麦ふみクーツェ (新潮文庫)
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麦ふみクーツェの感想・レビュー(479)
やさしい言葉で語られるのは、この上ないさびしさと切なさ。序盤は長く感じたが主人公が成長してからは読みやすい。ちょうちょのおじさん好き。用務員さんのマーチとねずみ男の末路は胸が締め付けられ、へんてこさに誇り〜では、そうだよねって納得。技をみがけばひとりでもへんてこのままでも生きていける。それはきっと真理。麦ふみの音の意味、クーツェという名前の秘密、オムレツの、あめ玉の、みどり色にこめられた秘密それぞれが心に染みた。読み終わったあとは、あたたかい気分になりました。文体はとくべつ好きではないけれど、いい物語。
いしいしんじの作品には、常識人なんて出てこない。けれど、誰もがとても強く、何も恥じず、自分の人生を生きている。穏やかな作風なのに、酷いことも、悲しいことも、辛いことも起きる。それでも揺らがない強さが好きだ。最後に明かされる過去の物語に温かな気持ちになったとき、とん、たたん、とん、と麦をふむ音楽が聴こえた。
解説の冒頭で栗田有起さんが「子どもの頃にこの本と出会いたかった」と書いている。それにうなずけるくらいに簡単な言葉を使って、音楽について、歴史について、人生についての物語があった。僕は25歳の誕生日プレゼントにこの本を贈ってくれた女性に感謝するくらいしかできないが、おじいさんの言葉は今も僕の頭に焼き付いてはなれない。この世で打楽器でないものなどない。
読みやすく、惹かれる文章だった。好みだった。一部と二部に分かれているのもよかった。両方面白かった。児童書にもできそうだ、と思った。個人的に心に残った部分は、「へんてこは、技を持たなくてはいけない。」というところでした。
誰かの秘密、過去の出来事、愛しい人の人生そういったものを紐解いていくのは、楽しいけれど事実を知る勇気も必要。それでも、進み続けるねこが好き。 どんなに小さな出来事も明日へと繋がり、続いていく。
作中でいうところの「へんてこ」でも、生きるという事は喜びで満ち溢れ触れているのだなあと感じた。ラストで号泣。悲しくてでも不思議と読後感が爽やかな作品。なんか昔見た映画「ホテル・ニューハンプシャー」と読後感が似てる。
なんとも不思議な雰囲気の作品。一応ファンタジーかな?幻想的で童話風の文章で、現実感が薄く序盤はいまいち入り込めなくて苦手なタイプかなと思いましたが、段々引き込まれていってクライマックスのところではちょっと泣きそうになりました。何か印象に残る良作です。
本のタイトルに興味を持って購入。読み始めてすぐに、あれ?子どものためのファンタジー本? 読み進めようかどうしようかちょっと迷いました。それでもとにかく読んで見ようと読み進めるうちに独特の世界観に少しずつ引き込まれていき、ニヤついたり涙ぐんだりで、後半以降はあっ!というまに読んでしまいました!! いい本だなーと思いました。
物語、いいこともわるいことも起こる。悲喜劇という言葉がとても似合う。チャップリンの名言が思い出された、「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇。」。ねこの人生にはこれから先にもひどいことが起こるだろう。でも、そういうことが生きていくということなのだろう。
"へんてこってだいたい、まっさきにひどいめにあう" 体や顔がどうとかでなく人間誰もが誰かとは違う。それがあからさまなほど生きづらい。だけど一番後ろでぼーっと突っ立ってるのはこの世で一番「ばか」なこと。何もかもが心に痛い。良い本です。
人生のリズム。心の中で響くよ。「とん、たたん、とん」。聞こえる音聞こえない音。見えるもの見えないもの。人生は配られたカードでやっていくしかないのかもしれないが、そのなかでいかに生き生きとするかが重要なのだということを思い出させてくれる本です。そうそう、いつかいいことあるさ。
トン、タタン、のリヅムが幾度読んでも私の頭を心地よくたたいてくれる。やさしさは、痛みを知らなければ気づけない。うつくしさは、汚れを知らなければ感じられない。いしいしんじはその事をよくこころえている物語書きだ。
「見えるもの」も「見えないもの」も、「聴こえるもの」も「聴こえないもの」も、「生」と「死」さえも、自然に入ってくる。音楽を奏でるように描かれている。
現代日本作家にはあまり興味がなかったのだけど,素直に読めば面白い.ただ,素直に読めないから,現代の日本作家を読むのに抵抗があるんだよなあ.
わたし、この人の世界観は好きな気配がするのに、どうにも入り込めないのです。なんでかなー。心が汚れすぎているのかなあ。なんとなく小川洋子を連想させる。舞台の国籍が曖昧なところとか、素数とか、少年の特殊な体や能力とかね。
とん、たたん、とん、という、地平線の彼方まで麦ふみするクーツェの足音が、ずっとずっと身体の中に鳴りつづける。いしいさんの本はどれも、読んでいるとたくさんの感情を呼び起こされるのに、感想を書こうとしても、今ひとつうまい言葉がみつからない。子どものころの「感じたままの感情」、喜怒哀楽にふりわけ名前をつける前にあった原始的な感情を思い出すのかもしれない。そんな物語を「言葉」で描いているいしいさんは本当に稀有な作家だと思う。初読からすでに数年が経ったけど、これからも長いつきあいになること必至の1冊です。
登場人物の誰もが、我々が普段呼び合う「名前」を与えられていない(唯一それらしき名前がクーツェだが実はそれも…)そのことによって読む側の想像力の密度がより高められるのかもしれない。いしいしんじが奏でる生命賛歌はまるで黄金色の麦穂のよう。まさしく現代の神話と呼ぶにふさわしい作品。
読み心地が良かった。寓話的な不思議な世界観もへんてこな登場人物たちもすごく魅力的。耳をすませば誰にでもクーツェの音が聞こえてくるのかもしれない。
リズムだよ、音楽の根っこはリズムだよ。おじいちゃんのこのくだりの台詞は目から鱗やった。バンドで装飾過多なことをしてしまいがちなのをこれで気付かせてくれた。物語としては比較的柔らかい雰囲気で流れていくが、表現の方法が結構残酷に感じることもあった。文章と表現のバランスが違ってていいなと。ねこといいみどり色といい、あえて名前がないところもいいし、クーツェの由来もらしくていいなと思った。
とん、たたん、とん。読んでいる間、確かに聞こえた混じりけなしの無垢の音。土曜の午前中、聞こえてくるのは洗濯機が身震いする音、冷蔵庫が唸る音、遠くで灯油を売る音、階下のテレビの音、街道の排気音、などなど。
ちょっと変わってて、異端で、へんてこで普通とはちょっと違う。…でも現実的でほっこりしててこれもアリなんだな、と思う不思議な本。個人的にまだ消化不良かな。
私はこどものころから音楽が好きだったのに、大人になって全く音楽をする生活とはかけ離れた生活をしているので、なんだかとても音楽で合奏がしたい気持ちになりました。
麦ふみの足音には、どんな意味があるのだろう?繰り返される音の波、「とん、たたん、とん」。時の音かと思ったけれど、そういうことでもないらしい。▼本当の楽しさは参加して初めて判る。それは歌でも演奏でも同じ。ただ、プロの場合は参加するだけという訳にはいかない。持って生まれた才能とそれを活かす場。その2つを揃えるために様々な出会いがあり、繰り返しそのことが描かれている。段々と原点へ遡っていく旅の側面も持った物語。
少し村上春樹さんと似ている感じがしたけど、世界観はいしいしんじさんだけのものだと思う。読んでてわくわくしたし、心が温かくもなった。もっといしいしんじさんの本読みたいな。
お気に入りさんにススメられて読んだ一冊。いしいしんじさんの作品は、大事なことを教えてくれる。そして音を表す言葉が素晴らしい。「とん、たたん、とん」麦ふみクーツェの足音、「にゃあ」とねこ、みどり色の「きゅるきゅる!」。どれも聴いたことのあるような、不思議な音たち。書き手のいしいさんと読み手の私の「合奏」はとっても楽しい。「ひとははじめからきこえる音でやっていくしかない。きこえるべきものは、そのときがくればちゃんと耳にとどく」覚えておきたい言葉が増えた。
結局クーツェって何なんだろう。おじいちゃんからお父さん、そして終にはねこの体へと受け継がれた、「へんてこでも誇りを持って生きていく」ための命のリズム?本当には分からないけど、ただ一つだけ言えることはこの本それ自体が一篇の音楽だということ。一見謎なクーツェの言葉、雑多なスクラップ記事の一つ一つも、読み終われば全てが心地よい調和の元に結び合わされていたことが分かる。今はまだ殴り合いの外でぼんやりしているような自分も、いつかはこんな美しい合奏の担い手になって、生きることを心の底から祝福してみたい。
人生をありのままに表現した作品。いしいさんの言葉だからこそ、厳しいことも嬉しいことも色んなことがダイレクトに心に響いてくる。何を迷ってたんだろう、難しく考えることはなかった、そう思わせてくれた。
なかなか一言でこの小説を表現できない。童話のような語り口と、少し風変わりな人々。巻き起こる変てこな悲劇の数々にいつしか引き込まれていた。子どもの頃に読んでみたかった気もするし、この歳にならないと分からない話だった気もする。この世に打楽器でないものはない。
不思議で変でキレイで哀しくて、ちょっと懐かしさを感じる童話という雰囲気の物語です。 変わってて、実は物語の入り口でちょっと戸惑いました。 でも1章の終わる頃には物語に取り込まれていたと思います。 童話と言ったけれど楽しいことよりも、哀しいことが多いのかもしれません。 でも哀しいより、もっと感じるのはなんとも言えない愛おしさなのです。 ちょっと変わった人達、ヘンな出来事、でもそのヘンなところがとっても愛おしく感じるのです。 もしかしたらこれは生きていくというコトと同じなのかも。しれません。
いしいしんじさんの作品は、詳細に表現されないけれど孤独や絶望みたいな虚無感が根底に流れていて、でも、最後はそこから希望や未来を残して温かい気持ちで読み終えることができる。つぶれた苗も畑の肥料になる。いい麦も悪い麦もないというセリフにちょっとジンときました。へんてこだからこそ孤独で悲しくて、浮いてしまう存在たけど、へんてこを武器にして自分らしさを取り戻していく面々に勇気づけられます。
人と人とが出会う確率は何万分の1でも何百万分の1でもあるけど、みんな出会うべくして出会った。そんな当たり前の有り難さに気づいた。「ねこ」の見聞きしたものが頭の中で絵画のように広がって、どの場面もどこか懐かしい。人生の切なさとか喜びとか全部人と関わるからこそ感じられて、それこそ音楽の合奏みたいなものなのかなと思った。
麦ふみクーツェの
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