壁 (新潮文庫)
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壁の感想・レビュー(997)
安部公房の本を3冊読んでみたけれど、感じることはある種の寓話としての小説というニュアンスが強いんですね。自分なりに、小説の言わんとしていることを推測や憶測で補完していかないとわけがわからない。私としては、「壁」というのは日常的な不安だとか、凝り固まった自分自身の思考だとか、そういったものを暗示しているのかな、と。情景描写からは、シュルレアリスムからの影響を感じました。まさに時代の寵児、芥川賞受賞作として歓迎されるのもわかる気がします。
「S・カルマ氏の犯罪」、「バベルの塔の狸」、その他いくつかの短編まとめてテーマは「壁」ということなのかどうなのか不条理モノとしても読めるしなにがしかのメタファーも読み取れる「壁」。「壁」とは何か、考えると日が暮れそうなのでいつか思い出した時に考えてみることにする。
台風で家の壁に穴が空いたらどうする?ひとまず大急処置で穴を塞ぐ?これがもし心の壁に空いた穴だったら?しっかり塞げられる?無理だと諦めて、外に出て安心できそうな壁を見つけてその中に入る?それとも、自分で新しい壁を作って籠る?失敗したら無防備な心はボロボロ。無関心になるか、発狂するか・・・。まれに、分裂してしまう人もいて「彼の中の彼」が出来上がるかもしれない。
夢に経験するような目くるめく流転を嫌というほど味あわせる本。 それと言葉遊びのナンセンス。特にカルマ氏の裁判でのように形式ばったタームで語られる無意味な内容や、人物ごとに重ならない世界観が台詞を通じて奇妙に交差する過程は大好物。あれね、アリスみたいな。「とらぬ狸」なんてのも「ウミガメモドキ」に似た発想だよね。 でも胸に砂を流し込まれるような読了感。息が苦しい。
短編はどれもおもしろかった。星新一先生のショートショートに通ずるものを感じた。第一部と第二部は、当時の文壇ではこういった不条理モノがもてはやされていたのが伝わってくる。壁は、併読しているエンデのはてしない物語と重なる表現があっておもしろかった。
独特かつ奇異な発想、物語であるにも関わらず、引き込んでくる。読みやすいのは文章が非常に上手いからだろう。やはり安部公房ワールドは凄い。魔法のチョークが一番好きだったかな。
安部公房は異様な光景を、さも当たり前のことのようにさらりと書いてしまう。自身の曠野の中に壁を持つ人、壁の中に呑み込まれる人、壁から世界をつくる人。など。鉱物の怪しい煌めきのように、その光景が目に焼き付くようで、また読まないとなあ、と思わせる。私の中では依存性の高い作品という位置付け。
思ったほどびっくりするような発想はなかったが、それはもう出版されてから四十年くらいは経っているせいだろう。読みやすくて、しかし、とてもカオスな内容だった。
安部公房ワールド全開だけど、考えていたより読みやすかった。 今まで安部公房の文章は、色がなくて文字と古い紙と白黒の写真のようなイメージを持っていて、けどこの本は色彩があったように感じました。ちょうど、シュールレアリスムの絵画を見ているような感じ。
シュールレアリスムの世界を軸に話が展開する。つまり話は展開しない。ただ移り行くだけである。作者の想像力の横断の軌跡として成立した作品。滑稽で突飛。しかし不思議とすらすら読めるのは、第二部まで文体がですます調であること、また言葉自体はさほど難しくないことが理由に挙げられると思う。最後の人肉ソーセージの話が気に入った。
やっと読めた!私の中でシュールレアリスム=安倍公房って図式が確立した!面白いか否か、と問われたらちょっと答えに困ります。なんだろう…理系要素と文学的文章と哲学云々…絶対的な頭の良さ。いや常人のキャパを越えている!まさに超現実!短編は割と読みやすかったかな。そして、やはりお主、砂漠好きだったのだな…。挿絵も良い味出してる。
東大医学部で大江健三郎とお友達な超人の考えなんて分かるかと言うスタンスで読んだが、不気味に引き込まれた。言葉にできないが良い小説だと分かる、という次元ではない。善し悪しすら分からないままの、無言の依存性がある。シュルレアリスムの本質が無意識に有る事を考えればその読み方でいいのかもしれないが、とにかく私はこの人の小説をもっと読む必要がある。
ゴーゴリの「鼻」を10倍わけわからなくした感じ。名前を失うことで社会的な存在権を失い、マネキンに愛情を持つようになる行はおもしろいけど、あまりに不条理な展開が連続するので、ついていけない感があった。
「S・カルマ氏の犯罪」は、なんかカフカっぽいなーとか思いながら(作者はカフカに影響を受けたりもしたらしいですが…)、寓意はよくわかんないのでシュールな物語として楽しませていただいた。裁判の場面なんか、不条理なユーモアがあって、いい。 「バベルの塔の狸」も想像の斜め上をいく展開で、安部公房の想像力はすげえなあという漢字。 「赤い繭」は、佐藤哲也の短編を思い出した。異様な光景を、わりと淡々と描いているあたりが似ている気がする。
ある日自分の名前を突然喪失してしまった男は、空っぽになってしまった胸が動物を吸い込みそうになってしまったとのことで現行犯逮捕され、裁判にかけられる。今まで代表作「砂の女」くらいしか読んだことがなかったことを後悔してしまうくらい面白かった。論理を論理で裏切り、それを常識からかけ離れたものとさせていく。わからないんだが、そのわからなさのリズムが私には心地よく感じられる。好き嫌いが綺麗にわかれそうな気はするけれど。なるほど、シュルレアリスト。「砂の女」ももう一度読み返してみよう。
読みながら色んな作品が頭をよぎった。『銀河鉄道の夜』や『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』、そして『審判』。読みはじめは、カフカのようだなと感じていたが、読み進めていくうちにカフカにはない、シュールな面白さの虜になっていき、それがクセになってくる。『バベルの塔の狸』が一番面白かったです。
始まりは全て一つのヘンテコであるが、物語はそのヘンテコを中心に極めて論理的合理的に進んでいくため、読者は非現実的でありながらどこか現実的であるという実にシュールな世界に導かれることになる。至高のシュールレアリズム。
自分で自分を認識するから他者というものが存在してくるのか、他者が認識してくれるから自分が存在できるのか……この作者の本はいつも読んでいるうちにぐにぐにと思考がねじれて迷い、「つまり、こういうことなのかなあ」とぼんやり自己解釈に結びつきかけたところで、話が終わってしまう。それがまた癖になるのだが(笑)。壁とは自分を守るものなのか、それとも自分を解放するものなのか どちらにしても、「自分」というものは何と奇妙で不確かで、面白いものだろうと思う。
どろどろ溶ける《液体人間》たちは物理を無視して大洪水を巻きおこし、人間の生きる源・水さえ変質させてしまう。起こっているできごとをそのまま理解してはいけない。
論理的で形而上学的な創造の連鎖。発想の切り口がとってもお洒落。お笑い芸人の鳥居みゆきさんが以前、雑誌『pen』でお勧めの本に挙げていたが、たしかに彼女のネタは影響を受けているのだと思わせるようなところがある。
高校時代に読んだが忘れられず購入。不思議の国のアリスのように、ファンタジーのような世界のなかで妙なリアリティと対面する不思議な感覚。それでいて考えさせられる。もっと彼の作品を読みたい。
ひたすらシュールで不可解なことが起こり続ける。 そしてその不条理の対して不条理な説明がなされるという(笑) 内容的にはかなり重い出来事が起こっているのだが、 主人公たちがかなり楽観的なために割りと軽く読めた。
壁の
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