新世界 (角川文庫)
新世界を読んだ人はこんな本も読んでいます
新世界を追加
新世界の感想・レビュー(202)
原爆を作るために科学者が集められたロスアラモスで、殺人事件が起こる。ミステリーの部分より原爆を作った側から書く本を読んだことがなかったので興味深かった。
これは単なるミステリーではない。衝撃を受けた。名著「イェルサレムのアイヒマン」ではないが、ナチス党員はユダヤ人を仕事として勤勉に虐殺した。ロスアラモスの天才物理者達も仕事として原爆の開発に精進し、その結果、一般市民を含む数十万の命が失われた。共に変わらぬその甚大な被害を見ると、全体主義に対する民主主義の優位性など果たしてあるのか、とさえ疑問に思えてくる。原爆被害に対して、日本は人道主義、平和主義を唱えるばかりで、世界に対して今なお説得力と強靭さを備えた思想を持ちえていない現在、本作品の意義は小さくない。
正直ミステリ部分は軽めだなぁと感じましたが、ロスアラモス・原爆・エノラゲイという、被爆国の人間としてしかと読まずにいられないテーマに引き込まれました。軽くウィキったところ、『彼』は実在の人物ではなさそうですが、他の実在のある登場人物の原爆投下への発言を読んで怒りと悲しみでへこんでしまいました。狂気か正気か。いつだって声のでかい方が笑って数の多い方が勝つけれど、それでも柔軟に想像力を駆使して物事を見据えることを止めちゃいけないんだと思います。
原爆の父・オッペンハイマーやフェルミなど、著名な科学者が次々と登場。ミステリとしての犯人探しもさることながら、原爆を作った科学者たちの経歴を知る事が出来たのも、大きな収穫でした。あれほど悲惨なものを作った人間たちは、どんな生き方をしていたのか。なぜ、あのようなものを作ったのか。わずかばかりでも、知る事が出来た。ヒロシマ、ナガサキの惨状を知り、次第に狂気に追いやられる科学者達の苦悩に焦点が当てられ、読みごたえあるミステリでした。
被害者側からの原爆の問題についての本は多くあるが加害者である原爆を作った科学者の視点から原爆について考えているのはあまり見かけなくて新鮮みがあった。
原爆の父であるオッペンハイマー氏はヒロシマ、ナガサキ以後、後悔に苛まれ軍の意向である水爆の製造をことごとく邪魔をしたそうだ。だが、これは実際した人物を交えてのフィクションである。大量死に対する生死の尊厳がいかに無意味であるか考えさせられるのと同時に痛烈なまでの批判と皮肉に満ちている。科学の発展は時として、大きな罪を生み出すこともある、ということも考えられるが、それよりも争うことしだいが馬鹿げていることに何故誰も気付かないのか?
広島に育った私は原爆投下を正当化する人間に対し嫌悪感を抱いていました。ファインマン氏の手記に「核実験にショックを受ける科学者達がいた」という文を見て、当にこの小説の登場人物たちのような存在を思い描いたものです。本作はわくわくさせられるミステリ小説でありながら、私が嫌悪するような人達に対する批判でもあるようです。
原爆の製作者側を描いたフィクション。原爆投下を正義とするか悪とするか、それは国からの命令で投下した兵士たちではなく、原爆を発明した科学者たちにしかわからないのかもしれない。そんなことを思わせた作品。
被爆国に住んでいる私は被爆国の目から原爆を見ていました。でも、原爆って作った人たちがいるんですよね。そんな当たり前のことを思った私は、「原爆は天災であったと考えて」いる日本人かも。
初柳広司。原爆小説「黒い雨」を読んだあとに、この作品を手にとるとは(>_<)広島の被害状況のシーンは「黒い雨」と同じ文章だったので、この部分は実話なのだろうか?何故か「黒い雨」を読んだときよりも「原爆」の恐ろしさを痛感してしまった。神の領域に人間が踏み込んでしまったんだと改めて感じた。
『はじめに』の男の言葉、「日本人ハ不思議ナ民族デスネ」「原爆ガ逃レガタイ天災デアッタト考エテ」。そうかもしれない。変なのかもしれない。外枠の言葉が頭を離れない。
原爆を題材にしたフィクション。原爆を作り出した人間という生き物の罪を問うようなストーリー展開に引き込まれミステリとしても上手にまとまっていて面白く読めました。現状では核兵器の抑止に核兵器を用意するような世界で、悲しいかな核兵器を作り上げた時点で人間は破滅へ向かって歩を進めているのかもしれませんね。あと原爆投下、その後の惨劇の描写は凄惨ですがこれが当時の現実なのだなと改めて痛感しました。作中にアインシュタインの名言なども登場して物理学を多少なりともかじると更に面白くなります。
著者の作品は初めて。ジョーカーゲームが読みたくて、それなら古い作品からと思い最初に手に取りましたが。久しぶりにびっくりするくらい読むのに時間がかかった。原爆の父と言われるオッペンハイマーがでてくるのでフィクションかノンフィクションかも最初わからなかった世界。私は自分の誕生日が広島と同じ日で子供の頃から様々な情報を得てきました。戦争や核兵器の賛否なんて誰だってわかってるはずなのに人間は間違える。だからそうならないように全世界で学ぶべきだ。一人では世界は形成されないのだから。
「だが、第四次世界大戦の武器なら分かっている」「こん棒だよ」 頭が良いはずの人間の愚かさは、一体どこからくるのでしょうか。反核エンターテイメント
初柳広司の作品でしたが、これは…フィクション?ノンフィクション?面白かったんだけど、面白かったと言ってはいけないくらい、禁断の部分に踏み込んでしまったという気持ち悪さが読後の正直な感想です。辛いけど、目を背けてはいけない。そんな名作だと思います。原爆投下は絶対許すことの出来ない行為だけど、ちゃんと双方を知った上で反対しなければならないと自分の勉強不足に反省しました。何も知らずにただ反対することは、罪深いことなんじゃないかと思ってしまいました。もっと評価されていい作品だと思います。
鯛中拓@灯れ松明の火
こんにちは、後であきさんにオススメメッセージ送ろうと思ってたんですが、素晴らしい高性能アンテナをお持ちですね(笑)絶対あきさんなら好きだと思います。私ももう少し涼しくなった夕方にでも書店に行くつもりです。一日何回行っても良いのですが、こう暑いと…。書店に行くまで柳さんの「トーキョープリズン」を読んでみます。こちらもあきさん好みっぽいですね(笑)
ナイス!
-
06/26 13:01
こんにちは、後であきさんにオススメメッセージ送ろうと思ってたんですが、素晴らしい高性能アンテナをお持ちですね(笑)絶対あきさんなら好きだと思います。私ももう少し涼しくなった夕方にでも書店に行くつもりです。一日何回行っても良いのですが、こう暑いと…。書店に行くまで柳さんの「トーキョープリズン」を読んでみます。こちらもあきさん好みっぽいですね(笑)
ナイス!
-
06/26 13:01
面白かった。と、ミステリ小説を読み終えたあとのように、感想を漏らしても良いのか。原爆の恐ろしさを描いているのだが、それが上質のエンターテイメントに仕上がっているのは、柳氏のマジックによるものだ。
購入。原爆の父と呼ばれたオッペンハイマー博士を中止に置き、ロスアラモスを背景に描いた原爆ミステリー。ミステリー仕立てにする必要があったのかなぁと思いつつ読了。 科学者の論理と国の論理、戦争の是非、原爆の悲劇等を昇華してる作品だと思います。この小説はフィクションかもしれません。けれど、あの場所で開発され作られた「モノ」が多くの民間人を悲劇に陥れた事は、事実です。それを、決して忘れてはならないと思うのです。そして、倫理の狭間で苦悩する科学者達の存在も。新世界となった「今」、誰が「狂気」でないと言えるのか…。
☆☆☆作者はこの小説の形で本当に良かったのであろうか? 後半の怒涛のごとき、原爆悲劇。 後半まで読み続けず、これほどまでの原爆の悲劇を描写した小説の本質を体験できなった読者がいるとしたら非常に残念だ。
終戦直後のロスアラモスの病院で起きた殺人事件をオッペンハイマーとその友人が解決する。話のテーマは反核なんだけど、ちょっとメッセージ性が強すぎるかな。今の彼ならもっとうまくミステリー的にまとめられるかも。だがこの直球ぶりも悪いわけではない。
サマー・キャンプ?何の話だ? -P270/PB- ★★★ まず感じるのはフィクションと現実との兼ね合いが絶妙に仕上げられている点。登場人物たちはほぼ実在の人物で、思いのままにストーリーに組み込まれている。確かに一連の殺人事件や出来事はすべてがフィクションである、しかしその意味と苦悩は紛れもない真実であり、オッペンハイマーの不幸な後半生と重なり合う。狂喜の笑いが響き渡るラスト、彼らと真犯人狂っていたのはどちらだろぅか?ふと黒澤明監督の"生きものの記録"と重なった。
これはどこまでフィクションなんだろう。原爆を作った人たち、落とした人たちが何を言っても、言い訳にしか聞こえないけど、マイケル・ワッツ中佐のような考えを持った人が当時いたんだとしたら少し救いになるかもしれない。と長崎人の私は思いました。有栖川氏の解説の『「謝罪しろ、補償しろ」とアメリカに拳を突き出したりはせずとも、ただ、後悔は求めたい。』この一文に尽きる。原爆投下後の描写に、平和学習で毎年見ていた写真の数々を久々思い出しました。ミステリとして読むには重すぎる。しかし読んでよかった。物事は色んな視点から見るべ
本筋の合間に寓話や引用があって、単なる原爆を作った側からのアプローチだけでない戦争小説に仕立てられてました。
最後に向かうにつれどんどん重い内容でしたが、作者の伝えたい事が詰まった、考えさせられる小説でした。そして有栖川氏の解説が秀逸。
第二次世界大戦直後の人里離れたアメリカ・ロスアラモス研究所。そこでは広島・長崎に落とされた原爆の研究開発がされていた。その研究所で殺人事件が起こった。その事件を調査するうちに明らかになる…研究者たちの狂気…原爆がどのように使用されるかは念頭になく、ただ研究に明け暮れる…その完成の結果、何十万人もの人が死のうが後遺症に苦しもうが、それを使用する者の責任だと言う。自分たちはアウシュビッツのナチスとは違うのだと。「責任の観念と善悪の区別を失った人間たちが強大な力を握った場合、どんな恐ろしいことが起きるのかも……
新しい形の戦争小説。原爆についてのアプローチは普通被害者側からの目線になりそうなものだけど、これは原爆を作った側から。こういった作品が書かれたのも戦後時間が経ったからでしょうか。全体的に理屈が先に立つ感じですが、そこが欠点では全然ない。傑作。あ、でも、ミステリとしてはたいへん微妙。
本作はあくまでミステリではありますが、原爆をテーマに扱っていることもあってか、犯人捜しやトリックというミステリでいえば「本筋」にあたる内容よりも、原爆投下に至る、または原爆投下後の科学者たちの心の在り方の描写の方に、私は惹きつけられました。ジョーカーシリーズといい、柳さんの作品はシチュエーションが物語の枠組みだけでなく、テーマに深く関わってくるように思いました。こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』などの作品と合わせて読むと、テーマについてより深く考えられるのではないかな。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(0)
- 12/19
重いなぁ。フィクションである、エンタメである、と分かっていても重い。原爆を唯一戦争で使用したことのある国の人々には、いまさら反省やら後悔しろとは言わんが、せめて本書の中の科学者達やパイロット君のような葛藤くらいは持っていて欲しいものだ。が、原爆をくらうちょっと前まで日本人が中国及びアジアでやらかしてたことにも同じことが言えるのか…。
原爆を作った人間、原爆投下のスイッチを押した人間、実際にいるんですよね。そう思うと小説とはいえ、読み進めるのが辛くて苦しくなってしまいました。なんとか最後まで読みましたが、ミステリーとしての謎解きも上の空で、怖さで頭がいっぱいになってしまいました。正気と狂気って紙一重なんですね。
ナイス! ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ -
コメント(0)
- 11/30
2008/12/29 メトロ書店御影クラッセ店にて購入 2010/10/15〜10/18 第二次世界大戦終了間近のロスアラモス研究所。戦争を終わらせるために世界から集められた天才科学者達は原子爆弾を開発する。終戦を祝うパーティーの夜、一人の男が病院で殺される。責任者のオッペンハイマーはその調査を友人の科学者ラビに依頼する。果たして、誰が殺人を犯したのか? 原爆の悲劇、開発者たちの葛藤などを描きながら殺人事件のトリックも秀逸。昔物理学を志していた身としては、オッペンハイマーをはじめ、テラーやフェルミなど
ラストの彼の、「俺の罪を返せ!」が非常に印象的だった。正気と狂気ってのは結局多数決で決まるのかね?そうは思いたくないし、そうであってほしくはないって思う。
これは原爆文学では無い。個人の感覚として原爆被害をメインに据えた作品ではは無いからだ。ただし、日本人としての悲鳴を受け取ったと思う。振り撒かれる黒煙と紫電。これらの再来を否定し笑い飛ばす事は不可能だろう。才能溢れる作家が放ったメッセージと受け止める。
非常に繊細で再現性の高い言葉で綴られる物語、或は謎に、共感する。引鉄を引いたのは、神か、人間か。注目して行きたい作家だ。
新世界の
%
感想・レビュー:73件














































