密やかな結晶 (講談社文庫)
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密やかな結晶の感想・レビュー(462)
もうちょっと短くてもいいんじゃないかなと思った。ナチのユダヤ人狩り×作者の好きな物への愛着ぶり×現代人への批評をかけあわせて作った、わかりやすい構図の作品だと思う。
物体の消失=心の消失なのかなと思いながら読んだ。(作中でも「消耗した心」っていう言葉で表現されているけれど)心を失いながらそれに順応し生活を続ける者たちと心を失わないゆえに生活を続けられなくなる者たち、人々の心を狩る秘密警察…と寓話的に考えるととんでもなく恐ろしい話だけれど、小川洋子だから物語はただただ穏やかに進んでゆく。ラストも(後味は悪いはずなのに)妙に清清しくて、不思議な話だった。
穏やかな消失に蝕まれていく人々のお話。消滅によって出来る心の空洞、喪失感。けれどあらがう事は出来ずにただ受容する人々、空洞にあった形に変えていくだけの心が悲しかった。わたしを支えてくれる優しいおじいさんが大好きでした。本を読んで泣いたのは久方振りです。
ある島での物語。この島では、秘密警察によって、次々と“品物”が消滅する。リボン。鈴。エメラルド。切手。香水。鳥。バラの花。消滅することによって、人々は“品物”がかつて存在していたことを忘却する。ある日、“小説”が消滅させられてしまう。本を燃やす人々。焼け落ちる図書館。痛ましい光景だ。そして人々の左足が、右手が…。ここまで来るとやりきれなさがつのるのだが、喪失と忘却という人間の哀しみを描く作者の心は十分すぎるほど伝わってきて、また一冊忘れられない本になった。
様々な物が"消滅"していく島に生きる人々の物語。なにを無くしたかもわからなくなってしまう、という点から、消滅していってしまう物はわたしたちの良心の寓意かな、と思った。良心を少しずつ失っていく人々が大多数だけれど、失わない人々もいる。失わない人々にとっては良心とはかけがえのないものだけれど、失っていく人々にとっては、それらを思い出すことは困難で、それを忘れたまま生活していくことの方が容易い。 物語と平行して進んでいく劇中作の展開もまた面白くて、読者によって様々な読みができる作品だなと感じた。
「アンネの日記」の翻案小説のような作品。 感性豊かな人は楽しめるのだろうが…粗野な私にはしっくりこない。 う〜ん…。
受容し続けて消えていく人々の物語。面白かった。柔らかい語り口で穏やかに進んで、最後には落ち着くべきところに落ち着いたと安心さえした。が、振り返ったらちょっと怖い。
女性って、これだけ受け身的な思考になってしまうものなんですね。愛人にされ幽閉されても、部屋のなかに染み込んでしまう。大事な物を次々に喪失し、最後には自分自身もなくなってしまう…。借金だらけで暴力をふるう男性に尽くし続ける女性や、5人も愛人がいる男性が訪ねてくるのをひたすら待っているだけの女性もみたことがありますが、どうしてそんな生活から抜けだそうとしないのか理解できませんでした。今もって理解できませんが、その様な状況に置かれている女性の心理がどういうものかは、この小説を読んで感覚的にはわかりました。
身の回りのものが、ひとつ、ひとつ、消えていく… 消えてしまうものは、フェリーであったり、鈴であったり、香水であったり。何かが消えてしまう朝。ぼんやりとした喪失感で目覚める。先に記憶がなくなってしまう。失ったものを探す。失ったものを見つけると、そのものを火にくべてしまう。川に流してしまう。消えてしまったものを見ても、何も思い出せない。そのものにまつわる大切な思い出があっても、空虚な気持ちになり、忘れてしまう。喪失。それは真綿で首を絞められていく過程。
静かなお話でした。静かな重み、衝撃。どんどん消えてく。でも美しい哀しみ。夕焼けに溶けそうなおじいさんの笑顔。物語もスッと終わるけど、微かに消えた先がみえる。
穏やかな衝撃。何て感想を書いたらいいのか…。失う女と失わない男、解りたいのに解れない心のすれ違いがとにかく切ない。しかしおじいさんの存在や温かい会話、主人公が淡々と消滅を受け入れているからか、不思議と悲壮感が漂っていないのがすごいなぁ。柔らかいのに冷たい、無機質なのに優しい。今まで読んだ小川作品の中でもかなり好きというか印象的で、とにかく物語に心が飲み込まれてしまった。また再読したい。
国文学の講義課題のため。記憶が狩られていき、仕舞いにはすべてが失われてしまうという不条理な作品なのだが、なにかオブラートにでも包み込んだような独特の柔かさがある。消滅していくものの前では、何者も抗いえないのだろうか。/また秘密警察の存在からはファシズムを連想せざるをえない。秘密警察のトップに記憶を失わない人間がいたとしたら、容易に島を制圧できるわけだ。しかし制圧したところで意味があるのか、残された世界に果たして希望があるのかは疑問である。歴史が継続されない中での人間の存在意義を考えた。
狭い空間で失わない男と、広い空間で失ってしまう女の心の行き違う様が堪らなくなった。最後は運命なんて一言でしめてしまうには不条理だけれども、不思議と虚しさはない。
あまりの衝撃に、どう感想を書いてよいのかわからない。一ついえることは、喪失感を集約した著者の代表作だということ。大切な物を失っていく「私」と、失わない「R氏」が織り成す物語は、哲学的であり、宗教的であり、性的でもあり、そのどれもが複雑に絡み合っている。人間は失くした方が幸せなのか、失くさない方が良いのか。またその判断は何に委ねられているのだろう。しばらくこの余韻から抜け出せそうにない。私にとって、それほど凄い作品だった。アンネの日記を読んでいたほうが、より物語の幅を感じる事が出来るように思う。続き↓
消失により消えていく人々を描いた物語。相変わらず静かで柔らかいタッチだがナチスのホロコーストを彷彿させる話だった。個人的には「消失」の設定がうまく飲み込めなくて戸惑った。また、話の流れよりもおじいさんの健康状態や妻子がいるRとあんなにも親密な関係を無自覚に築く主人公にハラハラさせられがちだった。ラストはありがちなハッピーエンドではなくあるべきラストで好きです。
なんて言えばいいのかわからないけど衝撃的な作品だった。小川洋子の作品は初めてだったけれど、他の作品も読んでみたい。最後は号泣した。わたしは気付かないうちになにかを失くしているかもしれない。怖いけど綺麗で哀しかった。
明らかすぎる程ナチスとユダヤ人の関係が重ねられる。こんなにも明確に敵対する相手というか、絶対的な悪が描かれる小川洋子の小説は多分初めて読んだ。他の作品のようにただ消えて行くだけでなく、奪われ行く感がすごい出ていた。そこに、いつもより悲しみを感じた。
消失、秘密警察、連行、彩りのない生活、そんなものが描かれてるのに、なぜか穏やかな気持ちで大切に読み進めたくなる本だった。時間をおいて再読しよう。
消滅した物はそれぞれが持ち寄って焼却したりしてたから、鳥が消滅した時は秘密警察か誰かが鳥を絶滅させたんかなぁ?カレンダーの記憶が消滅した筈やのに日曜日が有るのは何でやろ? R氏に何故かイラッとした。ヒモみたいやからかなぁ?持つ者の余裕がイラッとさせるんかなぁ?
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
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- 07/10
消滅により色々なものが失われていく世界で、喪失により、ゆるやかに衰弱していく ”わたし” の様子が繊細に描写されていて読後は、静謐な余韻が残る作品でした。
少しずつ“消滅”が進み、人々の心にぽかりと空白が広がってゆく島が舞台なのですが、虚無が浸食してゆく様子はファンタージエンの世界を彷彿とさせ、無性に悲しい。秘密警察による記憶狩りはナチスのユダヤ人狩りを連想させ、主人公の女性が命の危険を冒しある行動を起こしてからは、ずっとドキドキしながら読みました。記憶の大切さについて考えさせられると共に『なくしたものたちの国』に繋がるテーマを持つ点も気に入りました♪この静謐な世界にBGMはいらない。女性とおじいさんがお茶をするシーンがとっても好き(*^-^*)。♣4.3点
読み終わった後しばらく放心した。作中の小説と主人公の元小説家の運命がパラレルに進んでいき、最後の最後で収束していく。得体のしれない不安感、情緒に訴えかけてくる登場人物の心の掛け合いとともに、静かに物語が進んでいく。閉ざされた空間での閉塞的で不条理な寓話。消失によって人は自己を知る。消失を知らない人は限定された空間で記憶とともに生き続ける。不思議な物語。
★★★ これはなんなんでしょうか?寓話、警鐘、深い意味が有りそうながら良くわからん。自分の周りに在る物がある日突然消える。それもその物自体が消えるのでは無く、その概念が人々から消える。普通に考えると、子供の純真さあたりを思い浮かべるが、それと同時に主人公である小説家の女性が執筆中の小説のヒロインは対を為すように言葉をなくしていく。これも何かの象徴のように思えるがこれまたよく解からん。その中で主人公を小説家に設定したことに(途中で小説も消え「華氏451°」のように本を燃やす)何か思いを感じる。
2作読んだうち片方。「何をなくしたのか分からなくなる」って怖いですね。本当は沢山あるようで大切な物っていざとなればほんの少しなのかもしれないけれど、ここでの消失はちょっと受け入れにくい。そういう小説なんだとは分かっていて読み返しても、失わない人も存在しているって部分がある意味、人の心の葛藤に似ていて辛い。
身の回りのものがどんどん消えていく描写に恐怖を感じつつも、それと同時にとても魅力的に感じました。もし、苦しみも悲しみも、未練も執着もなく、何かを手放せるとしたら…?私たちもある日突然何かを失うかもしれない。でも、この島の人たちのように記憶を消滅させることはきっと出来ない。私は、そのとき、どのようにして失ったものと向き合えばいいのか。そんなことを考えました。
不思議な空気が流れるお話でした。いつ消滅がとまるのか・・・いつ・・・? と 思いながら読んでいたのですが・・・。物理的な消失だけでなく 大切な物を失うことの心の痛みを失ってしまう。切ないなぁ。
終わり方がきれいで好き。消失なんかなくたって人はいろんなものを忘れてしまっているというような文章、ベタだけど一番心に残っているところだ。
消滅そのものより消滅をすんなり受け入れる人々に切なさを感じた。この島では失わない人は生き辛い。その辛さの分かれ目はきっと人数の違い。もし失う人たちが少数だったら?それならきっとこんな切ない話に歯ならなかったとは思う。持っている人が少数派。異端。ここに意味があるんじゃないかなと思う。
様々なものが消失していく島での出来事。切ない。消失したものに関しては、記憶も次第に薄れ果て、いつしかほんとうに喪われてしまう。なんとなく展開は予想できるし、小川さんらしい恋愛や交感も相変わらず。だが、相変わらず、静謐な空気、諦念にも似た感情の揺らぎ。21世紀のJGバラードになってきたなぁ。
密やかな結晶の
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感想・レビュー:122件












































