春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
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春になったら苺を摘みにの感想・レビュー(553)
★★★★☆ 同著者の家守綺譚の後書きでこの本を知り、購入。始めはイギリスという前著とのあまりの世界観の違いに目眩すら感じた。エッセイのように単に出来事を綴っているだけかと思ったが、様々な出来事を通して、やがて主人公の気持ちが染み入ってくる。ああ、日常とは斯様なものであったか、と改めて認識した。深刻過ぎず、楽し過ぎず。憂えるだけでも笑うだけでもない。それらの間には一貫性もなく、けれど「日常」としてひとつの塊たり得る。上手い文章と言うよりは、どこまでも自然だ。だからこそ、時折挟まれる言葉が痛いほどに沁みた。
これを読むとステイしてたときの気持ちをがつんと思い出す。家族のこととか、話した人たちとか。特にマザーはウエスト夫人そのもので、だからこのエッセイは私の宝物である。何回読んでもホームシックになって泣いてしまう。
梨木さんの文体には翻訳の香りを感じます。例えばカズオ・イシグロの小説のような。 これを手にとったとき、丁度、世界でおきていること・身の回りのこと、その混沌の中で自分の錨をどこに繋ぐべきか途方にくれる時期でした。 自分と明らかに違うものをどう受け入れ折り合うか。 そうしたことを考える過程で、私の錨は、やはり私自身の中におろさなければならないと改めて感じました。 私自身も、日々外界の影響で変容していきます。けれど野放図に変わり染まり続けるわけではない。精神と価値観の錨は、自分自身の中にあるべきだと。
梨木さんの真髄はエッセイだと思う。ウエスト夫人とのエピソードがどれも温かく、彼女の人柄が良く解ります。タイトルの言葉は、最後、アメリカの同時多発テロ後にウエスト夫人から届いた手紙に書かれている言葉ですが、最初にそれを読んだ時に何故か号泣した思い出が。
冒頭の栗鼠とマグパイの話が秀逸で一気にとりこまれてました。読んでいくと著者・登場人物達の価値観や、考え方、生き方そのものに触れる事が出来たのはとても幸せなことだと思えて。たぶん私はこの人の考え方や感じ方、物事の捉え方、繊細に吟味して消化する経緯がとても好きなのだと思う。それは勿論培ったものでもあるのだろうけれど才能でもあって自分にはきっとない。だけどそうなりたいと思えるくらいに。物事一つ一つを丁寧に大切に受けとめていくことはこんなにも大事なのにいつも自分はなんて疎かにしていることだろう。心に残る一冊でした
すごく良くて久々に読み終わりたくないと感じた。いつも非常に丁寧かつ繊細な文章で、読み終わると感受性が上がる作家さんの一人です。一番好きな「家守綺譚」はハードカバーで2冊持ってます・・・
梨木香歩が英国の片田舎S・ワーデンで下宿生活を送っていた頃に知り合った人々・さらに彼らから伝聞した人々との交流を描いた随筆集。下宿先の女主人ウエスト夫人の包容力の素晴らしいこと。梨木香歩の感性と思慮深さの豊かなこと。心がほっとなる回顧録であった。
非常に面白い!彼女の真摯な生き方、世界の見つめ方が良く顕れていてハッとする。梨木香歩の感性/思考に触れられる良い本だった。また読みたい。
著者のイギリス滞在中の下宿の女主人であるウェスト夫人を中心に、著者や周囲の人々が織りなすエッセイ。「理解はできないけど受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ。」この言葉を体現するような夫人がすごい。先日「水辺にて」を読んで、この著者の随筆はあわないかな、と思ったけど、これはなかなか面白かった。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
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- 09/08
「私たちは毎日そういうことを続けてきたのです。毎年続けていくのです……」後半何度も涙が。世界の醜さを憂う言葉であふれている今、私は「世界の在り方」は「自分の視座以外からは見ることはできない」という透徹した眼差しで紡がれたこういう誠実な文章を読みたかったのだ。日本と○○はココが違う、だけでは絶対見えない景色がここに。山歩きしながら徒然に沸き起こる信仰や自然や生き方についての自問自答「子ども部屋」など圧巻。説得力を持って迫ってくる著者の思考と自然と身体の相互作用。
著者本人のエッセイ。 梨木サンのファンなので興味深く拝読。 作品の中の独特の空気。あれはやっぱり、梨木サンの持つ空気そのものだった。 私は海外にあまり縁がないので、異国に住む友人がうらやましい。
独自の魅力を持つ異色のエッセイ。 ウェスト夫人を中心に、忘れえぬ人々とその出来事に対して梨木が思い、感じたことを丁寧につづっている。 わからなくても、受け入れること。これもまた、911以降の文学と言えるのかもしれない。 個人的には「夜行列車」の章が好みだった。
小説が好きな分エッセイは実は敬遠していたのだけれど、「村田~」と同じような空気感を感じた。正直、小説と言って差し出されても、私はたぶん信じてしまいそうだろう。全体を通して感じる一つの方向性と、そこに登場する人々、語り口は、この人の小説がこの人からこの人の人生から、考え方から綺麗に昇華して抽出されたものだということを失望なく(むしろ逆の想いで)納得させられる。
梨木作品からはなんとなくイギリスに似た香りがしていたので納得。 読み口はとても柔らかさに反して、宗教や哲学、世界情勢に人種差別などの重いテーマが語られている。 ウエスト夫人たちと過ごした時間が梨木香歩を形成したんだなと思う。
これほどまでに自然とページを繰る手が止まらなくなったエッセイはない。小説より小説らしい個性豊かな実在する人々。彼らがこんなにも魅力的なのは、実際に交友の場にいる著者自身の真摯な眼差し、そして、彼らのことを大切に想う友情ゆえであろう。一つ一つのエピソードが持つ吸引力に惹き込まれ、静かな興奮に身をゆだねることができる。元来、人の話など退屈だと思ってしまう自分がこんなにも“個人の体験”を求めてしまうとは思わなかった。人の数だけ営みがある。そんな当たり前の事実に気付かされ、異邦に対する偏見を素直に正された一冊。
著者のエッセイ、に留まらない、過去のことを想い出しながらそのとき想ったことや感じたことを纏めている作品。時系列は各章バラバラで読んでいるうちに混乱する部分もあるがのどごしの良い文章なので苦にはならなかった。著者の精神を形成したと想われる時期を著者自身が鮮やかに語るが、そこに自慢気というか変に偏った思考は無く、むしろ経験を活かした素晴らしい作品になっていると想う。悲しいこと楽しいこと、人生のたった一区切りだけどこんなにも愛おしくて美しい。羨ましくなる、そんなお話。
一つ一つのエピソードに、考えさせられる部分が多かった。宗教や哲学的なこと、世界情勢のことなども書かれてあるけれど、梨木さんの文体や考え方のせいか読みにくいとは思わなかった。「トロントのリス」という章が共感出来る部分が多くて個人的に好きだった。
海外渡航のエッセイだろうと軽く読み進めていたが、途中から政治的・宗教的・差別的な内容に変化し受け付けなくなってしまった。全体的に押し付けのように思えてしまった所や、時代背景に共感できなかったところが思考停止に繋がってしまったのかも。ここに描かれている業の深さと芯の強さがあってこそ、彼女の作品は生み出されているんだと今更ながら理解した。欲にあてられてしまったので、しばらく読むことはないだろう。
タイトルから「西の魔女が死んだ」や「裏庭」のようなイギリス風庭園のあれこれだろうという予想は、大きく違った。イギリスの下宿先のウエスト夫人とその周りに集まるさまざまな国の人々との交流の中で、梨木さんの真摯な生き方が見えてくる。「ただひたすらに信じること、それによって生み出される推進力と、自分の信念に絶えず冷静に疑問を突きつけることによる負荷。相反するベクトルを、互いの力を損なわないような形で一人の人間の中に内在させることは可能なのだろうか」など。このバークボーンがあっての作品と、納得したり意外に思ったり。
かもし出す雰囲気が梨木さんの作品ようなエッセイ。人と人との交流で感じる色々なもの、外国でしか感じ取れないものなのか、でもそうでないような気もする。なんだか、ホンワカした気持ちの中に、多くのことを考えさせられるエッセイでした。
読書メーターに登録するのははじめてだけれど、よむのはもう何回目か。いくつもいくつも、胸の奥にずしんとひびく言葉があって、何度読んでもまた読みたくなる。梨木さんの文章はとても、端正、という表現が似合う気がする。
「理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない」頭で考えると大変なことのようだけど、『村田エフェンディ滞土録』や『家守綺譚』の主人公達を見ているとそれ程難しいことではないように思えてくる。梨木さんのように世界と向き合うことができたらどんなに素晴らしいだろう。まさに「精神を養う」という言葉が相応しいエッセイだった
なんてストイックなんだ、というのが最初の感想。作中漂う清謐さが小説と変わらず、「ん?これ、エッセイだよな?」と思わず確認したくなりました。題材は戦争のことだったり、自閉症のことだったり、決して気軽に読める物ではないけれど、小説と同じく、こちらも繰り返し手に取りたいと思わせる内容でした。梨本さんは作家としてというより、もう人として好きです。多分。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
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- 04/08
読んでから3週間ほども経ってしまったので、鮮烈な印象は薄れてしまったのだけど、やはりこの人の文章は好きだ。ストイックな淡々とした文章、洗練された佇まい、時々現れるユーモア。これだけいろんな所を旅して、いろんな人々の事を書き綴りながら全く散漫にならないのは、梨木さんの揺るぎ無い芯の強さと物事を冷静に見通す目線の確かさ故なのだと思う。先入観を持たず相手の本質を見るその目によって、一人ひとりの魅力が見事に浮き彫りにされていくのだ。 そんな人々の、また梨木さん自身の思いが、深く静かに心に沁みる1冊だった。
「もうそのことについて言及するのはやめてください。それは私の感情をひどく傷つけます」が傑作だった!それから博愛主義の事;価値観や好みや習慣の違いだけで自分が相手から無視されたり、全否定されたら深く傷つくだろう、代わりにそれはあなたの個性だからと違いを認められ尊重されたらどんなに心地よいことだろう。自分の傷つきやすさには敏感だが、ではその反対はどうだろうかと思う、たやすいことではない。受け入れる事、理解できなくても知ろうと努力する事は出来るはずだとは思うのだが、果たして実行できるだろうか。
なぜ梨木作品にこうも惹かれるのか、その理由のひとつがこれでわかった。どの作品にも共通する「理解できなくても受け入れる」というスタンスを梨木さんはどのようにして身に着けていったのか、「エフェンディ」の舞台となった下宿の居間は梨木さんの過ごしたところでもあったのだ、その大切なものを共有させてもらえた読者の喜びを感じる1冊。エッセイというよりも、一篇一篇が短編小説のような読み応えを持っています。
ウェスト夫人素敵です。梨木さんは優しさの中に毒がある。その毒は私をどきりとさせる。そしてその毒は薬になり私の毒を洗い流してくれるのだ。
いつかもう一度読み返したい本。梨木果歩の小説は大体全て大好きで、どういう人なのか、どんな風に育ってきたのかずっと気になっていたけど、この本を読んでこういう今までの生き方があの作風に繋がっているんだなーと納得。
「できること、できないこと。ものすごく頑張ればなんとかなるかもしれないこと。初めからやらないほうがいいかもしれないこと。(省略)いいかげん、その見極めがついてもいい歳なのだった。けれど、できないとどこかでそう思っていても、諦めてはならないこともある」往生際はわるいかもしれないけど、わたしもできなくても立ち向かいたい。それにまだ見極めがつくほどわたしは経験つんでいないし。いや見極めがつく日なんて来るだろうか。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
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- 02/12
文章の質感は小説と同じなのに、時々まとまりや繋がりがないのが逆にリラックスさせてくれる。梨木さんの文章は冬の田舎の囲炉裏みたいだなとおもいました。懐かしくて暖かいのに泣きそうなほど寂しい。
読書中、妻でもなく母親でもない、一人の人間としての自分と対峙する瞬間を何度か得た。そして「日常を深く生き抜く」という事に対する矜持。こういう覚醒は久しぶりだ。
初めてエッセイと云うものを読んだ。でも、梨木さんのエッセイは良い意味でエッセイではなくて、とても読みやすかった。英国、カナダ、アメリカ、私の行ってみたい国ばかりだ。自閉症、アスペルガーについて、あんなにやわらかく語れるのは梨木さんだけだ。表現がすごく素敵。
春になったら苺を摘みにの
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