天平の甍 (新潮文庫)
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天平の甍の感想・レビュー(219)
日本に戒律を試行するために伝戒の師を求めて入唐を決意した普照と栄叡の、帰国するまでの歴史小説。鑑真が来日するまでに20年もの歳月がかかり、海を渡ることがこれほどまでに過酷なものなのかということを、この本で思い知らされた。
井上靖の小説を読むと、歴史は非情でどんなにそれが今に影響を与えたことだとしても、ただの歴史でしかないということを見せつけられる気がする
毎年夏に必ず読み返す。毎年忘れているので毎回新鮮。鑑真が「んじゃ俺行くわ」と決意するくだり、そして唐から届く甍のところでは何回読んでもそのたび感動。ある学僧の果てなき放浪に思いをはせる。彼の魂は今も広大な真理探究の迷宮をさ迷っているのではと。
それぞれの人生を生きる留学僧たち、ということで青春小説じみた群像劇に感じる。国のために何をする・しないという各人の選択は胸に鮮やかに響き、今の時代に読まれてもいいのでは、と思う。
寝る前に読んだら、その晩の夢が「遣唐使として唐に渡る途中に船酔いになって塾の先生が酔い止めをくれた夢」でした。
それほど文章にエネルギーがありました。
唐招提寺訪問を機に読んだが主人公は鑑真ではなく、5人の日本からの遣唐使。一現代人として、無事に目的地に辿り着くか、着けても学んだ知識・書物と共に帰国出来るか分からぬ当時の留学を想像し、主人公たちも恐怖の旅路・苦学の中で自らの行為が無意義かもしれぬという葛藤と闘ったと思量。事実、彼らのうちに阿倍仲麻呂が如く後世に名を馳せた者は皆無。現代でも大都会・大企業に身を置くとかかる無常観は迫るだろう。しかし人類の歴史は結局、無名の人々がそれが意義あるものかと心中、葛藤した小さな行為の積み重ねに立脚していると考えた次第
登場人物に共通するのはそれぞれの信念。 圧倒的な困難の中でそれを喪失したり、安寧を選んでしまうことはあるけれど、そこにはたしかにそれぞれの覚悟に基づいた信念があった。 話を自分に矮小化することが許されるなら、人生における選択を覚悟をもって選んでいきたいと思った。
歴史では言葉でしか習わない遣唐使。そして、鑑真。いろんな人に歴史があり、様々な思いがあることをあらためて感じた。一言で語られる鑑真が来たことも、実は大変だったんだなー。今ではコピーですんでしまうことも、当時は人生をかけて行うことだったんだなーと、しみじみ。
史実と創作の見事な融合。 鑑真渡日をテーマに、末期の唐に命懸けで渡った四人の僧の生き様を描く。 無常感漂うラストもよい。 日本史の副読本としてもオススメ。
仕事とかそんなちっぽけなものでなく、生きる目的とか魂、執念、何があってもぶれない強い信念。自身の生き方の甘さを感じた。鑑真だけでなく登場人物それぞれの心境やまたその変化の描写が大変面白かった。
たくさん出てくる僧侶たちは名前の印象が似ていて、なかなか読みづらかったけど、淡々とした語り口がかえって歴史ロマンを感じさせる。私たち読む側からは、もう何百年前のことで結果も分かっていることだけど物語の当事者にはそんなことは関係ない、という切ない感じが歴史ロマンなんだと思う。鑑真が来ないと日本の歴史は変わっていたんだなぁ。唐招提寺って名前、あんまり深く考えたことなかったけど、そのまんまなんだ!
鑑真を日本につれてきた留学僧たちの話。留学といっても、当時のソレはときに数十年にも及ぶ異郷での生活を強いられ、往路復路も命がけ、という壮絶なもの。人生の大半を写経のみに費やした僧、業行を登場させることでその過酷さを強調し、一種のハードボイルド小説として本作を書きあげた作者の着眼はじつに鋭い。
★★★★★ 久々に読んだ純文学。圧倒されました。5度も日本への渡航が失敗に終わった上に盲目になった鑑真和上。それでも日本に行くと気持ちに全の揺るぎがないというのは、何という精神の強さ、深さだろう。。時を超えて感動。歴史の教科書ではさらっと触れる位であろう史実に、こんなにも命を掛けたストーリーがあったとは、、。井上靖の筆力、素晴らしすぎる。
短めの長編ながら、密度が濃くて読み応えがありました。素っ気ない記述なのに、不思議と感情を揺さぶられる筆致はやっぱりすごい。井上靖はもっと読もう。
遣唐使として、日本の仏教界を導くべき法師を招くという使命を負った普照と栄叡、それを取りまく(?)遣唐僧達の物語。 業行に感情輸入をしすぎたせいでラストが唯でさえ歴史的羅列の様な形で終わっているので、味気なく感じてしまった。 でも話の半ばあたりは面白いというか、読まされる感じ。 しろばんばより読みやすい。 新潮230P
小説としてもっと劇的に描くことも可能だったはずだが、井上氏はあえて恬淡とした筆致で描いている。そこに井上氏のどのような意図があるのかは計り知れないが、そのような描き方をすることでそれぞれの留学僧の生き方について読者自身が自らの視点で思いを馳せることが出来るのではないかと思う。そして海の藻屑と消えた数々の無名の留学生を想うとき、歴史とは「才能の屍の積み重ね」なのだと改めて想う。
想像を絶する過酷な運命。今の時代とは違い、海を渡るのは命懸けであり、一度国を出たら簡単には帰れない。人生を賭けたそれぞれの思いが強くまた切ない。
家で読。淡々と、人名や仏典名など多くの情報が織り交ぜられた文章。鑑真の東征が阻まれるたびに、引き込まれて歯軋り。また時を置いて読み返したいと思う。
栄叡が亡くなるところ、涙出た。何度も日本へ出発する度、今度こそ!とドキドキした。普照が無事に日本に戻れて本当によかった。唐招提寺にもう一度行って、鑑真の伝えてくれたものを感じたい。
鑑真和上が主人公かと思いきや、若きエリートである留学僧の視点で、流転する人生を描く青春小説だった。普照、栄叡、玄朗、戒融。それぞれの志を貫き、極限に挑み、木の葉のように翻弄される運命。なかでも、異彩を放つ業行。彼の人生を賭して写本した経典の山。業行は、母国を目前にして、解き放たれたように語りだす。『「私の写したあの経典は日本の土を踏むと、自分で歩き出しますよ。・・・・・・」』
初めてのチュウならぬ初めての井上靖。淡々とした文章なのに熱を感じる不思議。学問以外何事にも興味がないようであった主人公が、周りの人々の熱に浮かされ意識せずに彼らの行動をなぞって行動するようになっていく描写が面白い。
天平の甍の
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