月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)
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月の森に、カミよ眠れの感想・レビュー(167)
その世界観に読み始めはなかなか入りきれなくて最後まで読めるのかと思ったけれど、読み進めるうちにどんどん引き込まれていった。もう少し救いがあってもいいような気もするけど、こういうことを繰り返して今の現代があるのかな、と…。
「文庫」って書いてあるのに届いてみたらいわゆる文庫本サイズじゃなかったからビックリした… 初期の作品とのことでやや荒削り感はあるけど上橋節全開。考えさせられることがたくさんあるけどうまくまとまらない。
★★★★…人は掟を破ってでも生きることに必死で、時にカミや大切な人さえも蔑ろにしてしまう。でも、"今"が豊かになったとして、果たしてそれは"未来"まで続くのだろうか。「<掟>をいちどやぶることは、崖からちょろちょろとふきだした、わき水のようなものだ。しだいにまわりをけずり、人にとっては、考える気にもならぬほど長い時間ののちに、その水におのが身をけずられて、崖はくずされる。」タヤタの言葉が胸にずしんと響いた。忘れてはならない大事なことを教えてもらった。
現在の作者からみれば確かに荒削りだと思うが、それがまた主題とでもいうような事(あくまで読み手の感じ方)が、ストレートに伝わってくる。続編が書かれることはないのだけれど、大きい大人としては、ラストのエピソードに至る過程と関係の変化がとても気になる。勿論想像するゆとりが有るからこそ読書は楽しいのだけれど。
舞台は日本古代。朝廷文明を受け入れることが生き残る道と考えた狩人たちが、カミを滅ぼそうとするときに、ムラの仕来たり通りに戦うところが興味深い。歴史的な流れは変えられないと分かっているだけに、恋愛要素にもう少し救いが欲しかったけど…。
神や精霊と言ったものに興味をそそられます。神は人に幸福をもたらす存在、などと都合よく考えるのは人間で、やはり人間は人間のことしか考えられないような弱さを感じた。それも弱さ、とは一概にも言えないとも感じた。本来の神の姿はどんなものかをじっくり考えたくなる。
古代日本を舞台にしたファンタジーです。ヒトと神、そしてヒトと自然の共生を描いた上橋先生らしい作品です。上橋先生の作品を読むと伝承=想いを伝えることを強く考えさせられます。誰もが一生懸命生きる道を探っているのに、変わりながらしか生きられない私たちは、愚かかもしれないけど強いのだと思います。そう信じています。
日本人はこうして文明を選んできたんだなあ、と古代に思いを馳せる。それはそのまま現代の縮図でもある。深いテーマの作品。でも恋愛の描写はもう少し甘さが欲しかった…。
最初物語に入り込むまでに時間がかかったけれど、後半は一気読み。ナガタチが一人になって、自分自身を見つめなおすシーンが好きだ。キシメがタヤタの気持ちを思いやれるようになってからの、キシメとタヤタの最後が切ない。
勾玉シリーズに近い。こちらの方が現実の厳しさを感じるが。勾玉シリーズは(シリーズだからというのもあるが)神がゆっくりと人間と同化していく感じで、こちらは人間の方が神(自然)を制していこうとしている感じ。先に勾玉シリーズを読んでいたので、つい対比して読んでしまったが、先にこちらを読んでも楽しめたと思う。カミ(自然)を滅ぼせば、いつかは自分をも滅ぼしてしまうというくだりは、考えさせられた。
上橋さんの古代ものと聞いて持った期待に大いに応えてくれる物語でした。祖母山伝承というのも身近で嬉しい。記紀の内容自体がその経緯だからからか、日本の古代ものは必ず統すものと服ろうもの、天つカミと国つカミの対立の構図になるんだなあと今さらながら実感(有名なところで挙げると「もののけ姫」もだよね)。もちろん私がロマンを感じるのもそこなのだけど。一神教の神ではなく八百万のカミ、人間の物差しでははかれぬ力あるものとしてのカミ、その恐ろしさ強さ激しさ優しさを、上橋さんらしい湿度と説得力で語ってくれる。以下コメント欄へ
時代とともに変わっていくもの、でも変わらないもの。変わっていくことは仕方のないことで、でも大切に守っていかなくてはいけないこともあるのは事実で...。その狭間で苦しむ人、カミの葛藤が痛い。とてもせつない話でした。
根付いていた文化と新たな文化の狭間で揺れる。餓えることなく豊かに暮らすために、カミを殺める。しかし、その先に待っていた生活もあの頃の侘しいものと何ら変わらない。深い話である。
上橋氏の作品ってすごくいいと思うんだけれど、ちょっと痛すぎるんだよなぁ、わたしには。これも心が痛みました。思い出して話すシーンが多くて、ちょっと読みずらかった。初期の作品だからなぁ。最近の作品の方が読みやすいと思う。出てくるモチーフは、後につながるものが多い。これは闘蛇?それとも守り人のあれ?等々。読みながら、荻原規子の『白鳥異伝』を思い出した。出たのは同時期なんでしょうか?日本にこのようなファンタジーが出てきて、本当に良かったと思う。
「守り人」シリーズや「獣の奏者」よりちょっと読みにくいかんじがしたけれど、古代ファンタジーとはいえ、こちらは伝記や昔話を読んでいる気がするほど、リアルな話に感じられた。神や掟も大切だけど、村や生活も大切で、複雑な思いでした。また人に害を出せばオニで、益を出せばカミ、というのに、なるほどなぁと思いました。あと衣に針を刺したりと古事記を思い出しました。
人がカミとともに生きるのをやめ、稲作の国家に組み入れられる境の物語。異文化に接することにより、ほんの数年で劇的に村人たちの意識が変わっていくのが、リアルです。
物語の根幹を成しているのは、きわめて個人的な、プリミティブな欲求でもあると感じた。偕成社さんには悪いけど、児童書コーナー(だけ)ではなく一般の文庫コーナーに(も)置かれるべき作品だと思う。
昔、ヒトとカミは共に暮らしていた。そのうちヒトは豊かさを求め、カミを封じ、自然を開発し、そして今の世に至る。それがいつ始まったにせよ、それは必定起こることだったので、「もし」などとは言えまい。ただ、自らの行いの結果、ヒトは滅びに向かっている。それも必然だったのだろうか。「ムラ人の心を決めるのは、ムラ人だ。おれは、川の流れとおなじ。ながれているだけだ。」山や川、海、風、そういった自然は、ただそこにある。それがカミかオニか、善か悪か決めるのは、人間の考えだ。
こうやってヒトはカミと決別して、文明化の道を進んできたんだろうな。そう、無理なく想像できる話。「掟」というものについて話すタヤタの言葉に自然の厳しさを感じた。
上橋さんの本は、ファンタジーだけどいつも今につながることがあるんですよね。強すぎない、完璧じゃない人やカミが悩んでいるから、読んでいるわたしも森を守る、切り開く、どちらの気持ちにも思いをはせられる。勧善懲悪じゃないからこそ、じゃぁ自分はどうなんだ?ってふり返れる。この人の本は、本当に大人になって読めてよかったといつも思います。
最初の静かな語りが終わって語り部同士の感情が爆発してから物語の面白さも爆発しました。悪人だけが、掟を破るわけじゃないことが目から鱗。当たり前のことなのに、都帰りの兄が、忌ま忌ましい掟を守る妹を気遣うシーンを読んで驚いた自分がいた。人にも神にも『愛する』という感情があることを伝えてくれる神話は大切なものだと思います。その語り部も。
『獣の奏者』『精霊の守り人』シリーズの作者が1991年に手がけた物語です。あとがきによると、九州祖母山に伝わる『あかぎれ多弥太伝説』に惹かれ、オーストラリア先住民アボリジニと暮らしたことに影響を受けたそうです。しきたりなどの描写がリアルで、まるで実話のように感じました。大きな勢力が少数派の価値観を飲み込んでいくような事は現代日本でも日常的に続いおり、これは日本という狭い土地、湿り気を帯びた日本人が持つ性質なのだろうかと思い至り、少し怖くなりました。それでも逞しく生きていく人々の姿に心を動かされます。
狩猟生活から農耕生活へ、山のカミの掟から朝廷の支配へと移り変わっていく村と巫女の話。巫女のキシメは迷ってるような口ぶりだけど、本当はもう心(歴史)は決まっているのが悲しい。図書館で偶然見つけて、上橋さんの初期の作品を読めてよかった。普通の文庫本でも出してくれないかな?
やはり上橋菜穂子はすごい。ファンタジーなのに、昔は本当にこうだったのではと思わせるリアリティ。登場人物は、後の上橋作品に比べるととても弱く迷い続けている。それでも前に進もうとする姿は、やはり上橋菜穂子の描く人間だなぁと思う。そして、何より心に残ったのは、自然の中に宿るカミと、そのカミに守られ、畏れ、感謝しながら生きる人々の姿だ。確かに創作の世界には違いないが、日本でもかつてはこのような世界が確かに存在したのではないだろうか。後の作品と比べると荒さは感じられたけれど、上橋ワールド全開の素晴らしい物語。
文化人類学に明るくないせいか、疑問符飛び交いまくりの1冊になってしまいました。『獣の奏者』や『狐笛のかなた』もそうなんだけど、恋に落ちていくのが唐突で、上橋先生は、恋に理屈は要らないと感じてるのかなー、と思いました。
月の森に、カミよ眠れの
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感想・レビュー:54件














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