薬指の標本 (新潮文庫)
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薬指の標本の感想・レビュー(1618)
中編が二編。何れも、静寂がある。この囁きは、耳を澄ましていないと気付かない。そして、主題となる標本室も、小部屋も、現実感が稀薄で、うっすらと消えてしまいそうだ。というより、物語全体にそんな雰囲気がある。霞のように見える人や、出来事。暫しそれを見つめる。
神秘的な雰囲気を感じる二篇の小説だけれど、どちらも読後感はすっきりしていた。過去・愛する人に執着する「薬指の標本」の主人公と、過去・愛した人から解放されたいと願う「六角形の小部屋」の主人公。正反対とも言える彼女たちの願いは、最終的にどちらも達成される。薬指の標本を依頼することで過去を永遠に保存すると同時に愛する弟子丸氏のものになるという形と、語り小部屋とともに過去(=背中の痛み?)を持ち去ってもらうという形で。気持ちよく読み終わることができたのは、主人公の願いが叶えられたという結末によるのだと思う。
表題作と「六角形の小部屋」の二篇を収録。「薬指の標本」の弟子丸氏の執着心に怖さを感じた。作者の文体もあってそれほどくどい描写はないけど、その分想像力をかきたてられる。そんな彼を「わたし」は受け入れるけど、読んでいる方は靴磨きのおじいさんと同様、「すぐ逃げろ」って思ってしまう(~_~;)「六角形の小部屋」と「薬指の標本」は独立した作品のように見えるけど、記憶をモチーフにつながっている気がした。「標本室」は思い出を固定し、「語り小部屋」は思い出を風化するってな感じで。
街の片隅にひっそりと存在する「標本室」と「六角形の小部屋」に魅入られた二人の女性の物語。|読み始めた途端に幻想的な世界が広がる。現実世界と地続きなようで、どこにも存在しない虚構の世界と意識せずにはいられない。これぞ小説という感じ。あるモノが粉々になるという共通の体験を経た二人は、一方はそれを集め直す過程で気持ちが固まり、もう一方は散り散りになった気持ちをそのまま放置する。形あるものに残して新たに踏み出す、形ないものに発散させて立ち止まる、「固まる=安定」と「散らばる=不安定」で対になった二篇と解釈したい。
次に村上春樹を読むときは思いっきりあら探しをしてやろうと思っているときに、『薬指の標本』のあり得ない話し言葉はつらかった(特に靴みがきの親父)。あと文鳥の話とか。まぁでもむやみに寝たりしないからよかったけど…。浴場のタイルの上をヒールで歩く、というところには引っかかりも感じたけど、清潔さや人物造形が理想的に整ったところが今はしんどい。ていうか、『六角形の小部屋』もそうやけど、ンな商売あるかバカヤロー、とどうしても言いたくなるのでした。
濃い緑の木々に囲まれた町並み。古いひっそりとした建物。不思議な職業。また、小川サンの静謐な世界に入りこんだ。彼女の作品は余韻が残るなぁ。
小川さんの二作目。静謐さを漂わせる文章や神秘的な恋愛等が、深い森の中に彷徨っている感覚がありました。二編とも読んでいて思い浮かんだのは、『過去』からの解放でした。薬指~は、標本して貰う事で「あれはまだこの世に(傍に)ある、だから安心だ」失くすよりは『ある』という認識が欲しくて、皆標本したがっているのかなと。六角~は、気持ちの標本と云うべきでしょうか。言葉にして吐き出してしまえば形には残りませんが、ずっと溜めていた何かは少なからず軽くなっているのでは。人間は何かにいつも縛られる、そういう物語にも思えました。
タイトルが気になって購入。言葉一つ一つが綺麗で上品な表現で、読んでて心が落ち着いた。小川洋子さんが好きになったキッカケをつくってくれた本。
思い出の品を標本にして封じ込める標本技師、語り小部屋の番人として旅する親子に偶然出会った女性二人を描いた全二編。どちらもとても綺麗な文章で静謐な雰囲気のするお話でした。色々な事が明らかにされないまま終わるので、恋愛を描いた部分よりも、ミステリアスな設定や展開の方が印象に残る作品でした。
(知人の紹介)どちらも不思議な感覚。恋愛を”標本”と”小部屋”(カタリコベヤ)で表現している感じ。前者は一途に、後者は迷い・悩み・・・(?)。印象に残るのは後者。自分の心を全て吐露したい、と感じることはなきにもあらず。問題はどこまで素直になれるか。強いて言うのなら私の場合座禅がそういう”場所”に近いかもしれない。どちらの作品も神秘的な印象。
小川洋子さんの物語は、いつも密やかな空気に満ちている。上質な言葉選び、想像すると限りなく引かれる風景。浴室のシーンが特に素晴らしい。
うーん、エロス&フェティッシュ。なのにいやらしくならない、むしろ上品なのではあるまいか。しんとした心の小部屋をそっと開けて見つめるような気持ちになった。この世界観は真似できないけど憧れる。
この人の本ははじめて読んだ。ひっそりとした怖さがいいとおもう。薄暗い、ホコリっぽい、色っぽい。余韻があとをひくタイプの本。
初の小川作品。以前より他の作品とは別格にタイトルと表紙の不思議な魅力に惹かれていたが読んでよかった。まあなんと丁寧で綺麗な文章なんだろう!フランスで映画化されたり他の作品共々海外評価が高いらしいが、そんな事とは関係なく読み始めるとあれ?村上春樹みたい?!とも思ったが読み進めると別の世界観でした。標本というのが素敵ですね。やっぱり女性的な繊細さなのかも。他の作品も読みたくなったけど何にしようか・・・・。
怖くはない。夏の終わりの日、冷たい指先を首筋に当てられたような心地好い冷たさ。平たいきしめんを噛み締めている感覚。汁の中に浸したきしめんを咀嚼すればするほど汁が溶け、めんの無味をいつまでも噛み締める。この先にある空間に期待して
小川洋子さんは「博士の愛した数式」しか読んだことがなかったので、あれとはタッチが違う感じで新鮮でした。 清々しさと少しの不気味さが混在するような、どこか現実味の無い不思議な世界観。といった印象です。
再読。小川洋子作品の中でも特に好きな作品集。しかし、この小説の「恋愛の痛みと恍惚を描く2編」ってなんだか違う気がするんだけど…どうでしょうか。
表題作の「薬指の標本」が好きです。静謐で不思議な世界を覗いてしまったような読後感でした。本当にフランス映画のよう。こういう世界観大好きです。
読書メーター登録記念に購入。保たれた静かなトーン、弔いに似た標本化という行為、和文タイプライター、ほのかな狂気の滲む愛…何より一つひとつの言葉選びが美しくて溜息が出る。薄い本だが小川洋子らしさが詰まっており、彼女の本を一つ勧めるのにもよさそう。
サイダー製造工場で機械に左手の薬指を挟まれて指先の肉片を失った「わたし」は工場を辞め、標本技術士の弟子丸に雇われて標本室で働くようになる…「薬指の標本」/スポーツクラブの更衣室で出会った女性ミドリが何故か気になる「わたし」は、街で見かけたミドリを尾行する…「六角形の小部屋」
あらまあ。小川さん初心者なので、こういうお話も書かれるのかと、ちょっとびっくりしました。世にも奇妙な物語ぽい、なんて俗な表現ですいませんが、そう思いまして。
実態が無い世界の中に放り込まれた感じでした。それでも不快じゃない。文章が綺麗で心地よかったのかもしれません。タイトル買いでしたが、後悔はしてません。
支配されるというのは美しく官能的で、喜びに溢れている。その歪んだエロチックな世界が、何とも清潔に整えられて、驚いた。新品のガーゼのような強い匂いのする清潔な言葉—と思った。『私は正当な理由がないということにとても苦しんだのです』語り小部屋での語りには、思わず本の右はじに折り目をつけてしまった。
淡く儚く美しい。消えるように無くなっていく、悲しいような寂しいような恋しいような。サイダー、標本、靴…繋がりのないものが不思議と混ざり合って夢のような空間をつくってる。うっとりしてしまう。『六角形の小部屋』も好き。六角形の旅する語り小部屋。あったら行ってみたいなぁ。『薬指の標本』は映画にもなっているようなので観てみたいと思います。
ヨーロッパでは、左手の薬指の血管は心臓に繋がっているという言い伝えがあるから結婚指輪を左薬指につけると言う。「薬指の標本」を読んだ時、思い出した言い伝え。標本にした左手の薬指も心臓に繋がっているのかもしれない。
誰もが心のどこかに持っているのかもしれないけれど、言葉にはなかなかしづらいような屈折や揺れみたいな感情をすっと掬いとって文章にしてある感じ。弟子丸の靴は怖い。小川さんの作品は、読み手を一緒にビーカーの中や箱の中に誘い込むような力がありますね。
薬指の標本の
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感想・レビュー:373件














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