらばんの感想・レビュー(128)
昔から翻訳本を読むのが苦手だった。言い回しや、引用や、独特のお固い表現など、全く馴染めず、感情移入も出来ねば文脈すら頭に入って来ない。特にフランス文学は筆頭で、ストーリそっちのけで次々と重箱をつつくように理屈っぽい感情表現のオンパレード。「いったい君は何が言いたいんだ〜」と叫びたくなる。恋愛小説なんだか精神疾患のカルテなんだか分からない。必然、外国文学は疎遠になりもっぱら国内文学ばかり読んできた。この堀江氏の「おぱらばん」はそんな外国文学の匂いがプンプンしていた。でも、なんでだろうね。他も読んでみたい。
とある好事家のエッセイという趣だけれど、表題作は、やはり素晴らしい。
過ぎていく時への鎮魂なのか、穏やかな文章の影にある鋭さもやがて過去に埋もれてゆく。「パリの日本人」はことさらに民族の殻を愛おしく思っているようにも見えます。なんか私にはコンセプトが少々疑問な三島賞を受賞したという作品ではありますが、静かな筆致をゆっくりと楽しめました。
エッセイなのか小説なのか評論なのか、ジャンルの枠組みをひょいひょいと渡り歩くような独特の筆致で紡がれる情景と思考のコース料理。流暢にも思える文体だけど、どの篇もとても緻密に構成された一品なんだということが読み終えると分かる。また時間をかけて読みたいと思った。
卓越した知識と知性と感性をもって異国で生活するということは、ある意味ファンタジーである。しかし、事象や出会いやガジェットから紡ぎ出される物語的な感性の落とし所には、極近しい親しみを感じるのだ。
堀江敏幸によるエッセイ。フランス留学時代の体験を中心に、12のエピソードが綴られる。どれも、自身の豊富な読書経験が生かされていて、時々挟まれる引用を読むと、ついその原典を読んでみたくなってしまう。この人はストーリーはもちろんだが、文体そのものがすでに素敵だ。どの話も印象深くて、おすすめ。
読書体験が直接経験ににじみ出して来たような、独特な世界観。小説世界に侵食された世界に棲む人々の物語…といった感じ。自分自身「のぼりとのスナフキン」を読んだのが、ちょうど登戸を過ぎたあたりの小田急線の車内だった為、メタ的世界に取り込まれたような不安定さを覚えた。
最後までその実態を把握することができなかった一冊。話題が跳ね、展開が飛び、筋道が渾然一体化して確かな形を辿れなくなる。正直ついていけなかった。もとより繊細に過ぎる文面、とりわけ詩の領域が専門外な自分にとって、肌に合わない作品と割り切っていいのかもしれない。
数話読み進めるうちに、この本を楽しめるようになった。いろんな文学作品と作者の日常の考察が織りなす文章に、知らず知らず僕も共感させられる。普通の小説とは得られるものが違う事を理解したうえで読む本。そうすればワンランク上の読書体験ができると思う。きっと再読する。
「こころひそかに《つばくろ館》と呼んでいたあの店が、スーパーマーケットの建設予定地にすっかり吸収されたのを見届けると、私は工事人が引き払うまで近所のカフェで時間をつぶし、夕方こっそり敷地に忍びこんだ。そうしてライターの灯りを頼りに、私を魅了してやまなかった白いセラミックの燕を瓦礫のなかに探ってみたのだが、どこに飛んでいってしまったのか、小さな破片すら見つけることはできなかった。」
読み終えるのに実に1年以上もかかってしまった・・・。つまらなかった訳ではなく、むしろ楽しんだ。時間がかかったのは、1篇々々が濃密で一度にたくさん読めない(読みたくない)から。こうしたまったりした読み方がこの著者の文章に合っていると思う。
第12回三島賞受賞作。解説は吉増剛造。 パリの街角や東京の郊外を舞台に、淡く滲み出るような小話を集めたエッセイとも小説とも評論ともつかない作品集。 品のよい語り口とスマートな知性を感じさせるユーモアは、軽快洒脱で洗練されたパリのイメージ、漂泊と孤独を思わせるスナフキンのイメージにぴったりである。 珈琲、ボトルシップ、洋梨、絵葉書。俗世を離れた、心地よい世界へ誘ってくれる一冊。良作。
「おぱらばん」「BLUE,BLUES,BLEUET」、「床屋嫌いのパンセ」「のぼりとのスナフキン」がすき。「貯水池のステンドグラス」は、こう、凄味があるというか、ほのぼのじゃないけどよかった。
流れるような文章が端正で美しくて、いつのまにかフランスの街の一角に堀江さんと一緒にたたずんでいる自分がいる。一つの話からアートや本へと繋がって行く様は独特で深い知識がないとできないこと。触れている文献、ほぼ無知に近いのが哀しい。いつかおぱらばんDAYSをつくってひとつひとつ文献をさぐりながら読み進めたい。
堀江敏幸お得意の、エッセイとも小説ともつかない文章。今作は特に本にまつわる「物語」という印象がすこし強めだったかもしれません。いつもながら、素晴らしく端正。
河岸忘日抄や熊の敷石の原石。エッセイの形をしているが、けっしてエッセイで括ってはいけない作品。登場・引用される作品(書籍・絵画・映画)を知っていれば、さらに惹かれるのにと思わせる。著者の日本色を伺わせるボトルシップを燃やす、音の環がしっくりと読めるが、留守番電話の詩人、洋梨を盗んだ少女、貯水池のステンドグラス、床屋嫌いのパンセも捨てがたい。
ひとつの話題をきっかけに様々な話題へと拡散していくのだけど、きちんと同じ円の中に収まっている。穏やかそうでいて案外隙が無い。でもちょっとセンチメンタル。そんな文章が絶妙。
本書は小説ともエッセイともつかない、不思議な結構を持つ作品であるが、思うにこれは書評集なのではないか。もちろんただの書評集ではなく、「書評短編集」とでも言うべき〈小説集〉で、例えば作者らしき語り手にオルリー空港へ行く用が出来ると、オルリー空港を舞台とした小説を思い出し、その一場面を魅力的に披露し、読み手の読書欲を駆り立てる。そんな物語仕立ての書評集なのだ。
文庫本になってようやく手にすることができた。先に”回送電車”の散文シリーズを読んでいたので、今作はやはり小説というより散文だなという印象で読んだ。15篇がほぼ同じ構成で書かれているのだけど、不思議と飽きない。この文章、この雰囲気は心地よい。文章は誰でも書けるものだが、堀江さんはその文章で芸術的とも感じられる世界を描き出せる数少ない存在の1人だと思える。
小説ともエッセイとも言えない、いわゆる氏の得意とする「散文」なのだが、例えば表題作は「スタンス・ドット」とそっくりな結びだし、他の作品を読んだ読者にはいろいろとおいしい素敵な散文集です。一気に読むのはもったいないので、ちびちび読むと、しっくりすとんとなじむでしょう。
フランスの何気ない日常の中で紡がれたエッセイ。そしてエッセイ、と書かれているが実際はどうなのだろう。作者本人が総てを経験したかと問われたらおそらく否である。しかし各短編の名もなき主人公が作者であるとも書いていない。特に何か起こるわけでもなく、批評的な文章が織り込まれるなど、なんとなく位置付けが出来ないとらえどころのない作品集。おだやかで落ち着いた、不思議でやわらかい抒情性など、文体からにじみ出る 作者の独特の雰囲気は顕在。すてきな文章。作品内に引用されてるゲラシム・リュカがすごくよかった。
文庫の表紙に惹かれて読んでみたけど、これは中身も好きだ。喜劇的な部分と感傷的な部分とのバランスがいい。エッセイなのに、不思議な空間に迷い込んだ物語のようにも感じる。
おぱらばんの
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感想・レビュー:47件














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