山椒魚 (新潮文庫)
山椒魚を追加
山椒魚の感想・レビュー(322)
井伏鱒二さんの短編12作を収めた短編集。特に心に残ったのは表題の「山椒魚」他「掛持ち」「屋根の上のサワン」などです。「サワン」はサワンがいなくなった後のなんともいえない寂しげな風景描写がたまりません。この風景描写と作品全体を貫く“うっくつした”雰囲気が、井伏さんの魅力なのかも知れません。近いうちに『黒い雨』も読みたいと思います。
頭でっかちで身動きのとれない山椒魚。これは自身。 動かず客観的に世界を見る。狭い窓からではあるが。メダカは民衆。群れている。個の自由はなく、誤った道に突き進む。腹に卵を抱えた小エビは女。不意にやってきてよく笑う。 こんな印象を抱いて読んだ。しかし、傑作というものは読むたびに新たな視点・解釈を得ることが出来るだろう。きっとこの作品もそうに違いない。『夢十夜』などもそうだが、数ページに凝縮された世界のなんと美しいことか。
不用意にも社会から排撃された山椒魚。初めは岩屋(自己の殻)からの脱出を試みる。手立てはなく、しだいに岩屋の中の居心地のよさに気付く。さも自慢げに社会の集団を批難するようになる。しばらくのうちに自分を棚に上げていることに気付くが、やはり抜け出すことは不可能という危機的状況に変わりはない。絶望再び。神頼みをするまでに。共感者を求めて(新たな社会の形成)不意に岩屋に入った蛙を閉じこめる。長い時間が経過したが、蛙の深い歎息を聴き共感者の獲得を確信するも間もなく息を引き取る。それは蛙にとっても同じことであった。
☆☆☆☆久しぶりに読みました。長く読んでいますが、古典は味わいがありますね。山椒魚は論理的ですが、行動が存在しません。観念的な空想はありますが実践的な理論はありません。近代人の孤独と絶望を描くということでは、漱石作品に通じるところもあります。この作品の中の山椒魚のセリフはユーモラスです。わたしは好きです。小魚たちを「なんという不自由千万な奴らであろう」得意げに「くったくしたり物思いに耽ったりするやつは、ばかだよ」「ああ寒いほどひとりぼっちだ」「黒い雨」を読んでいないので、読みたいと思います。
有名な書き出し「山椒魚は悲しんだ。」。確かに引き込まれる。孤独とか絶望とか諦念とか色々あるけど柔らかな雰囲気を感じるのは何故だろう。他の人のレビューでも多いように淡々とした文章が心地よい。近すぎず、遠すぎずな距離感があるからかもしれない。温かい気分になるわけではないけど、癒された短編。
淡々とした筆致。ときどき現れるユーモア。丹念な描写と観察眼。こんな印象を受けた。特に、3番目については今まで読んだ小説の中でも特に優れていたように思えた。とりわけ女性、というか少女に関してはマジで密になっており、主人公の少女に対する視線や接し方もかなりベタベタな気がする。まるでスケベ親父じゃねーか! と思わざるを得ない。井伏鱒二って……。
井上鱒二氏の小説の、今は見られないような風景、淡々とした文章の底にある乾いた感じのユーモアが結構好み。この中では『山椒魚』『朽助のいる谷間』『寒山拾得』『屋根の上のサワン』が好きかな。深く読み下すことが苦手な私だけれども、これらの短編小説のユーモアと哀しみは何となく肌で感じられる。解説でいう作風の底の「頗るがっちりしたもの」を掴み切れはしないものの、指先で掠った気が度々した。もっと氏の作品を色々読んで、「がっちりしたもの」を自分なりの形で掴み取れるようになりたいな。
どの情景をよんでも、深くよみこめるのは文章の美しさがあるからだろう。『黒い雨』を呼んだときも印象に残ったのは、落ち着きがあると思ったこと。過剰ではなく現物的。
それぞれ、おもしろかったです。「屋根の上のサワン」が好きでした。「おそらくかれは、かれの僚友たちの翼にかかえられ、かれの季節向きの旅行に出ていってしまったのでありましょう。」「夜ふけと梅の花」も良かった。「私は自分が村山十吉でなかったことをはっきり了解して、またさっきの白い梅の花や高い塀は、この一年来の妄想の所為であったと納得した。」
山椒魚とカエルの問答を始め、会話にリズムがあってテンポ良く読めるなーと思った。特に方言のキツイ「シグレ島叙景」と、その解説役っぽい「言葉について」は人情味も含め好きだ。他の作品も良いね(朽助と岬の色恋っぽい部分は苦手だが…)。また読み直したい一冊。
山椒魚が読みたいばかりに買った本。改変前と後の違いを知りたいのだがどうやらこれは後の方で。改変前を読みたい…。そして「山椒魚は悲しんだ」って言葉を使いたい。重力ピエロみたいに(笑) で、他の話も読んでみるとこれがまた面白いこと!びっくりしたー!!とにかく描写が綺麗で、何だか澄んだ湖に触れている気分。たまにはこうやって本の中で自然に触れるのも良きことかな◎どの話も好きだけど、「シグレ島叙景」と「屋根の上のサワン」が特に好き!掛け合いが堪らんっ!
主役は風景。その描写にかなり力を入れて、作者の感情が籠もっている。もちろん人間もそれなりに登場するが、外見描写、内面描写ともに必要最低限を箇条書きにしたように見え、人は風景の引き立て役のようだった。だから『大空の鷲』で学生が主人公に「すみません、(景色を写すので)ちょっと点景人物になって下さい」と言ったのには笑ってしまった。
「山椒魚」は最後の蛙の言葉が印象的。彼はどんな気持ちであんなことを言ったのだろう。「シグレ島叙景」、「言葉について」では登場人物を見ていて「ツンデレ」という言葉が頭に浮かんでしまった。作品の傾向がバラエティに富んでいて読んでいて飽きなかった
どの作品にも、子供ような無垢な心と、噛みしめると鼻腔いっぱいに広がるような哀しみを感じた。解説に「ユーモアとは悲しいものだ」と書いてあって納得。「屋根の上のサワン」がすき。「サワンは夜ふけの嘆息と話をしていたわけでありましょう」隅々まで完成度が高い。随筆も読みたい。
前衛的な作品が続いていた為平坦さが目に付いた。<傍線部の発言に対する朽助の心情を推察せよ>やら<次の漢字の読みを述べよ>やら考査的な設問が浮かぶ。解説には感性で読めとあったが困難を極めるかも…悔しいが情緒を補って再挑戦すべき作品と相成った。井伏鱒二の女性の好みと口説きのパターンが見えたのが面白かった。先ずは手を握る、と。まず実践不可なのだが。女性と言えば彼女らが作中でよく男を甘やかしていたのが印象的。時代的なものか筆者の願望の現れか。どうも前者な気が。昔の男女関係はおおらかな女らしさが男を転がすイメージ。
読み終えて、ふと「旅情」という言葉が思いうかんだ。温泉や旅館を巡りながら、各地である出会いと別れ。それはなんとなく哀しい。この世界観は見覚えがあるぞ。そうだ、つげ義春だ。彼の作品も、旅先での孤独や厭世観が全面に表れている。そういえば彼も「山椒魚」の話を書いていたっけ。
読了。「朽助のいる谷間」「へんろう宿」「大空の鷲」が好みだった。「夜ふけと梅の花」のようなユーモアな作品から、ときには「朽助のいる谷間」のようなエロティックなシーンなど、人情味が溢れた作品集。
短編集。同年代くらいに発表された他作家の作品群は強い政治的主義主張を主眼としたものがとても多く(プロレタリア文学?)、擬古典主義など昔話テイストのものが好きな私は苦手としていたのですが、この短編は主人公の内面に寄るところが多くおもしろく読めました。それぞれの短編の主人公たちが、多くは『何事かに屈託していること』『方言の中にいて彼だけ東京ことばを話すこと』という共通点を持っているように見受けましたが、これには何か意味があるんでしょうか。
短編集。太宰治が少年時代、当時はまだ無名の井伏氏の書いた「山椒魚」を読んで、天才を発見したと狂喜したらしい。体が大きくなって岩屋から出られなくなった、いわゆる幽閉状態になってしまった山椒魚が苦しんだ姿に、何を学ぶのかという教訓的・寓話的な話(だと思う)最後の蛙の言葉が印象的。「山椒魚」以外は読んでも特に何も感じなかった。
久々に重力ピエロを読んで、兄弟の会話にある山椒魚を読みたくなりゲット!表題作の山椒魚……なんだこの蛙と山椒魚の関係は!!でもなんかわかる。切ないけどあったかい。今にはなかなかないようなお話だなぁ。
全編通して方言の使い方が巧みだった印象があります。また平坦ながら計算された文章が魅力的でしたが、長編では飽きるかもと思いました。他の作品も読んでみたいです。
11くったくしたり… 13やがて彼は… 35私はおなかが… 53世間というものが… 61そうだ、… 62第一章、雲、… 103男は女よりも… 191不自然なロマンスは… 203誰でも、… 226いいか、…
橋本紡さんの「九つの、物語」を読んでから読もう読もうと遅くなってしまった。「山椒魚」は改変されて、これとは別にもう一作あるらしいのでそのうちそっちも読みたいです。全体を通して、読みやすくて状況が頭に浮かびやすくてよかったです。「屋根の上のサワン」がお気に入り。寂しげなのに諦観したような最後の文章が何とも素敵。
昔「黒い雨」を読み、他の作品を読みたくなって購入。太宰治の漫画で「山椒魚」が出てきたのは知っていたが、ああこういう話だったのかと納得。太宰さんが気に入りそうだな~と。自分的にもしっくりくる話でした。
井伏鱒二の初期短編集。生き物が多く登場する。山椒魚を始め蛙やがん、鷲など。そういった生き物の出てくる作品の方が“どことなく”印象的である。彼が作家になる前は画家を志望していたというのはこの辺りに表れているのだろうか。また太宰治の師匠でもあったというのも頷ける点が多々あった。師の中に弟子を見るというのは本来不自然なのだけれど、そっちの方が納得出来てしまった。
山椒魚の
%
感想・レビュー:76件















ナイス!






























