久生十蘭短篇選 (岩波文庫)
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久生十蘭短篇選の感想・レビュー(149)
至高。見事に虜になってしまった。古い作品だし、岩波という事で少々構えて読み始めたんだけど、解説に書いてあるような純文学的(?)な読み方をせずとも、普通にエンターテインメントとして十分に楽しみ耐え得る作品ばかりだった。大変面白かった。特に強調したい事は、ミステリ読みがこれを読まないのは明らかに損失なんじゃないか、と。白雪姫、蝶の絵、雪間、猪鹿蝶などは、このページ数で何故ここまで巧く話が、と感じる事請け合いだろう。ただ久生マニアに言わせればこの本ではミステリ要素は少ないらしいので、他の文庫も漁ってみたい。
戦後に発表された作品を中心とした短篇集。どの作品も構成が素晴らしく、特に『母子像』は世界短篇小説コンクールでトップに立ったのも納得の出来。収録作のジャンルは多岐にわたるが、全体的に幻想的な雰囲気が漂う。そちらの視点では『黄泉から』、『予言』がおすすめ。 解説も非常に詳しく書かれ、大いに参考になる。これを期に全集にも手を出してみたいところだが高い……。
素敵すぎて文句のつけようがない久生十蘭の魅力を詰め込んだ短篇集。幻想的な甘い余韻を残す「黄泉から」を皮切りに純愛に心打たれる「春雪」まで、15の物語が様々な感動を与えてくれる。何気ない、しかし深い洞察力の中から選び出された文章の素晴らしさに気付いたとき、読者は既に十蘭の魔術にかけられているのだ。
「黄泉から」はこの世でない者へ手を差し伸べるラストがロマンチックで印象的でした。「母子像」にも思春期特有の独りよがりな母への過度の美化と偶像が地に落ちた時の絶望、他人の勝手な分析を心根では否定するという描写は流石としか言いようがありません。久生十蘭作品は「キャラコさん」しか読んでいなかったので短編も読めてよかったです^^
端正さが前に出て奇妙な話でもあまり影を感じさせないあっさりとした仕上がり。書ける話の幅は広いものの、そこがかえって物足りなかったかも…催眠術に狂わされたらしき男の顛末「予言」、戦後外地から帰って来たお坊ちゃまの哀しい生き方「蝶の絵」、したたかな女をこらしめようとした女性が電話口でその結果を語る「猪鹿蝶」(中年女性の井戸端会議のような話し方をよく分かっている)、自閉的な少年が心の中で非行に走った訳をつぶやく「母子像」などが印象に残る短編だった。
意外とひねっていないものもある。『無月物語』乾いた凄惨さ。『黒い手帳』見る側に徹してたはずの人間が手を下し、他人の犯罪の記録が自身の告白になる。とても面白い。『泡沫の記』空白を使って書く。『雪間』ここで終わっちゃうの?『春の山』なんと言うこともないのだけれど、一番好きかも知れない。
最初の「黄泉から」がよくてどっぷりはまりました。短い話でも内容が濃密で満ち足りた読後感。「ユモレスク」なんか好きだが、印象強いのは「無月物語」。これからいろいろ探してジュラニアンを目指そうかな。
研ぎ澄まされた文章の中に豊穣に含まれるイメージ。読んでいると、他の文学作品や映像作品が次々に喚起されてくる。短篇小説を読んだ、というよりもマルチメディア作品を堪能したかのような読後感が不思議だ。
なんて繊細な文章なんだろうと驚いた。南国の雪の描写が美しい「黄泉から」、代表作の「母子像」は、読後の余韻が長く後を引く。時制や人称の不一致が特徴の「予言」は、読めば読むほど、解釈に迷うような複雑な構造。私の知人が「文章中に登場するセザンヌの絵は、技巧的な、多次元的な描き方にも特徴がある。この『予言』という作品も、セザンヌの絵に見立て、時間や空間、視点を超越した書き方を試みたのでは」という指摘をしていたが、その通りだと思う。いずれにしても味わい深い作品ばかりだった。
万華鏡のような後味は他の作家にはないかもしれない。アコーディオンの伴奏にのせて物悲しく奏でられるBGM。モノクロの八ミリ映画の哀愁。ラジオから流れる雑音混じりの音声。懐かしい昭和の香り。「鶴鍋」「無月物語」が特に印象的だった。
嘘か真か夢かウツツか、読み進めるにつれどんどん怪しくなっていく「鶴鍋」、呆けた様な長閑さの中に残酷さが挿し色の様に入る「春の山」が特に印象的。
割と似た雰囲気の作品を多く集めたように感じる。中では、清浄な読後感を覚える「黄泉から」、無残な中の美というと通俗的かもしれない「無月物語」、色彩感が印象深い「蝶の絵」、展開の読めなかった「春の山」、対比の妙を味わう「ユモレスク」が良かった。
作家の背景に横たわる時代や環境が、独特の個性にまじりあっている。半分を超えたあたりから、水を飲むようにスラスラ読めた。「母子像」の冷たさには息をのむ。ただ、ユウとかミイには時代差を感じて苦笑するしかなかった。
15の短編。その多くは戦後が舞台となっているが、「戦後」という言葉から連想されるようなじめじめした卑屈さ陰鬱さを感じさせず、上流家庭、西欧の空気といったものが、涼しげに、しかし空疎に流れている感じを受けた。
すっすばらしい! 収録作15篇全て甲乙つけがたし。幻想譚、歴史物、純愛物、悲劇もあれば喜劇もあり。着物や建造物、芸術作品などの端麗な描写にうっとり。意外性のあるストーリーも逸品で最後にストーンと落ちる。その軽快さもまた心地よし。洒落たルビ使いも効果的だ。根底にあるだろう戦地赴任とフランス遊学の体験が源泉か。ジュラニアンを名乗るにはまだまだおこがましいけど、近づけるよう鍛錬したい。
初・久生十蘭は、意外性の連続。それは、内容にというよりも、そのスタイルのバリエーションにだ。澁澤龍彦は、久生を「根っからのスタイリスト」と称したようだが、まさしくここには、久生の趣味趣向、教養博学、そして作家としての欲望が百花繚乱の小説集として結実している。しかし、それがエンターテイメントとして花開いていることにこそ、何よりも驚かされる。
著者の名前からして難しそうで敷居の高い印象でしたが、不良で鳴らしていたというのは意外。バラエティ豊かで想像以上に読みやすかったです。時代背景もあって戦争ものが多かったですが、他にも色々な種類の引き出しがある作家ですね。ジュウラニアン!がいるのも分かる気がしました。 好みだったのは「予言」「黒い手帳」「雪間」。どういう結末になるのかハラハラドキドキしながら楽しめました。
多彩な作風に感心しながら読み続けました。特に良かったのが鶴を鍋にするために捕まえるというところから話が始まる「鶴鍋」、戦国時代の女性の純愛を描いた「春雪」、軍鶏の闘鶏を描いた「春山」など。料理、着物、茶碗などの描き方も具体的で想像力をかきたてられました。
日本にこんな稠密な短篇があったとは知らなかった。ヨーロッパでいうと、クライスト、マゾッホ、キプリングの作品のような、小さいけど中身がいっぱいつまった宝箱のような作品群。オススメできます。
いやぁ面白かったです。もっと読みづらいかと思ったんですが、意外にも読みやすく、そしてそこはかとなくロマンチック。グロテスクな描写にも甘やかさをかんじるのは不思議でした。
久生十蘭短篇選の
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感想・レビュー:57件














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