破戒 (新潮文庫)
破戒を追加
破戒の感想・レビュー(420)
これは必ず目を通すべき本だと思う。今もひたひたと続いているということを。
原文一致体を完成させた自然主義文学の名作ということで読んだ。柄谷行人だったかが確か告白という形式を批判していた気がするが、この小説は告白することによって真の自己を解放する、というような典型的な構成ではあったように思う。なかなか感動的な話ではあるが、なんというか、告白しちゃう近代的自我サイコー、みたいなものを感じてしまった。とはいえ、部落問題という難しい問題を扱うには原文一致体による近代的自我を示さなければならなかったということか。
差別される自分可哀想、告白して謝っちゃう自分素敵、と自己陶酔しまくる丑松。若い。青春だ。読む方が照れる。差別の克服など丑松/藤村の眼中になく、自分の心が一番大事。そこがいいんだよな。
えたであることを隠す教師が、いつバレるかもしれないと恐れながらも、差別を恐れてなかなか誰にも打ち明けられず苦悩する話。身分を自ら明かしたことで、今まで諦めていた道が次々と開けたことから、どんなに過酷でも自分の信念を貫くことの大切さを表わしている。___ 尊敬する連太郎を貶されても、無関係を装ってしまいひどく後悔する所は思わず胸が詰まった。同じ人間に対して、下等種族のくせに出しゃばるな、といったことが平然と言われる時代があったのかと思うとゾッとした。
あまりに読みやすくて驚いた。被差別民がそれ以外の人たちと平等であり且つ平等でないという状況の活写が第一にとても興味深い。そして自然主義のはしりと言われる緻密な内面描写に唸らされる。罪と罰の影響が強いそうだが、設定の完成度にしても人間描写にしても本家のほうが上かなとは感じた。ただ藤村の小説としては初期のものにあたるようなので、技術的なものはこの後身に付いてくるのかもしれない。順に読んでみたい。
面白い。丑松の葛藤、特に猪子先生に自らの秘密を打ち明けるか否かの葛藤の場面は読んでるほうまでもやもやした。部落差別にかかわらず、社会における様々なマイノリティに関しても言えることなんだろう。教室での丑松の告白は、何か悟ったような感じさ和え抱いた。まあとにかく、すばらしい作品でした。
差別という問題が一筋縄でいかない事を痛感した。島崎藤村という人がこの1冊に魂込めて作り上げたなーと思う。いつの時代も問題作と呼ばれる作品には考えさせる何か強烈な力を持っている。破戒を読んでから藤村に目覚め、神保町の古本屋で「新生」をGETした。吹聴され、全てを知ってもそれでも後を付いてくると言ったあの女性の存在が本当に救いだ。
課題をきっかけにようやく読むことができた。差別問題研究のために読まれる事もあるようだが、それには文学的すぎると思う。最終的に、丑松はなぜ破戒したのか。丑松がいなくなった後の学校の様子を想像してみる。たとえば仙太は、その後も生徒たちから酷い差別を受け続けただろうか。丑松の破戒は権力者の意識を変えることはできなかったし、それは彼自身の意図するところでもなかっただろう。しかし、彼の破戒は彼自身を解放しただけでなく、確かに生徒の心を大きく動かしたのである。
いい作品だなー。被差別民に限った話ではない、いろんな理由で世間とずれた生き方をする人、嘘を抱えて生きていると感じる人には我がことのように思えるだろう。エンディングはともかく、腹が据わり開き直った後の解放感には真実味が感じられる。 そうそう、エンディングですが、理想の新天地へ、というのはゲーテやドストエフスキーも用いた手法でこの作品だけの特徴とは言えません。
社会的被差別階級に対する理解が前提として必要な小説。猪子は思想的導師としてより、丑松にとってのヒーローとして描かれているが、猪子の姿勢に憧れているのに、自分の覚悟は「闘わずに逃げる」 現代なら普通に猪子の跡を継いで、ヒーロー小説として展開しそうなものだが、そんなことは微塵にも考えない、骨の髄まで被差別階級魂に染まっている丑松、既存概念に囚われているのは差別する側も同様。平等という概念自体が教育の結果であり、教育を受けられる階層を考えれば、階級闘争というのは所詮上から目線であるというアンチテーゼにも取れる。
実は十代の頃一度読んだことがあります。その時は正直入り込めず、いつか再読したいと思いながらこんなにも月日が流れてしまいました。なんだか主人公の丑松が身分を隠さなくてはと追い込まれていく様が、ドストエフスキーの罪と罰のラスコーリニコフのキャラクターと被って見えました。殺人者でもないのに、それ以上に自分を責める姿には苦しくて胸が詰まり、同和問題の根の深さを主人公と共に嘆き、そして遂には悔しくて叫び出しそうになりました。ただ、このラストはハッピーエンドなのかバッドエンドなのか正直私には判断がつきません。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(4)
- 05/28
被差別部落のあり方がよく分かる一冊、と言うとかなり言い過ぎですがいつの時代にも横たわっている社会の暗部を率直に描き出していると思いました。つまり穢多を現在差別されている属性を持つ人々(あえて何とは言いません)に置き換えればすぐにこれは現在の問題に変換されるということです。こういった普遍性は名作に必要不可欠なことで、今後50年100年経った時の「破戒」に対する評価がどうなって行くか、とても興味深いです。
差別意識は根強い。エタであるまえに人間なのか、人間であるまえにエタなのか。綺麗事では済まされない。教室での「破戒」のシーンが印象的。あまりにも現実感のないラストで、なぜか死の前の夢のようなものを連想させた。
歴史的名作と呼ばれている理由として挙げられることに、この社会に根付く深く暗い、差別問題の存在意義について説いてるからであると思う。今の自分のような学生でも読みやすいように書かれているところは見事としか言いようがない。しかしながら、終わり方や最終的な終着点があっけない、とても簡素なものになってしまっている気がする。
自然主義文学の先駆けとなった作品。出版が1906年と古いわりに読みやすい口語文でした。しかし読んでいて少しもっさりした文章のように感じた。詩から出発した人にしては、少し書きすぎてるような。差別問題が前面に出てきているので、どうしても社会小説としての一面を持たざるをえない。差別問題に託して、当時の弱者vs権力者を描いた小説と読めないこともない。僕の小学校の時の担任が、差別問題について話してくれた時に、この「破戒」を基に話してくれた事を今思い出した。ところで、自然主義文学が何かはよく分からなかった。
主人公・瀬川丑松の主観で語られる事が多いから、彼がとても抑圧されて苦しいっていう心情は痛いほど伝わるんだけど、社会の中で被差別者がどういう立場だったかというのは今ひとつ。差別する側からの客観的な視線が弱いから。そういう意味では、ずっと彼に寄り添って読み進めるわけだけど、最後の告白(=破戒)シーンは泣いた。丑松が辛いんだか私が辛いんだかわからないくらいに。別の時代に生まれた生き生きとした彼に会いたかったな、とも思う。ラストは大円団でなく、もっと問題提起して欲しかった。なぜ、これを書いたか作者にも興味ある。
途中までの話の進行を考えると、終わり方があっさりとしてとても残念。お志保とのことももっと描いて欲しかったし、突然、大日向が出てきてテキサス行きの話が持ち上がったのも唐突でとても安易な結末。読み始めの期待感が薄れてしまった。ただ、被差別民に対する当時の人たちの差別意識がどれほど強かったかは分かった。今では想像もつかない。
あたりまえと思うことをあたりまえじゃないって考えてみることは必要 無意識とか常識とか頭で考える部分じゃないところに差別ってあるなと思う
被差別部落問題を取り扱った小説だが、主人公丑松が穢多であることを告白する場面や丑松の屠殺場の人々へのまなざしから彼自身の差別的感情が散見されることからこの小説を差別問題を告発する社会的小説として読むには不十分かなと思った。父を殺した種牛を屠殺する場面は象徴的な父殺しの場面であるが、丑松がやりたかった父殺し=破戒を自らが差別する屠殺場の人たちに代行させるという行為はそれこそが差別を生み出す構造を作り出しているのではないか。また丑松の告白=破戒への物語は現行社会の偏見や伝統的社会制度への対立としても読めるが、
悲しいけれど希望に満ちている。 部落差別というテーマは悲しいけれど、それを自分の一部と受け止め、前向きに生きていこうと思う主人公が潔くてかっこいい
再読。付録(注釈)なしでは読めない程、今では聞き慣れない言葉が多く、私には大変だった。今は存在しない武士や貴族と同じ身分制度とそれに伴う差別の話なので、読後も本当に理解出来ていないとも思う。ただ差別は現在も存在するように思う。犯罪者の家族や障害者や宗教がらみ等々。身近ではないものの、もし身近に差別に苦しむ人が居たとして、どのように接するかで人の真価が問われるのかも知れないなと…。それにしても難しい本だった。
読み始めてすぐに、主人公のキャラが「罪と罰」のロージャとかぶるなー、と思っていたら、恋人の家族設定もほぼ同じ。読み終わってから、「罪と罰」をモチーフにして書かれたことを知って納得。情景描写が素晴らしいので、重くて暗い内容なのに、どんよりせずに読める。
差別というものはこうまでもけだるくさせるものなのか。語れないという苦しさ。そして、告白は死を感じなければできないなんて。大衆に呑まれる中で、それでも丑松を信じる心、これはどこから湧いてくるのだろう。大団円とまではいかない。闇が潜む。よくぞ原文に復活させた。
タイトルに惹かれて読み始めたが「破戒」ってそういう意味のだったのか!何で同じ人間なのに差別されないといけないんだろうという思いが強くなる。。丑松に理解ある人々、素性を知っても彼を慕う生徒にじーんとくる。。丑松が謝ることなんて何もないのに…!と思うとじわじわと苦しくなります。。
いまいち良くわからなかった部落差別について学べました。地域柄か、読んでいてはじめのうちは穢多と聞いてもピンとこなかった。そのぶん読後に感じるものは多かったです。内容はもちろんすばらしいのですが、文章も美しいです。さらに、タイトルも気にいっています!消化不良な最後の展開は(テキサス)途中までまじめに聞いていた外国人でもおかしく思うらしい。もっと若いころに読んでいたかった…。フローベルも読まなければなあ。要再読。
自然主義文学の嚆矢。翌年に書かれた「蒲団」なんかよりは断然面白いと思う。後の自然主義が「告白文学」に追従してしまった感があるのは残念。
★★★☆☆ うーん、なんだろう・・・。当時を生きていた(元)被差別階級の人たちにとって、ラストの丑松の処遇は夢物語のような展開だと思う。藤村が安易なハッピーエンドに逃げてしまったのは何故なのか?この作品の発表当時はこういうテイストの方が訴求効果があったのだろうか?
だいぶ前に父親の本棚から取っていったのをそのままにしていたが、つい先日読み始めると、その扱っているテーマに興味を抱き、さくさくと読み進める事が出来た。差別の問題を扱っている作品だとはついぞ知らず、以前訪れた事のある小諸のことばかり描いている作品だと思っていたが、その人の心の描き方と照らし合わせた風景の描き方など、まるで映像を見ているかのような気持ちになった。近代の生活を知る上でとても有用な本だと思う。
破戒の
%
感想・レビュー:80件




















































